機械式時計の振動数とは? ロービートとハイビートを比較【音の聞き比べ動画付き】

2024.12.06

Q:機械式時計の振動数って何? 高いほうがいいの? 低いほうがいいの?

腕時計のカタログや記事に出てくる〇〇振動やXXHzといった記載は一体なんでしょうか。振動数と呼ばれるこの数字が高いとどのようなメリットがあるのか教えてください。

広田雅将

2022年6月13日掲載記事
2024年12月6日更新


A:テンプの振動する速さを示すもの。高い方が計時の正確さが増すとされています

 機械式時計の記事を読んでいると、しばしば2万8800振動/時とか、4Hzとか、8振動という表示が出てきます。これは、機械式時計の心臓部にあたるテンプという部品の振動数を示すものです。今の一般的な機械式時計は、大体2万8800振動/時=4Hz=8振動という振動数で、これより低ければロービート、高ければハイビートと言います。現在の主なムーブメントの振動数は以下の通りです。

・ETA6497/98-1。懐中時計用の手巻きムーブメント。1万8000振動/時
・ETA7001。小径の手巻きムーブメント。2万1600振動/時
・ETA2892A2。スイス時計業界の標準的な自動巻き。2万8800振動/時
・ゼニス エル・プリメロ。機械式自動巻きクロノグラフの傑作。3万6000振動/時

 振動数が高ければ、機械式時計の正確さが増す、と言われています。しかし、全く同じ条件で、振動数を倍に上げるには理論上、主ゼンマイの力を4倍に増やす必要があります。それだけ力の強い主ゼンマイを収めるにはスペースが必要な上、部品も摩耗しやすくなります。そこで、1970年代以降、機械式時計の標準的な振動数は、2万8800振動/時になりました。

振動数が低ければビート音はゆっくりと、また高ければ速くなる。高級時計は趣味の世界のため、打刻音の好みも時計選びの重要な要素だ。精度や外乱への強さといった“機械的メリット”以外にも、振動数が占めるポイントは大きい。

 もっとも、低い振動数で高い精度を出すオリエントスターや、高い振動数でも部品が摩耗しにくいグランドセイコーの36000ハイビートといったムーブメントは存在します。また、最近では、ブレゲが7万2000振動/時という超ハイビートのムーブメントを発表しました。もちろんこれも、十分な耐摩耗対策が施されたものです。

ブレゲ タイプ トゥエンティトゥ Ref.3880

ブレゲ「タイプXXⅡ」Ref.3880
2万8800振動/時のCal.584 Q/2を、7万2000振動/時(毎秒20振動)に上げたCal.589F搭載モデル。2010年発表。センターのクロノグラフ秒針は30秒で1回転する。自動巻き(Cal.589F)。28石。7万2000振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径44mm)。100m防水。生産終了。


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