ジン/EZM シリーズ Part.3

FEATUREアイコニックピースの肖像
2024.07.19

1961年の創業以来、良質なツールウォッチを製作してきたジン。そんな同社のフラッグシップが、プロ用のEZMシリーズである。アインザッツツァイトメッサー、出撃用計測機器という名称が示す通り、このシリーズは、ふたつの特殊部隊の要請から生まれたものだった。以降、EZMの各モデルは、ジンの進化を反映して、あらゆる点で大きく様変わりすることになる。

星武志:写真 Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
広田雅将(本誌):文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2024年5月号掲載記事]


[2014~Current]EZM13.1
60分積算計を強調するEZM1の後継機

EZM13.1

EZM13.1
EZM1の流れを汲むダイビングクロノグラフ。同軸積算計に代えて、6時位置には単独の60分積算計が設けられた。写真のモデルはEZM13.1。文字盤にアラビア数字を加えたEZM13も存在した。自動巻き(Cal.SZ02)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径41mm、厚さ15mm)。500m防水。74万8000円(税込み)。

 創業以来、一貫して信頼できるエボーシュを採用してきたジン。EZMシリーズも例外ではなく、ETA2892A2、ETA7750やレマニア5100といったエボーシュを好んで搭載してきた。その方針は今なお変わりないが、2006年以降、ジンは独自のモジュールを載せたSZ系ムーブメントも併用するようになった。EZM13が搭載するのは、30分を60分積算計に改めたにSZ02。もともとはワールドカップ記念の「303 フットボール」向けだったが、プロ向けのEZMにも転用された。

EZM13.1

EZM1の流れを汲むEZM13.1だが、ダイバーズウォッチとしての性格が強調された。アルミニウム製のプレートをあしらった回転ベゼルと、三角形状のマーカーはEZM1に同じ。しかし逆回転防止に改められた。
EZM13.1

ドライカプセルが埋め込まれたラグ。ジンのダイバーズウォッチに準じて、本作もベゼルがネジによる固定式となった。強いショックを受けても脱落の心配が少なく、整備性にも優れている。

 その見た目が示すように、EZM13とは1997年に発表されたEZM1の後継機と言ってよい。視認性の高い文字盤や、Arドライテクノロジー、特殊オイルといった特徴は同じ。EZM1の特徴である同軸積算計は持たないものの、6時位置にある巨大な60分積算計は代用としては十分以上だ。また、ケース素材がチタンからSSに変わった結果、防水性能も30から50気圧に高まった。ケースの直径はEZM1より1mm大きい直径41mm。しかし、わずかに薄くなったほか、軟磁性素材の耐磁ケースにより、8万A/mの耐磁性能を持つようになった。レマニアでないことを残念がる意見はあるが、出撃用計測機器と考えれば、EZM13のほうがはるかに優れているし、SUG製のケースは、ミッションタイマー向けとしては十分に上質だ。

EZM13.1

ケースサイド。50気圧防水のクロノグラフにもかかわらず、ケースの厚みは15mm、重さは98gに留まった。高い防水性能を可能にした理由が、プッシュボタンに採用されたD3システムだ。水中でのクロノグラフ操作が可能となっており、この新しいシステムがクロノグラフらしからぬ防水性能をもたらした。

 1997年以降、プロ向けのツールとして拡大してきたEZMシリーズ。原点であるEZM1を仕立て直した本作とは、EZMの本道であり、つまりはジン特殊時計会社そのものと言ってよいのではないか。もちろんジンには数多くの傑作がある。しかし本作ほど、ジンの変わらなさと、進化を体現したモデルはないように思える。それこそがアイコンではないか。

EZM13.1

EZMシリーズに共通する文字盤。作動を示すインジケーターとして、あえて秒針が残された。しかし、秒カウンターをグレーで彩色して、その存在を目立たせない。
EZM13.1

ケースバック。ダイバーズウォッチのため、防水性能は50気圧ではなく500m表記。すべてのジン製ダイバーズウォッチに同じく、DNVによるダイバーズウォッチ認証を得ている。現在のSUGなら、より高級なケースも作れる。しかし、あえて上質に留めている。



Contact info: ホッタ Tel.03-5148-2174


ジン「EZM12」をインプレッション。救急医療に必要な機能とメンテナンス性が盛り込まれた1本

https://www.webchronos.net/features/104940/
【動画で解説】新しいジン「EZM13.1」は何が変わった? スペシャリストが語る前作との違いとは

https://www.webchronos.net/features/82666/
特殊部隊のニーズに応えるタフさと取り回しの良さ ジン「EZM3」/気ままにインプレッション

https://www.webchronos.net/features/50360/