HW OCEAN RETROGRADE
アワー&ミニッツを表示する最新同軸レトログラード
2018年にザリウムケースで発表された「プロジェクト Z12」の素材違い。文字盤の上下に時分のダブルレトログラードを持つ。自動巻き(Cal.HW3306)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KRG(直径42.2mm、厚さ11.27mm)。10気圧防水。485万円。
レトログラードを極大化することで、ユニークさを強調し、視認性も向上させる。近年のハリー・ウィンストンが好む路線を、いっそう推し進めたのが2018年初出の「プロジェクト Z12」だ。最大の特徴は、文字盤の上下に、時と分の同軸レトログラードを配置した点。翌19年に発表された「HW オーシャン・レトログラード オートマティック42㎜」は、その意匠を忠実に受け継いでいる。
一般的に、今あるレトログラードの多くは、レトログラード式の分針とジャンピングアワーを持っている。理由は、ふたつの同期がとりやすいのと、文字盤に余白を残しやすいためだ。文字盤の重要性が増す近年、この構成はいっそう目立っている。
対してハリー・ウィンストンは文字盤のほぼ全面を、あえてレトログラードで埋め尽くした。同社が極めて優れた文字盤を与えるようになったことを思えば意外だが、ハリー・ウィンストンは、むしろレトログラードを、明確なアイコンとして打ち出したいのだろう。ザリウムを用いた18年モデルと19年の本作では、その傾向が一層強い。もっとも、レトログラードの軸を支えるカバーにはマンハッタン橋の高欄を模した模様が施されるほか、黒いカバーの模様も、マンハッタン橋のケーブルに範を取っている。いずれも仕上げは良く、文字盤を持たないこの時計の、大きなアクセントとなっている。逆説的な表現になるが、文字盤でさまざまな表現ができればこその、ダイアルレスという構造を取れたわけだ。
1989年のHW プルミエールから約30年。他にはない表示を設けて進化し続けるハリー・ウィンストンのレトログラード機構は、ついに文字盤全面を覆うようになった。モデルではなく、ひとつの機構をアイコンにまで育てあげたという点で、ハリー・ウィンストンは非凡なメーカーである。
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