シチズンのダイバーズウォッチ「プロマスター マリーン BN0156-05E」をインプレッション。今回はファッション系ライターが、「定番ダイバーズはテーラードファッションにも合わせられるのか?」をテーマに着用し、さまざまなスタイリングと組み合わせた。ベーシックダイバーズの対応力は高く、トレンド感ある大人系スタイリングも大方こなせることが判明した。
光発電エコ・ドライブ(Cal.E168)。パワーリザーブ約6カ月。SSケース(直径44mm、厚さ11.5mm)。200m防水。4万700円(税込み)。
Text & Photograph by Tsuyoshi Hasegawa
2023年1月10日掲載記事
昨今のライフスタイルに真に必要な機能とは?
前回のチューダー(ペラゴスFXD)インプレッションの際に、時計ビギナーの手にすべきモデルとして、ダイバーズウォッチは合理性ある選択肢だと指摘した。つまり、頑丈ゆえに繊細な機械式時計等に慣れていない人でも気構えることなく使い倒すことが可能なモデルだということ。
そしてオンでもオフでもスポーティな要素が入り込んでいる昨今のメンズスタイルにおいて、アクティブな印象のダイバーズは、コーディネイトにおいて非常に高い汎用性を持つオールラウンダーな時計だということ。
さらに本機のようにクォーツ(エコドライブ)式ならば、日々の巻き上げに煩わされることもないし、磁気アイテムへの接近やバイク・自転車が発する振動に対しても機械式時計のように神経質になる必要がないのである。
そうでなくても日々の社会生活は何かと面倒や些事が多いもの。時計を生活の主役に置くほどではないものの、現代生活をモダンでスマートにこなしたい(or こなしているように見られたい)。そう考える人には、クォーツ式のダイバーズは非常に良いチョイスになるのではと思った次第である。
シチズンのプロマスターは、過酷な環境下でも耐えることができる信頼性と、各分野で要求される機能性を持つプロフェッショナルウォッチのシリーズだ。「オール」「マリン」「ランド」「スカイ」のカテゴリーを持ち、本作のBN0156-05Eは、ダイバーズを中心とし現在は1000m防水やGPS機能付き、機械式200m防水モデルを擁する「マリン」のラインナップにおいて、光発電エコ・ドライブの200m防水という、機能を絞り込んだベーシック型として人気を確立したモデルである。
品格ある大人の腕時計として、このスペックが適当かどうかは議論の余地があるものの、信頼性を備えた時報装置として堂々完成しており、逆にこの時計をまず着けてみて、不満があるならさらに自分好みの一本を模索していくことが、真っ当な時計道のようにも感じられる。
200m防水かつ月差±15秒という安心スペック
まず所要元の確認だが、大振りの44mmケースはステンレススティール製。シチズン自慢の光発電エコ・ドライブCal.E168は、フル充電で6カ月の持続能力を誇り、精度は±15秒/月という実力。200m潜水用防水性能を持ち、耐磁1種機能、逆回転防止ベゼルを装備する。額面的にはなんの問題もない優等生エントリーダイバーズだ。
ルックス的にも普遍的なブラックベースであり、ボールドスタイルではあるものの、インデックスも針もいわゆる流行り廃りのないオーセンティックデザインである。
では、そんな定番的ダイバーズの日常スタイルにおけるマッチング能力についてはいかがだろうか? 折しも、このプロマスターが自分の手元に届いたときは、ファッション業界的には来シーズン、つまり2023年の春夏アイテムの展示会時期であった。そこで人気インポートブランドを網羅するショールームにこの1本を持ち込んで、リアル系ダイバーズの実力を測ってみたいと思う。
リアルダイバーズと大人系トレンドアウターのマッチングを検分
基本的にダイバーズウォッチはスポーツモデルであり、王道のファッションコーディネイト的にはスポーツカジュアルな服装に合わせるべき時計である。しかし昨今は重要な会議でも、ジャージー素材のテーラード型ジャケットにポロシャツを合わせたノータイスタイルで臨む人が多いご時世。
つまり昨今はオンもオフも軸となる要素は「スポーティ」。であれば、ある種定番的ルックスのプロマスターが、大人スタイルにおいても“腕元無双”できるタイミングが、今と言えるのだ。
ダークトーンのシアサッカージャケット
そこで、まず最初に合わせた一着が、シアサッカーのジャケットだ。しじら織りの一種であるシアサッカーは、凸凹感がもたらすサラリとした質感から春夏シーズンに人気のトラッド素材。定番的には白ベースのストライプデザインだが、近年はダークトーンの柄素材を載せた次世代シアサッカーが広く話題となっている。
ダークトーンの柄にブラックのダイバーズは非常にマッチングも上々。ただしインナーがドレスシャツの場合は少しチグハグに見える場合もありそうだ。ブラック系のポロシャツやスキッパーシャツと合わせると、まとまり感あるルックスになるに違いない。
ラギッド要素を加えたスエードブルゾン
次にトライしたのが春先シーズンに欠かせないスエードブルゾン。ミリタリーの流れを汲んだと思しき一着は、肩のエポレットと胸のヒダ付きダブルポケットが特徴的。こういったラギッドなアウターとタフなダイバーズはもちろん相性が悪いワケはない。
しかし何か個人的にマッチングがイマひとつのようにも感じられた。恐らくラバーベルトが違和感の原因だろう。こういったクラシック感と落ち着きを持つブルゾンには、NATOバンド等に換えて着けこなすのが良いように感じられた。
デニム風のフレンチワークブルゾン
同じくラギッド系のショートブルゾンとして選んだ1着は、デニムライクなコットン生地を用いたフレンチワーク風のジップブルゾン。これまでミリタリーワークと言えばアメリカ由来が定番だ。しかしラギッドスタイルも年々深化を見せており、フレンチテイストを取り入れたものがひとつのトレンドとして台頭してきている。
複数列の白ステッチが力強さを主張するアウターに、タフなダイバーズの取り合わせは非常にマッチして見える。偶然だがこのときグレーのカーディガンを着込んでおり、ブルーからグレー、そしてブラックな時計へのつながりが好ましく思えた。グレーのイージー系スラックスを追加しても良いコーディネートになるのではないか。
マリンテイストのストライプブルゾン
そして次にコーディネートしたのが淡色の太ストライプブルゾンだ。春夏シーズンの定番デザイン要素として「リゾート」はマストである。キレイな淡いカラーの装いで、お出掛け的な季節感を演出するのが基本のひとつ。さらに来季は太いストライプもトレンドの予感。
特に白×ネイビーはマリンスタイルの定番であるから、海と縁深いダイバーズとも相性良いだろうと合わせてみたのだ。しかしブラック文字盤×ブラックラバーバンドの1本は、思った以上にヘビーな印象。
強引にブラックパンツを合わせて乗り切る方法もないわけではないが、春先ならではの軽快感は当然スポイルされてしまう。32mm径くらいのダイバーズなら成立しそうだが、大振りモデルとの合わせは個人的にはNGと言わざるをえない。
プロマスター1本でもトレンドを押さえたスタイリングは可能!
とは言え、大方の予想どおり、ベーシックダイバーズの対応力は相当なもの。これ1本あれば、トレンド感ある大人系スタイリングも大方こなせてしまうことがハッキリした。
さらに理想を言えば、このBN0156-05Eに加え、やや小さめのドレスウォッチを別途そろえておけば、ほぼパーフェクト。価格も4万円少々とのことゆえ、ドレスウォッチの方にかなり多めの予算を注ぎ込んで選ぶことが可能である。
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