日常使いが可能な軽量ボディと屋外でも抜群の視認性
腕に巻いてみると、セラミックケースにしてはズシリと来る重さだが、過去に「BR 01」の“超重量ボディ”を体験している筆者にとっては、だいぶ軽くなった印象だ。
実際、SS製の「BR 01」は、レザーストラップ仕様でありながら145gという、並のブレスレット時計よりもヘビーな時計だったが、今回の「BR 03-92 BLACK MATTE」はラバーストラップ込みの実測で127gだった。
ケースサイズも46mmから42mmに縮小されたことで、ようやくシャツの袖口に収まる時計になってくれた。これならデイリーユースの時計としても活躍させられるだろう。
ストラップはラバーだが、適度に厚みがあり、ラグの外側まで広がった幅広設計のため、ケースが振られることもなく、非常に安定した装着感だ。
ただし、定革がひとつのみで遊革が付属しないため、筆者の腕(160mm)では6時側ストラップの先端がはみ出してしまい、袖口に引っかかるのが難点である。
遊革が追加できる仕様になると、細腕な日本人ユーザーにとってはありがたいかもしれない。
文字盤の視認性は、想像していた以上に抜群だ。快晴の屋外で直射日光を当ててみたが、反射するパーツが何もないため、眩しさを感じる瞬間が一切ない。
幅広な見返しゆえ、文字盤には深い影が落ちるが、アラビア数字が内側に配置されているため影響が少なく、時間を正しく読むことができる。ここまで考えてデザインされているのだとしたら、素晴らしい配慮だ。
安心の防水性と、クセになる滑らかな操作感
PVDコーティングされたリュウズは、非ねじ込み式で直接引くことが可能だが、それでも100mの防水性が確保されているため、高温多湿な日本の夏場でも、湿気に対して神経質になる必要がない。
搭載ムーブメント(BR-CAL.302)はCal.ETA2892A2ベースのため、リュウズを1段引き手前に回すとデイト調整、2段引くと時刻調整が可能だ。
驚いたのは針回しの感触で、Cal.ETA2892A2ベースとは思えぬほどの滑らかさである。これはデイト調整時も同様で、常に一定の重さに整っているため、おそらくパッキンによる調整を工夫し、振動を打ち消しているのだろう。
ここまで滑らかな感触が得られるのであれば、本来は億劫な作業であるハズの時刻合わせや日付合わせも、むしろ楽しみな瞬間に変わってしまいそうだ。
日常使用による精度は、左腕着用で日差−4秒という結果だった。C.O.S.C.のクロノメーター検定を通している機械ではないが、ギリギリ範囲内に収まっており、十分に優秀な成績と言えるだろう。
PVDコーティングされた尾錠には、通常の3倍はあるだろう幅広なピンが採用されているため、着脱時に不意に外れてしまうこともなく、安心して使える。
不満点を見つけるのが困難なほど高い完成度を誇る、至高の実用時計
筆者のポリシーとして、インプレッションではメーカーに忖度せず、感じたことを率直に書くようにしているが、今回借りた「BR 03-92 BLACK MATTE」に関してはあまりに完成度が高く、1週間着用してみても、ラバーストラップ以外に不満点が見当たらなかった。
もっとも、筆者の中では18年前の「BR 01」と比べてしまっているのかもしれないが、旧モデルとの比較を抜きに考えても、軽量で質感高い防水セラミックケースと、ハイレベルな視認性の文字盤を兼ね備えた本作は、日常的に使いやすい至高の実用時計と言えるだろう。
デザイン面で見ても、現行ラインナップ中最もベル&ロスのアイデンティティが詰まった時計であり、決して他社が真似できる造形ではない。
日頃スクエア時計が難しいと感じている人でも、ある種のガジェットとして楽しめてしまう。「BR 03-92 BLACK MATTE」は、そんな時計ではないだろうか。
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