RM 27-02 Tourbillon Rafael Nadal [2015]
マテリアルへの挑戦を続ける最新トゥールビヨン
RM 27-02トゥールビヨン ラファエル・ナダル
「ラファエル・ナダル」と名付けられたトゥールビヨンの3作目。ミドルケースと一体化した地板や、カーボン系複合材の採用など、今までにない特徴を持つ。手巻き(Cal.RM27-02)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。NTPT®カーボン×クォーツTPT®&NTPT®カーボン(縦47.77×横39.7mm)。限定50本。8800万円。
「ラファエル・ナダル」と名付けられたトゥールビヨンの3作目。ミドルケースと一体化した地板や、カーボン系複合材の採用など、今までにない特徴を持つ。手巻き(Cal.RM27-02)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。NTPT®カーボン×クォーツTPT®&NTPT®カーボン(縦47.77×横39.7mm)。限定50本。8800万円。
今や多彩なコレクションを擁するリシャール・ミル。その中で、最も同社らしいモデルが「RM 27-02」ではないだろうか。
ラファエル・ナダルの名を冠したトゥールビヨンはこれで3作目。軽さと耐衝撃性の両立を目指したこのコレクションは、1作目のRM 027がチタン製の地板とアルミニウムリチウム製の受けを、2作目はそれをケーブルで支える構造を持っていた。対してRM 27-02は、ムーブメントの地板とミドルケースの一体成形に挑戦。筆者の知る限り、こういった構造を持つ時計は、従来までに3例あるのみだ。しかも薄さではなく、剛性を持たせるために採用したのは、このモデルが初だろう。
地板とミドルケースの素材は、NTPTカーボン。スイスのノース・シン・プライ・テクノロジー(NTPT)社が開発した新しいカーボン素材である。従来の素材との違いは、単方向カーボンテープ(UDテープ)を45度ずつずらして積層した点。これにより、理論上の耐久性は高まる。そしてベゼルとケースバックには、新素材のクォーツTPT&NTPTカーボンの複合材が採用された。これも製法はNTPTカーボンとほぼ同じだ。カーボンとクォーツファイバーで薄いUDテープを作り、それらを積層し、樹脂を含浸させ、加圧炉で成形する。この製法の場合、「つなぎ」に使う樹脂が問題になるが、NTPT社は、紫外線にも劣化しにくい白いレジンを開発した。
現在のリシャール・ミルは、素材はもちろん、設計や仕上げも進化した。しかしケースやムーブメントを同時に設計する、というアプローチは第1作から不変だ。筆者の個人的な意見を言うと、その手法の完成形が、ケースとムーブメントを一体化させたRM 27-02となるのだ。
(左上)徹底的に軽量化されたムーブメント。地板の代わりになるのが、ミドルケースから伸びたフレーム。この上にムーブメントの部品が据え付けられる。受けはRM 027とRM 27-01に同じくアルミニウムリチウム製。(右上)アルミニウムリチウム製のトゥールビヨン受け。興味深いことに、片持ちの受けという設計は、第1作のRM 001から変わっていない。面取りしにくいこの素材を、完全に磨いているのは、リシャール・ミルならではだ。(中)ケースサイド。ムーブメントを低く置いて装着感を改善する、という手法は、第1作から受け継がれたものだ。ベゼルとケースバックに用いられる、クォーツTPT®&NTPT®カーボンの構造がよく分かる。石英とカーボンを積層させたこの素材は、独特の表情を持つ。なおNTPT社は、現時点で最も薄いUDテープを作れるメーカーでもある。極薄のUDテープは「つなぎ」に使う樹脂との馴染みが良く、結果としてNTPT社製の複合材は、優れた耐久性を持つに至った。NTPT®カーボンを例に挙げると、その耐久性は、一般的なカーボンに比べて、約25~40%ほど高い。(下)湾曲したケースバックと、広い接地面積、そして低重心が優れた装着感をもたらす。