HW OCEAN BIRETROGRADE
初代バイレトログラードの意匠性を継承する現行機
2017年初出。30秒と曜日のレトログラード表示を持つモデル。視認性は非常に良好である。自動巻き(Cal.HW3305、ブランパン共同開発の自動巻き+モジュール)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KWG(直径42.2mm、厚さ10.62mm)。10気圧防水。885万円。
1989年に発表されたハリー・ウィンストンの「HW プルミエール・バイレトログラード パーペチュアルカレンダー」は、スイスの時計業界に、レトログラードという概念をもたらしたモデルだった。これ以前にも、ジャン・ディブなどがデュボア・デプラのモジュールを載せたレトログラードを製作していたが、高級時計に載るようになったのは、明らかにこのモデル以降のことだ。事実、本作の成功を受けて、ロジェ・デュブイもほぼ同じレトログラード付きの永久カレンダーを製作し、他のメーカーも追随するようになった。
レトログラードのモジュールを開発したのは、後にアジェノーを興した、ジャン-マルク・ヴィダレッシュである。彼は毎年のようにレトログラードに改良を加え、やがて、秒針のレトログラード化にも成功した。
彼がレトログラードを好んだ理由は、時の始まりと終わりが分かるためだった。しかし、時計メーカーは、むしろそれ以上に、文字盤レイアウトの自由度を高められる点を高く評価したのである。
表示に自由度を与えるためのレトログラード。一貫してその思想に忠実だったのが、〝本家〞たるハリー・ウィンストンだった。時計の機能=針の本数を増やすと、どうしても視認性は悪化してしまう。しかし、レトログラード式の表示針ならば、無理なく、それぞれの表示を拡大できる。こういった試みの最たる例が、「HW オーシャン・バイレトログラードオートマティック42㎜」だろう。デイデイト付き、しかも文字盤にダイヤモンドをあしらっているにもかかわらず、視認性はまったく損なわれていない。
レトログラードを核に、時計メーカーとしてのユニークさを打ち立てたハリー・ウィンストン。同社はこの機構を、コンプリケーションにも盛り込むようになったのである。
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