オメガの「コンステレーション グローブマスターコー アクシャル マスター クロノメーター アニュアルカレンダー」をレビューする。本作は、往年のコンステレーションのデザインコードを抽出し、再構築した外装に加え、高精度高耐磁を誇るマスタークロノメーターを取得したハイスペックなモデルだ。
2023年4月10日掲載記事
超高精度機として登場した、もうひとつのコンステレーション
今回のレビューは、オメガ「コンステレーション グローブマスター」のアニュアルカレンダー搭載モデルだ。「コンステレーション」というモデル名を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。12角形のパイ-パンダイアルか、ジェラルド・ジェンタのCラインか、マンハッタンか、はたまたメガクォーツか。コンステレーションは登場以来、さまざまに形を変えてオメガのラインナップを彩ってきた。
コンステレーションは、センターセコンド式の自動巻きムーブメントを搭載した高精度機として、1952年に誕生したコレクションだ。では、グローブマスターとは何か。これは、北米市場向けに展開されたコンステレーションに与えられた名称である。
本作には、そんな初期のコンステレーション(グローブマスター)に見られる特徴が受け継がれている。そのことはダイアルを見れば明らかだろう。ただ、外観だけではなく、本作は高精度であることも大きな特徴であった。
自動巻き(Cal.8922)。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.6mm)。10気圧防水。124万3000円(税込み)。
オメガは、2015年にマスター クロノメーターという新たな認証プロセスを確立させた。その背景には、従来の認証基準と同社の品質の間に生じてきた乖離がある。念のために補足すると、この乖離とは、オメガの品質が認証基準を上回る方向で生じたものだ。
マスター クロノメーターの基準としては、日差0~+5秒の高い精度と、1万5000ガウスの磁場に晒されても正確に動き続ける耐磁性、さらにはパワーリザーブの正確性や防水機能も求められる。これらはC.O.S.C.公認クロノメーターとは異なり、ムーブメント単体ではなくケーシングした状態で認定を受ける必要がある。
2015年に登場したコンステレーション グローブマスター(レビュー対象のアニュアルカレンダーではなく、3針モデル)は、この認定を世界で初めて取得したモデルであったのだ。
今や同社のコレクションでは、マスター クロノメーターの取得がどんどん進んでいるが、その最初のモデルとしてデビューを飾ったことは、コンステレーション グローブマスターに超高精度機という印象をもたらした。
現行のコンステレーションとして真っ先に思い浮かぶのは、ブレスレット一体型でベゼルに爪の付いた、マンハッタンの流れをくむモデルだろう。本作は、その状況に一石を投じる、もうひとつのコンステレーションなのだ。
アイコニックなデザインを現代的にリメイク
本作がコンステレーションの血統であることを最も分かりやすく示しているのは、そのダイアルだろう。パイを焼くフライパンに似ていることから名付けられた、12角形のパイ-パンダイアルは、初期のコンステレーションを象徴するデザインのひとつだ。その6時位置には、精度への自信を表すかのような立体的な星があしらわれている。
ダイアル全面には、卵の殻のように僅かにざらついた、オパーリン仕上げが施されている。サンレイ仕上げのような華やかさはないが、落ち着いた質感は本作に渋いキャラクターを与えている。
インデックスや針、ロゴ、プリントされた文字は、全て濃いブルーに統一されている。本作がアニュアルカレンダーを搭載したモデルであることを示しているのが、インデックスの間に配された優雅な筆記体の月表示だ。
小窓による表示でも機能は変わらないが、針が12カ月をかけてゆっくりと回る様は、1年という単位が繰り返し巡るものであることを視覚的にも示してくれる。
インデックスはシンプルなバータイプだ。中央にはホワイトのスーパールミノバが塗布されており、ブルーの縁取りとのコントラストを生んでいる。時分針はペンシル型を採用している。
初期のコンステレーションによく見られていた組み合わせは、くさび型インデックスにドーフィン型の針だが、それに比べると洗練されたモダンな印象を受ける。
4本の針をセンター同軸に配しているため、それなりに高さが出ているが、そのことをうまく隠しているのが、ドーム型のサファイアクリスタルだ。緩やかに湾曲し、その縁が歪んで見えることで、ダイアルとサファイアクリスタルのクリアランスを感じさせない。
マットなダイアルに華やかさを添えているのが、光を受けて輝くフルーテッドベゼルだ。細かくシャープに刻み込まれたこの装飾は、本作を印象付ける意匠のひとつだろう。
フルーテッドベゼルはブランドを問わず多くのモデルで採用されるデザインだが、使い込むことによってエッジが削れたり、つぶれたりしてしまうことがある。しかし、そんな心配は無用だ。本作のベゼルは超硬合金である炭化タングステンを採用している。
ケースサイドからラグまでは、シームレスにつながっている。直径41mmのケースはそれなりにボリューム感があるため、パッと見ただけでは気付かなかったが、これはCラインのコンステレーションをモチーフにしたものではないだろうか。
1962年にジェラルド・ジェンタによってデザインされたCラインは流線型のフォルムを持ち、中にはフルーテッドベゼルを組み合わせたモデルも存在していた。
しっかりとした厚みを持っていることに加え、オリジナルのCラインに比べ、ラグ先に向かうラインがシャープになり、さらにパイ-パンダイアルと組み合わされることによって、コンステレーションの新定番として再構築されている。
ミドルケースはサテン仕上げを基調としており、両サイドの上端と下端に面取りが施され、立体感を与えられている。3時側には、刻みの入ったシンプルなリュウズが取り付けられ、そのトップにはΩのマークが浮き彫りにされている。
裏蓋に目を移すと、サファイアクリスタルの中央に天文台のメダリオンがセットされていることが分かる。初代から続くコンステレーションの特徴である、高い精度を象徴する意匠だ。裏蓋自体は4本のネジによってミドルケースに固定されている。
本作には、ブラウンのアリゲーターストラップが装着されている。このストラップにも、魅力的な工夫が盛り込まれている。剣先の厚さは約2mmだが、ケースに近付くにつれて厚みを増し、最厚部で約6mmとなる。部分的にケースの厚みに合わせつつ、かつエレガントなデザインを損ねることのないよう計算された結果だろう。
ケースとの接合部には切り欠きがあり、外部からバネ棒を確認することができる。これによって、ベルト交換がしやすくなっている点もうれしい。
バネ棒外しをラグとケースの間に差し込み、バネ棒の位置を探ろうとすると、ラグ内側を突いて傷付けることや、ストラップを痛めてしまう可能性がある。この切り欠きは、そんな心配から解放してくれる。
ストラップには、Dバックルが組み合わされている。閉じた際にはストラップの剣先が完全に隠れ、すっきりとした印象をもたらしてくれる。留めるには軽い力で押すだけでパチンと気持ちよく止まり、外す際にはプッシュボタンを押し込むだけだ。
サイズを調整する際には、多少ストラップに力が加わってしまうが、機構がシンプルな分、厚みは比較的抑えられている。