オメガの「シーマスター アクアテラ GMT ワールドタイマー」を実機レビュー。世界に思いを馳せながら着用したい実用機

2023.04.07

今回インプレッションするのは、精密な凹凸を施した世界地図が目を引く、オメガ「シーマスター アクアテラ GMT ワールドタイマー」だ。初期設定からシンプルな操作感が好印象で、審美性と実用性を兼ね備えた1本であった。

シーマスター アクアテラ GMT ワールドタイマー

佐藤しんいち:文・写真
Text & Photographs by Shin-ichi Sato
2023年4月7日掲載記事


実用性の高いシーマスター アクアテラのワールドタイマー

「シーマスター アクアテラ」コレクションは、日常使用に十分な防水性能と高い耐磁性能を備えることで、インフォーマルウォッチの代表格として確固たる地位を築いてきた。

本作は、そのアクア テラ コレクションの中で、世界各国の現地時間をひと目で確認できるワールドタイム機能を備える「シーマスター アクア テラ GMT ワールドタイマー」だ。

 より一般的な、GMT針を用いたモデルでは、自分の地点の時刻と、もうひとつの異なる場所のローカルタイムのふたつの時間帯(うまく活用すれば3つの時間帯)を表示するが、本作は、ひと目で世界各国の時刻を確認できる表示系を備える。

シーマスター アクアテラ GMT ワールドタイマー

オメガ「シーマスター アクアテラ GMT ワールドタイマー」
自動巻き(Cal.8938)。38石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径43mm、厚さ14.1mm)。150m防水。129万8000円(税込み)。

 本作を受け取るまでの筆者の印象は「多地点の時刻を知るようなシチュエーションがあるのだろうか?」といったものであった。しばらく着用してみて、ワールドタイム機能を求める潜在的ニーズが、他の文化圏にはあると感じ取ることができた。

 なぜなら、異なる時間帯が陸続きで並んでおり、そのような地域ではちょっとした出張先で時差が生じることもあるからだ。ダイアルに描かれた世界地図を見ればそのことがよく分かる。

 では、なじみのない方に向けて、本作のようなワールドタイム機能の使い方を紹介するところからインプレッションを始めよう。


複雑そうに見えてシンプルな操作系

 主な表示は、時針の単独修正が可能な時分表示と秒針である。6時位置にデイト表示を備える。外周には世界の主要都市名が印字されており、内周には24時間表示のリングを備える。

 初期設定を行おう。現在地は日本とする。ねじ込み式リュウズを解除し、2段引いて時刻調整を行う。この時、時分の「時」は24時間表示が1時半位置の「TOKYO」の位置で合わせた上で分針を合わせる。

 次にリュウズを1段目の状態にして時針単独修正モードとし、時針をダイアルのバーインデックスに合わせる。この時は現在地の時刻とする。日付合わせは時針を回転させて進める(あるいは戻す)。

 通常の時間確認は時分針で一般的な3針モデルと同様である。人気を博しているアクアテラに準じた針形状で、分表示の先端には矢印状の蓄光が施されており視認性が高い。また、インデックスにもクサビ状の蓄光があり、暗所での視認性も良い。

 ワールドタイムを読み取る場合は、例えばビジネス相手がニューヨークに居て、現地時刻が知りたくなったとすると、時間インデックス8時半位置の「NEW YORK」を基準に24時間表示を読み取ればよい。センターには北極点から見た北半球の世界地図が描かれており、これを頼りにするのもよいだろう。

また、24時間表示は半分で塗り分けられており、ライトブルーが昼間を、ダークブルーが夜間を示している。すなわち、ライトブルーの範囲の世界が太陽に照らされていることを示している。

シーマスター アクアテラ GMT ワールドタイマー

直径43mmと比較的大柄ながらラグの飛び出しが無く、手首の収まりは良い。有機的な盛り上がりのあるラグ形状はアクアテラの特徴のひとつ。フランスは3月の末でサマータイムに切り替わったらしい。その場合はどうするか。都市名がブルーの場合はサマータイムが無く、ホワイトの場合はサマータイムが運用されていることを示している。サマータイムの時期に入っていることさえ分かっていれば、都市名を見て表示時間に+1時間すればよい。

 さて、インプレッションの期間中にフランス拠点とのウェブミーティングが行われた。その際に時計を確認して「PARIS」の表示がないことに気が付いた。よく見るとGMT+1の位置にはオメガの所在地である「BIENNE」(ビエンヌ)とある。オメガファンとしてはうれしくなる遊び心だろう。

 では、旅時計として本作を眺める。時間帯を跨ぐ移動をした際は、リュウズを1段引いて時針単独修正を行う。東向きに移動して日付が1日戻ったとしても、日付表示もバックしてくれる。その際のリュウズの操作感は明確で良い。

シーマスター アクアテラ GMT ワールドタイマー

 直径43mmとそれなりに存在感があるが、ラグの飛び出しがなくておさまりが良い。ラグ部に一体化されたストラップはフィット感に優れて柔らかな質感であり、総じて着用感は良い。バックルは余ったストラップを内側に折り込む構造で、ジャケットなどの引っ掛かりを抑制し、デスクワークにも適する。