300本限定の歴史的パイロット・クロノグラフ、ジンの「156.1.E」は、伝統と現代技術の完全な融合によって紛れもなく魅力的な時計になった。その特別な魅力は、時計愛好家に絶大な人気を誇る歴史的タイムピースの現代的な解釈にある。この「156.1.E」のバックグラウンドを理解するためには、その源流に「155」というモデルが存在していることを知ることが重要だ。このタイムピースをオリジンとして、ジンは今日までにブランドにとってのアイコンである「156」と「156 MILITARY」を開発したのだった。
ダイアルセンターのクロノグラフ 60分積算計
新しいモデルである「156.1.E」の革新的な特徴は、ジンのインハウス、クロノグラフ・ムーブメントのCal.SZ01にある。その利点はクロノグラフ機能のストップ・タイムをより簡単に、素早く、正確に記録できることだ。
また、視認性の面でも明らかにこのムーブメントは優れている。Cal.SZ01ムーブメントは、新設計のねじ込み式裏蓋を備えたケースに組み込まれており、直径43mmケースの、歴史的な先代モデルのスライド式ケースを審美的に再現している。新モデルである156.1.Eでは、風防にサファイアクリスタルを採用しており、初代モデルで使用したアクリルガラスよりも傷が付きにくいことが特徴の一つである。
「MODEL 156.1.E」
自動巻き(Cal.SZ01)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。耐磁性能:4800A/m(DIN8309準拠)。SSケース(直径43mm、厚さ15.45mm)。10気圧防水(DIN8310準拠)。ヴィンテージタイプ・ブラック仕様:96万8000円(税込み)。
自動巻き(Cal.SZ01)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。耐磁性能:4800A/m(DIN8309準拠)。SSケース(直径43mm、厚さ15.45mm)。10気圧防水(DIN8310準拠)。ブレスレット仕様。96万8000円(税込み)。
「156」の心臓Cal.SZ01
モデル「156」の最初のモデルは、レマニア製のCal.レマニア5012ムーブメントを搭載した腕時計だった。このムーブメントは、センターにクロノグラフ積算計の秒と分、6時位置に12時間積算計、3時位置に曜日と日付表示を備えていたものだった。
その後、スイスのマニュファクチュールであるレマニアがCal.レマニア5000系ムーブメントを発表すると、その派生ムーブメントが市場に出回るようになった。そのひとつが伝説的なCal.レマニア5100だ。その信頼性と頑丈さ、そして表示機能の高さから、1980年代以降、軍用時計にも多く採用された。1980年代半ばには、ジンの156にもCal.レマニア5100を採用。その後、さらなるムーブメント開発の結果、12時位置には24時間表示のサブダイアルが追加されたのだった。
新しい156.1シリーズには、140.ST、EZM 10、EZM 1.1、717 といったモデルで馴染みのあるジンのインハウスムーブメント、Cal.SZ01を搭載、あえて24時間積算計のない、オリジナルのデザインに回帰した。また、曜日表示も省くことで日付がより明瞭になり、高い視認性を保っている。
現代的な解釈
この腕時計のパイロットベゼルは、ケースに特殊結合方式で固定され、外れることなくスムーズに回転させることができる。これもまた、156.1シリーズで初めて導入した革新的なジン・テクノロジーだ。さらに、このシリーズモデルで初めて、スライド式回転ベゼルに特殊結合の構造を採用した。パイロットベゼルに用いられているテギメント・テクノロジーは、アンスラサイトカラーや、ブラックカラーのハード・コーティングを施すための重要な前提条件でもある。156.1 のデザイン哲学である「実績のある機能を継承しながら、変化の可能性を活かす」ことで、歴史的でありながらモダンで魅力的なタイムピースが誕生した。
テギメント・テクノロジー
航空高度計のコールスマン・ウィンドウを模した日付表示
このタイムピースの歴史モデルと異なる印象的な要素としては、パイロット用回転ベゼルと12 時位置に夜光塗料を塗布したラウンドマーカーで、暗闇の中でも設定された基準時刻をはっきりと読み取ることができる。数字だけでなく、時針と分針もアイボリー色の夜光塗料を採用した。このようなデザインはスタイリッシュなヴィンテージ感を表現し、歴史との視覚的なつながりを生み出している。また、歴史的なパイロット・クロノグラフが好きなコレクターも満足できるポイントとして、3 時位置の日付表示は、基準気圧を設定するためのコールスマンの気圧高度計を彷彿とさせるデザインとなっている。
この表示も時計を完全に機能させるためには、高度計の基準気圧と同様、手動で位置を調整する必要がある。日付表示窓のデザインは、この時計の計器としての性格を強調すると同時に、長距離フライトにおけるカレンダーの重要性を示している。「実績のある機能を継承しながら変化の可能性を活かす」というジンのデザイン哲学が伝統と現代性を併せ持つクロノグラフ 156.1.E を生み出した。
「156.1.E」に至るまで。「155」から始まるヒストリーモデル
156.1.Eのオリジンを知ろう! ジン「155」
歴史的なモデルであるジンの「155」は、1980年から1990年初頭に、ごく少数が販売された「ダブルストップ機構クロノグラフ(1960年代にドイツ連邦軍で使用されていた呼び名)」である。この腕時計は今日でも人気のあるジンのコレクターズアイテムだ。なお、ジンはドイツ連邦軍から放出されたホイヤー「1550SG」を譲り受け、「ホイヤー/ジン ドイツ連邦軍パイロットクロノグラフ」という別名を持つ「155 Bw」として販売していた。
「155」の後継機種「156」と「156 MILITARY」
155の後継機である156と156 MILITARYは、曜日と日付表示が付いた時計だ。当初、上下をスライドさせて組み上げる、スライド式ケースが採用されていた。このクロノグラフはセンターにクロノグラフ針を備えたCal.レマニア5012、または24時間表示ディスプレイに、センターのクロノグラフ分針を配したCal.レマニア 5100ムーブメントで時を刻んだ。これらの伝説的なムーブメントがジンのインハウスムーブメントであるCal.SZ01の設計の基本となり、新しく発表された腕時計、156.1.E に搭載されているのである。
ねじ込み式の裏蓋、アクリル風防、先代の155とは対照的に短くしたプッシャーとリュウズは部品がケースに寄ることで衝撃時の損傷を最小限に抑えたており、当時の156の特徴だった。