ハリー・ウィンストン/レトログラード Part.1

HW OCEAN BIRETROGRADE

初代バイレトログラードの意匠性を継承する現行機

HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック 42mm

HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック 42mm
2017年初出。30秒と曜日のレトログラード表示を持つモデル。視認性は非常に良好である。自動巻き(Cal.HW3305、ブランパン共同開発の自動巻き+モジュール)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KWG(直径42.2mm、厚さ10.62mm)。10気圧防水。885万円。

 1989年に発表されたハリー・ウィンストンの「HW プルミエール・バイレトログラード パーペチュアルカレンダー」は、スイスの時計業界に、レトログラードという概念をもたらしたモデルだった。これ以前にも、ジャン・ディブなどがデュボア・デプラのモジュールを載せたレトログラードを製作していたが、高級時計に載るようになったのは、明らかにこのモデル以降のことだ。事実、本作の成功を受けて、ロジェ・デュブイもほぼ同じレトログラード付きの永久カレンダーを製作し、他のメーカーも追随するようになった。

 レトログラードのモジュールを開発したのは、後にアジェノーを興した、ジャン-マルク・ヴィダレッシュである。彼は毎年のようにレトログラードに改良を加え、やがて、秒針のレトログラード化にも成功した。

 彼がレトログラードを好んだ理由は、時の始まりと終わりが分かるためだった。しかし、時計メーカーは、むしろそれ以上に、文字盤レイアウトの自由度を高められる点を高く評価したのである。

 表示に自由度を与えるためのレトログラード。一貫してその思想に忠実だったのが、〝本家〞たるハリー・ウィンストンだった。時計の機能=針の本数を増やすと、どうしても視認性は悪化してしまう。しかし、レトログラード式の表示針ならば、無理なく、それぞれの表示を拡大できる。こういった試みの最たる例が、「HW オーシャン・バイレトログラードオートマティック42㎜」だろう。デイデイト付き、しかも文字盤にダイヤモンドをあしらっているにもかかわらず、視認性はまったく損なわれていない。

 レトログラードを核に、時計メーカーとしてのユニークさを打ち立てたハリー・ウィンストン。同社はこの機構を、コンプリケーションにも盛り込むようになったのである。

HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック 42mm

(左)1960年にニューヨークの5番街にオープンした、ハリー・ウィンストン本店のファサードをイメージしたリュウズガード。スウォッチ グループの傘下に収まって以降、ハリー・ウィンストンのケースは極めて優れた質感を得るようになった。(右)本作を特徴付けるのが、8時位置に置かれた30秒レトログラード。2006年に発表された「HWプルミエール・エキセンター バイレトログラード」から引き継がれた機構だが、針を短く切り、表示を拡大することで視認性をより高めた。なお、文字盤はギヨシェを施したMOP製、オーナメントは18Kゴールド製である。

HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック 42mm

ケースサイド。搭載するレトログラードモジュールは、2006年に開発されたもの。モジュール本体の厚さが1.3mmしかないため、リュウズの位置が上下にずれることもなく、ケースのほぼ中心にあることが分かる。驚くべきことに、ダイヤモンドがセットされているにもかかわらず、ミドルケースとベゼルは一体成形だ。

HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック 42mm

(左)高い実用性をもたらすのが、ブランパンベースの自動巻きムーブメント。ヒゲゼンマイはシリコン製で、緩急装置はフリースプラングテンプである。(右)ダイヤモンドをセッティングしたラグ。かつて、一部のモデルのダイヤモンドセッティングはニューヨークで行われていたが、現在はスイスで行われている。技術に関してはニューヨークに遜色ない。


Contact info: ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション Tel.0120-346-376


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