BIG BANG ALARM REPEATER
実用性に富むプチコンプリケーションの充実
GMT表示とアラームを搭載した実用的なプチコンプリケーション。アラーム機構はミニッツリピーターのメカニズムに酷似しており、大きなハンマーと調速機構を備える。そのため16秒間、澄んだ音色で時間を知らせることが可能だ。手巻き(Cal.HUB5003)。49石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミック×Ti(直径45mm)。3気圧防水。世界限定250本。469万8000円。
筆者は以前ジャン-クロード・ビバーに「なぜウブロには限定モデルが多いのか」と訊ねたことがある。彼の答えは明快だった。「バリエーションがあまりないので、限定モデルを増やす他ない」。
しかし旧BNBコンセプトの吸収により、ウブロはさまざまなムーブメントの開発が行えるようになった。ビッグ・バンの5日巻きトゥールビヨンなどは好例だろう。当初こういった開発はハイエンドに集中していたが、近年はプチコンプリケーションの数が増えてきた。代表例が2015年発表の「クロノ パーペチュアルカレンダー」や「アラームリピーター」だろう。とりわけ面白いのは後者だ。アラームなのにリピーターと銘打ったのは、ハンマーがゴングを叩く構造のため。巻き上げ残量が最大の場合で、最長16秒の間、澄んだ音色でチャイムが鳴り続けるのだ。
この開発にあたってウブロは外部の開発メーカーに協力を仰いだ。ビバーはその理由をギスベルト・L・ブルーナーに対して「今やウブロの開発リソースは消費されつくしているため」と説明している。しかし見たところ、アラームリピーターの設計はウニコに通じる合理性を備えている。つまりウブロは、外部と協力してこれだけのムーブメントを設計できるほど、開発のノウハウを蓄積したということだろう。
今や優れた外装に加えて、興味深いプチコンプリケーションも擁するに至ったウブロ。ビバーはブルーナーに対してこう続けている。「2015年は、バーゼルワールドの期間中だけで約1億6000万スイスフランの受注を得た。今後の目標は5億スイスフランだ」。正直に言えば、既存モデルのコスメティックチェンジだけでその売り上げを実現するのは難しいだろう。しかし本作を含む、プチコンプリケーションの充実を考えれば、彼の目標は決して不可能ではなさそうだ。