BR 01-92
ダッシュボードクロックを彷彿させるBRシリーズの原点

BR 01-92

BR 01-92
2005年初出。現行のBR 01-92 カーボンとまったく同じだが、これが第1世代である。自動巻き(BR-CAL.302/ETA2892A2)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS+PVD(ケース径46mm)。100m防水。参考商品(現行モデルは56万円)。

 1997年の「ヴィンテージ 123」で、生粋のミリタリーウォッチではなく、ミリタリーテイストの時計を作ることに成功したベル&ロス。そこにオリジナリティを盛り込んだことでBR01という傑作が生まれた。

 数多くの著名人や関係者がこのモデルに飛びついたが、最も知られているのは、かのラルフ・ローレンである。ミリタリー風の味付けを好む彼は、このモデルをプライベートで愛用しただけでなく、広告ビジュアルでも多用した。またそれだけに留まらず、ラルフ ローレンの「サファリコレクション」に、ミリタリーテイストで成功したBRシリーズの影響を見ることも決して難しくはない。

 もっともカルロス・A・ロシロは「そのかつてないデザインとサイズは当初、市場から必ずしも支持されなかった」と遠回しに認めている。しかし時計としての高い完成度は、BRシリーズを市場に急速に根付かせることとなる。例えば個性的なスクエアケース。これはベゼルトップとケース、そして上下のラグの4つの部品で構成されていたが、その加工精度は極めて高かった。例えば別体で作られたケースとラグのクリアランスは小さく、リュウズのチューブが簡略化されたにもかかわらず、操作時のガタもほぼなかった。

 汎用エボーシュを使ってコストを下げる一方で、他にはないデザインと、凝った外装を与えて商品力を高めたBRシリーズ。その方法論は、今やミドルレンジメーカーの定石といってよい。他社も同じような試みに取り組んできたが、いわゆる新興メーカーで成功したのは、ラルフ ローレンとベル&ロスぐらいではないか。多くの人が、BRシリーズの成功の理由として、そのデザインと、巧みなビジュアル戦略を挙げる。しかし同社が成功を収めた本当の理由は、定石を当たり前に、かつ真面目に行ったため、なのである。

BR 01-92

(左)コックピットクロックとのつながりを感じさせる、極めて大きなインデックス。驚くべきは、12、3、6、9のインデックスの位置だ。普通、インデックスは可能な限り、文字盤の外周側に置かれる。しかしBRシリーズでは意図的に中心に寄せられた。理由は、高い見返しがもたらす影がインデックスにかからないようにするため。視認性に対する入念な配慮である。(右)2ピースケースを持つ BR 01。そのベゼルは、バックケースと一体化されたミドルケースに、4本のネジで固定される。切削で成形されたケースは、写真が示す通り、極めて優れた加工精度を誇る。

BR 01-92

ケース側面。プレスではなく、切削を使うことにより、BRシリーズはかつてない造形を持つことに成功した。

BR 01-92

(左)ケースバック。ケースの上下に見える6角のネジは、バックケースの固定用ではなく、別部品のラグを固定するもの。特殊なレンチを使うことで、ラグとケースを切り離せる。なお中心に見える小さなマイナスネジは、リュウズを抜くためにオシドリを解放するためのもの。普通、BRシリーズのようなモノコックケースに載せるムーブメントは、リュウズを外すためのオシドリネジが文字盤側にある。しかしETA2892A2は、3ピースケースに収めることが前提のため、オシドリネジはバックケース側。そこにアクセスするためのネジをあえて露出することで、BRシリーズはケースの2ピース化に成功している。(右)別部品のラグ。ただし2006年発表のBR 03では、ラグとケースは一体成形されるようになっている。