ピアジェ 薄型の名手が挑むポロ流 永久カレンダー

2023.04.07

1979年に端を発する「ピアジェ ポロ」に、新たなマイルストーンが誕生した。「ピアジェ ポロ パーペチュアル カレンダー ウルトラシン」は、その名の通り、シリーズ初の永久カレンダー搭載モデル。ウルトラシンの名に恥じぬ薄型設計がピアジェらしく、外装やダイアルには上質な仕上げが行きわたり、外観をスポーティーかつエレガントにする。

ピアジェ ポロ パーペチュアル カレンダー ウルトラシン

ピアジェ ポロ パーペチュアル カレンダー ウルトラシン
ベゼルとケース、ブレスレットのエッジは鏡面にきらめく。全体に施したヘアライン仕上げは、繊細で上質。ケースサイドのコレクターも、丁寧に磨かれている。新設計のブレスレットは、ラグ間の色が変わった部分を押すと取り外せる。自動巻き(Cal.1255P)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径42mm、厚さ8.65mm)。3気圧防水。770万円(税込み)。
髙木教雄:文 Text by Norio Takagi
吉江正倫:写真 Photographs by Masanori Yoshie
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年5月号掲載記事]


新たなマイルストーンとなる「ピアジェ ポロ パーペチュアル カレンダー ウルトラシン」

ピアジェ ポロ パーペチュアル カレンダー ウルトラシン

8.65mm厚のケースは、パーペチュアルカレンダー搭載モデルとしては異例の薄さ。幅広のステップベゼルやダイアルの造作によって、薄さの中に豊かな立体感が育まれている。ブレスレットもケースと同じく薄いが、ソリッド感は高く、リンク間のガタ付きも抑えられている。中リンクに新たに与えられたゴドロンにより、表情も豊かになった。

 ピアジェの歴史を創業時から辿ると、1979年に「ピアジェ ポロ」の名が見付かる。当時はステンレススティール製ラグジュアリースポーツウォッチが各社から登場していた頃。初代ポロはケースとブレスレット統合型ではあったが、メゾンの伝統に則り外装は18Kイエローゴールド製だった。そしてベゼルとブレスレット、さらにダイアルまで凹凸の横ストライプ=ゴドロン装飾を施した外観はエレガントであった。

 その後、ポロは実に多くのバリエーションを生み出していく。現行のコレクションは、まず「ピアジェ ポロ S」の名で2016年に発表された。当時、Sとはシグネチャーやスタイルを意味するとアナウンスされたが、多くの時計ファンはスティールの頭文字であると感じ取っていた。ピアジェ ポロ Sは、ゴールドかプラチナしか使わないというメゾンの伝統を打ち破った初のステンレススティール製ウォッチであったからだ。まず3針+デイトとクロノグラフをラインナップし、その後ゴールドケース、スケルトンが登場。そして今年、フラッグシップモデルとして、パーペチュアルカレンダーが投入された。この複雑機構がステンレススティールケースに搭載されたのは、ピアジェの歴史の中で初となる。

ピアジェ ポロ パーペチュアル カレンダー ウルトラシン

ゴドロン装飾をまとったブレスレットの中リンクの造形が、スケッチだと分かりやすい。インターチェンジャブル式のラバーストラップはダイアルと色合わせがなされ、ゴドロン装飾を与えることで一体感を高めている。ケースサイドのコレクター位置もデザイナーが考察している、とスケッチから分かり、美しい配置バランスをかなえた。

 クッション型と円とが重なるシェイプインシェイプのフォルムは、既存モデルと同じ。複雑なメカニズムを内包するケースを8.65mm厚の薄型に仕立てているのがピアジェらしい。ベゼルを横のヘアライン仕上げとしているのも既存と同じだが、これはゴドロン装飾をまとっていた初代へのオマージュであろう。さらに本作では、より明確にゴドロン装飾を外装に受け継いでいる。これまでヘアライン仕上げの長方形だったブレスレットの中リンクの上下に、ポリッシュ仕上げの隆起が与えられたのだ。この造作は、初代ポロのゴドロンとほぼ同じ。より豊かなニュアンスを湛えた新ブレスレットは、インターチェンジャブル式へと進化もしており、グリーンのラバーストラップが付属する。そのストラップにも、立体的なゴドロン装飾が与えられている。

 搭載するCal.1255Pもまた、ケースと同じくピアジェらしい薄型設計である。その厚みは、わずか4mm。ベースとなったのは、1960年に生まれた名機Cal.12Pの流れを汲むマイクロローター式の自動巻きCal.1200Pである。ピアジェはこれ以前に855Pと856Pという現行のパーペチュアルカレンダーキャリバーを持つが、いずれもセンターローターの自動巻きであり、Cal.1255Pよりも厚い。マイクロローター式のパーペチュアルカレンダーは、ピアジェ史上初にして同機構におけるメゾン最薄を樹立した。

