世界中のプロフェッショナルダイバーや冒険家たちから高い評価と信頼を獲得するセイコーのダイバーズウォッチ。1965年に国産初のダイバーズウォッチをベースにした本作を手に、インプレッションを行った。セイコーの技術が光るダイアルや、“ガチ”な人もちゃんと使えるプロフェッショナルツールだった。
Text by Yukaco Numamoto
2022年12月16日掲載記事
1965メカニカルダイバーズをリメイク
自動巻き(6R35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径40.5mm、厚さ13.2mm)。200m空気潜水用防水。14万8500円(税込み)。
最初に目がいったのはソリッドなブラックベゼルの存在感だ。厚みがあり、武骨な感じがするのかと思ったが、近くで見ると質感に深みがあることが感じられる。角度によって、光を柔らかに吸収する黒いベゼルは夜の海を思い起こさせる。
南極観測隊越冬隊員の装備品として、1966年から4回にわたり寄贈されたという国産初のダイバーズウォッチ「メカニカルダイバーズ オリジナルモデル」はベゼルの幅がわずかに狭く、ヴィンテージウォッチ感が強い。再解釈された“現代デザインモデル”はセイコーが支援する「Save the Ocean」を象徴するコレクションとして登場したというだけあって、より海を意識した雰囲気が漂っている。
同じ景色や色合いの海がないように、この時計もあらゆる表情を見せてくれる。ネイビーに近いディープブルー、冷たい風が吹くグレーがかったアイスブルーといった具合に、色の違いはもちろんのこと、不規則に刻まれたダイアルの凹凸の深さが絶妙なことに気付いた。
凹凸が深すぎないため、角度によっては平らにも見える。深い角度が見えると、確かに積み重ねられた氷の層を想起させられる。思っていた以上にこのダイアルは海っぽい。“海っぽい”というシンプルな表現がとてもしっくりくることをぜひ感じ取っていただきたい。
ダイビング“ガチ勢”でなくても愛用できるダイバーズウォッチ
筆者は、なんでもとりあえずはやってみるタイプなので、あちこちで体験モノに挑戦してきた。
ダイビングも何度か挑戦している。勤め先の研修の一環で、真冬の伊東の海にウェットスーツで潜るというプログラムがあったのだが、ダイビング初体験な上、寒すぎて海中で気を失うという大失態をやらかしたことがあり、ダイビングに対してはちょっとどころか相当恐ろしいものであるという認識を持っている。
その後、暖かく視界の良い海で体験ダイブに成功してトラウマを克服したのだが、ダイバーズウォッチの本質とは、いかに過酷な環境の中で機能を発揮できるのかというところにあると思う。一歩間違えば、命の危険が差し迫る海中でダイバーズウォッチの操作ミスや突然の故障があったとしたら……と考えただけで恐ろしい。
どんなに綺麗な海の中でも、やはり「また気を失ったら今度こそ死んでしまうかもしれない」という恐怖感は心のどこかで感じていた。そういう不安な気持ちを安心させてくれるプロフェッショナルツールのひとつとして、プロスペックスのようなプロフェッショナルに支持されるダイバーズウォッチが存在するのだろう。
ダイバーズウォッチを好む人の中にはダイビングをしたことがない、という人ももちろんいると思う。そういう人もこの機能性や安心感を日常生活の中に取り入れる楽しみ方がある。
ファッションとしてのダイバーズウォッチとしても、機能を追求したダイバーズウォッチとしても、この時計なら海を知り尽くすダイビング“ガチ勢”からもひと目置かれるだろう。その時はダイビングの魅力について改めて色々教えてもらいたいものである。
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