2023年、G-SHOCK生誕40周年を迎えた。それを記念したモデルのひとつが、今回インプレッションを行う「アドベンチャラーズ ストーン」シリーズのGM-114GEM-1A9JR。鉱石をイメージしたケースは斬新な印象を与える。さまざまなファッションと組み合わせ、本作の魅力を引き立ててみた。
デジタル/アナログクォーツ。電池寿命約3年。樹脂×SSケース(縦51.9×横48.8mm、厚さ16.9mm)。20気圧防水。4万700円(税込み)。
Text & Photograph by Tsuyoshi Hasegawa
2023年2月21日掲載記事
岩石のごとき“黒金”が腕元に強い迫力を添える
自宅近所の商店街を歩いていて、ふと視線を上げたところ、夕まずめのグラデーションを描く空に、ぽっかり若月が浮かんでおり思わず見入ってしまった。自分はどうも満月よりも怜悧なクールさを放つ三日月に引かれる気質がある。
「イイ感じだな、得したな」と思い眺めていたのだが、なぜ空に無数に浮かぶ星のひとつを見上げて、そんな感慨を起こしたのかを少し不思議に思った。おそらく長年掛けて見てきたモノや感じてきたことの蓄積が、そういった景色も知らず知らず感情を乗せて見ているのだろう。相も変わらぬ月を目にしたところで、無機質な塊にすぎないと切って捨てる宇宙人がいてもちっともおかしくないのだ。
鉱石をイメージしたリアルな造形美が斬新
ところで今回のインプレッションの対象であるカシオのG-SHOCK。2023年にG-SHOCK生誕40周年を迎え、それを記念した限定モデルのひとつである。
自分が選んだ1本は、“冒険者の道標となった鉱石をコンセプトに、メタルベゼルには鍛造とIP塗装、さらにマスキング技術を駆使して特別なルックスを表現した”「アドベンチャラーズ ストーン」と銘打つシリーズのもの。ブラックとゴールドのアシンメトリックな取り合わせが非常に大胆であり、自分が今までに見てきた時計装飾とはまったく別のセンスを取り込んだ“異種時計”なのだと強く感じた。
まず、特にインパクトを感じたのがこのゴールド使い。きらびやかな金彩を施した九谷焼の情景がどことなくイメージされた。日本古来の瀬戸物は自分の趣味のひとつである。古くから続く職人芸やクラシックな美観を生かした食器に囲まれて、味わい深く暮らしたいと考えている自分。しかし筆者はそういった九谷のような絢爛タイプより、サビのある唐津や織部、ひなびた染め付け物のほうが好みなのだ。
ただ、突然ゴールドを入れ込む景色も嫌いではない。金継ぎを施した茶碗なども好物なのだ。そしてこのG-SHOCKは鉱石をコンセプトにしているということで、ベゼル周りに天然石のような凸凹感があり、信楽などが持つ粗野な土の肌感にも似ていて非常に面白いと感じた。
さらにこのシリーズはベルトまで手を抜いていないところが見逃せない。有機的な凸凹あるベゼルとタッチを揃えるべく、ホットスタンプ技法により土感(?)を演出した仕上りになっているのだ。であるなら、個人的にケースバックの処理もなんとかしてほしかった。できればゴールドに、無理ならマットブラックなどにしてもらえると、冒険者の夢もより長続きするのでは(?)と思われたのだ。