BR-X1
発表10年を経て進化を遂げた最新鋭のケース

BR-X1 チタニウム

BR-X1 チタニウム
2014年初出。毎年のように進化させてきたBRのケースを、複雑化させたのが本作である。自動巻き(BR-CAL.313/ETA2892A2+デュボア・デプラ社製モジュール)。56石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。Ti×セラミックス×ラバー(ケース径45mm)。100m防水。世界限定250本。245万円。

 2005年以降、多様なバリエーションを増やしてきたBRシリーズ。外観はほぼ同じだがケース構造は年々進化し、14年にはまったく新しい設計を持つに至った。それがカルロス・A・ロシロの言う究極の実用時計「BR-X1」である。

 一見そのケースは、ケースサイドを張り出させただけだが、構成は完全な別モノだ。例えば標準的なBR 01のケースは、ミドルケース+ベゼル+ラグで構成されているが、BR-X1は、ケースを上下で4層に分け、側面をセラミックスとラバーで覆っている。ウブロの「ビッグ・バン」を思わせる設計だが、側面に取り付けられたセラミックスの外殻はすべてラバーを介して固定されるなど、耐衝撃性に対する配慮はさらに細かい。初代BRのような斬新さはないものの、ベル&ロスは機能性を強く打ち出してきたのである。

 なぜBRシリーズは、新しいケースを持つに至ったのか。カルロス・A・ロシロは「ワールドテンパス」誌のインタビューに対して次のように述べている。

「BR 01のプラットフォームは、2000〜5000ユーロの価格帯で〝合理的〟なフォーマットとしてデザインされていました。対してBR-X1の新しいプラットフォームは、私たちに〝非合理〟なことに挑戦する可能性を与えてくれたのです」

 〝非合理〟の一例が新素材である。ベル&ロスは新素材の採用に意欲的だったが、BR- X1以降それはいっそう加速した。またケースを4層に分けることで、かつて不可能だった分厚いコンプリケーションの搭載も容易になった。それが可能になったのは、自社製ケースの加工精度が高まったためだった。

 発表以来、BRシリーズに唯一無二の個性を与えてきた独創的なケース構造。それはBR-X1でひと通りの完成を見たと言える。

BR-X1 チタニウム

(左)アラビックからバーに改められたインデックス。高級機らしく、ダイヤモンドカット処理が施されている。またサファイアクリスタル製の文字盤から見えるクロノグラフモジュールも、面取りや筋目処理が与えられた。ベラミッシュ曰く「文字盤の高級化に取り組むようになったのは本作から」。(右)サテンとポリッシュを混在させたケースの仕上げ。素材はSSではなくチタンである。ベル&ロスが初めてチタンケースを採用したのは2006年のこと。以降わずか8年で、同社はこれだけの仕上げを与えられるようになった。

BR-X1 チタニウム

立体感を強調したケースサイド。赤い部分はラバーのインサート、黒い部分はセラミックス製である。骨格自体はチタンで出来ているため、BR 01とほぼ同寸ながら、装着感はより快適になった。

BR-X1 チタニウム

(左)3ピースのケースバック。それに伴い、オシドリを解放するためのネジは廃された。(右)極めて複雑な形状を持つケース。チタン製の骨格を、セラミックスで覆っているのが分かる。カルロス・A・ロシロ曰く「洗練された航空機を見て、未来の航空業界を考えると、技術は進歩し、形状がより複雑になっていることが分かるでしょう。では時計に置き換えるとどうか? ベーシックでシンプルになるのではなく、私たちは第5世代の航空機のような、新しい時計を作ろうと思ったのです」。