ピアジェ ポロ パーペチュアル カレンダー ウルトラシン

パーペチュアルカレンダーとムーンフェイズの各機構は、ダイアル下に組み込まれたモジュール式を採用する。ブルーのリープイヤーディスクの下に月の大小をプログラミングした48カ月カムがあり、それをレバーが読み取り、月末と月初めの日付を正確に送る。

 12時位置で月とリープイヤー(閏年)の各表示を同軸とし、日付と曜日を3時と9時位置に、ムーンフェイズを6時位置に振り分けた構成は、90年代にあった「ピアジェ グベナー パーペチュアルカレンダー ムーンフェイズ」と同じで、メゾンの伝統の継承である。またパーペチュアルカレンダーとしても極めてオーセンティックなレイアウトであり、ともすればクラシックに陥りがちだが、ムーンフェイズを窓表示としたことで巧みにモダナイズされている。

 パーペチュアルカレンダー機構も、48カ月カム+レバーというベーシックな設計が採られる。ピアジェは80年代から同じ仕組みのパーペチュアルカレンダーを製造しており、信頼性は実証済み。日付はリュウズ、ムーンフェイズを含む他の暦表示はそれぞれ専用のコレクターで調整するのも伝統にならい、リープイヤーも調整可能とすることで、月表示の調整は最大でも11回で済み、利便性が高い。このリープイヤー調整コレクターは、前述した「ピアジェ グベナー パーペチュアルカレンダー ムーンフェイズ」にも備わり、やはりメゾンの伝統である。

Cal.1255P

ピアジェ ポロ パーペチュアル カレンダー ウルトラシンに搭載されているCal.1255P。

 これら暦表示を置くダイアルは、既存モデルと同じくゴドロン装飾が華やぐ。グリーンのカラーリングは既存にもあるが、本作はよりメタリックな印象で色味も深い。この色をメゾンはダークエメラルドグリーンと呼ぶ。スポーツウォッチらしいカジュアルさとシックさとが中庸した色調は、薄型複雑時計にふさわしい。

 3つのインダイアルは、チタン製のリングで取り囲み、ダイアルと視覚的に強く切り分けている。チタン本来のわずかに青みがかったシルバー色が、ダイアルの色味と調和する。インダイアル内は中央に段差を設けて、薄型時計に奥行き感を与えた。インデックスを印字した外側のチャプターリングは円状のヘアライン、一段下がった中央部はスネイルに仕上げ分け、一層豊かなニュアンスを得ている。各仕上げの上にはラップ塗装を施してフラットな面を得たことで、一切のにじみがない印字がかなえられた。

Cal.1255P

新設計のパーペチュアルカレンダーCal.1255PのベースCal.1200Pは、マイクロローター式の自動巻きで、2.35mm厚の極薄設計。地板の表裏は全面にペルラージュ仕上げが施され、ブリッジはマイクロローター用の空間を中心とした同心円状のコート・ド・ジュネーブが華やぐ。ブリッジの面取りは浅めでシャープ。輝きも十分に強い。マイクロローターにはブリッジと同じ装飾を与えて、PVDでブルーに染めたCal.1255P専用仕様とした。ブリッジから顔を出す角穴車やリュウズ機構と自動巻き機構の各歯車は、サーキュラーとサンレイパターンで装飾される。

 また12時位置のディスク式リープイヤー表示のブルーが、さり気ないアクセントになっている。ムーンフェイズの小窓の上にテキストロゴを配し、これらを取り囲むようパーペチュアルカレンダーの欧文表記を印字したダイアルと同色のフラットなリングを設置して他のインダイアルとのサイズバランスを図っている点も、巧みだ。

 ピアジェ ポロ Sの名での誕生時、初のステンレススティール製スポーツウォッチは、メゾンに新たな若いユーザーをもたらした。そこに追加されたパーペチュアルカレンダーは、薄型設計で装着感が良好な上に、優れた操作性とも相まって複雑機構を日常使いする悦びを、ユーザーにもたらす。

ピアジェ ポロ パーペチュアル カレンダー ウルトラシン



Contact info: ピアジェ コンタクトセンター Tel.0120-73-1874


ピアジェ史上最薄の永久カレンダー登場!「ピアジェ ポロ パーペチュアルカレンダー ウルトラシン」

https://www.webchronos.net/features/91881/
3スタイルの「ピアジェ ポロ」が体現するウォッチメイキングの真髄

https://www.webchronos.net/features/69743/
【インタビュー】ピアジェCEO「バンジャマン・コマー」

https://www.webchronos.net/features/80169/