2023年8月29日から開催されたジュネーブ・ウォッチ・デイズで、ユリス・ナルダンは新作モデル「ブラスト フリーホイール マルケトリ」を発表した。ムーブメント部品へシリシウム(シリコン)を採用することにおいて、時計業界で先駆けたユリス・ナルダンは、2023年に同素材でさらなる高みへ向かっていく。
ユリス・ナルダンから新作モデル「ブラスト フリーホイール マルケトリ」が登場
ユリス・ナルダンは2023年8月29日から開催されているジュネーブ・ウォッチ・デイズで、新作モデルを発表した。「ブラスト フリーホイール マルケトリ」だ。
ユリス・ナルダンは初めて腕時計のムーブメントにシリシウム(シリコン)部品を用いたブランドだ。軽量で摩耗しづらく、またムーブメントに耐磁性能を与えることができるシリシウムは、現在では時計にとってなじみ深い素材となっている。しかしユリス・ナルダンは今回の新作でシリシウムを技術的な素材としてのみならず、“芸術的”な素材として扱った。
手巻き(Cal.UN-176)。23石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約7日間。18KWGケース(直径45mm)。30m防水。1916万2000円(税込み。9月1日からの価格)。
青が美しいシリシウム・マルケトリ
ブラストはファセットやエッジが立ったケースを特徴とする、ユリス・ナルダンの主要コレクションだ。18KWG製の新作モデルでも、レーザー加工を用いて設計された複雑な造形が採用されており、さらに青をまとったシリシウム・マルケトリ・ディスクがユニークな文字盤は、幾何学的なラインが描かれている。このラインはマルケトリ(寄木細工)がモチーフになった。「フリークX」ですでに発表されてきたディスクだが、ブラストコレクションでは初めてとなる。103枚のブルータイルが織りなす寄木細工が、まさにシリシウムを芸術的な素材へと引き上げているだろう。
ブルータイルはミクロン単位で精密なマット仕上げまたは鏡面仕上げが施されており、かつ0.30mmと0.35mmの、ふたつの厚みをコンビネーションすることで、本作は反射とコントラストが際立った立体感、そして華やかな仕上がりを得た。きわめて小さなシリシウムプレートを組み立て、装飾するために、職人らは何時間にもわたって繊細な作業に専念することが求められた。
また、ムーブメントの機構もデザインコードとしてアクセントを加える。このコードは、2001年にユリス・ナルダンが初めてシリシウムを導入した「フリーク」へのオマージュとなっている。
文字盤には6時位置のユリス・アンカー・コンスタント・エスケープメントを搭載したフライング・トゥールビヨン、12時位置の香箱、4時位置の7日間パワーリザーブインジケーター、10時位置のパワーリザーブ・ディファレンシャル等といった各機構が、不可視のアタッチメントによって、宙を舞うかのように配置されている。一目で複雑・精緻な時計であることがわかるだろう。ちなみに3時位置は装飾が施された巻き上げ機構、7時位置は減速車、パワーリザーブ・ディファレンシャルの上に配置された歯車は中間車だ。
超ガラスボックスによってケースサイドからも文字盤を眺められる。初めてシリシウム製となったケースバックと併せて、
ユリス・ナルダンのマニュファクチュールが有する最先端技術を、あますことなく楽しめるだろう。
自社製ムーブメントCal.UN-176
新作モデルには、約249個のパーツを用いた自社製ムーブメントCal.UN-176が搭載されている。
先述の通り、本作は2001年に登場したフリークへのオマージュとして、文字盤上を各機構が「宙を舞う」かのように配置されているが、これを実現するのに2年の研究開発期間が費やされた。
特筆すべきは脱進機だ。従来のアンカー脱進機の原理を揺るがす、シリシウム製ユリス・アンカー・コンスタント・エスケープメントは、中央にアンクルを固定した円形フレームを備えており、さらにふたつのブレードスプリング(板ばね)によって支えられている。このブレードスプリングの直径は、毛髪の4分の1の薄さもない。
ふたつのブレードスプリングは互いに垂直に取り付けられ、曲がったり安定状態を維持したりすることで、パワーリザーブに関係なくテンプにかかる衝撃を均一に保てるようになった。ヒゲゼンマイとガンギ車にもシリシウム・テクノロジーが採用されたことで、従来のガンギ車やアンクルピボットの石は不要となった。
この特別なトゥールビヨンは、2015年のグランプリ・ド・オルロジュリー・ド・ジュネーブ(GPHG)でトゥールビヨン部門賞を受賞している。
12時位置のダイナミックな香箱も、宙を舞う機構たちの重要なキープレイヤーになっている。可視化できるアタッチメントがないため、ぽっかりと文字盤上に浮かぶ効果を高めているのだ。この香箱のパワーリザーブは約7日間と、性能面にも妥協がない。4時位置のパワーリザーブインジケーターでゼンマイの残量を確認できるが、インジケーターは静止したままで、ゼンマイが完全に巻き上げられている時はインジケーター前に3本の帯が、残り少ない時は1本の帯が示されるという、独創的な手法を採用する。
ブルーのシリシウム製タイルと複雑機構が相まって、技術的にも芸術的にも磨きかかった、ユリス・ナルダンのオート・オルロジュリーを味わえる新作モデルだ。
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