グランドセイコーから約50年ぶりに手巻ムーブメントが生み出された。10振動の手巻メカニカルムーブメント「Cal.9SA4」を搭載した限定モデル80本とレギュラーモデルが各1種類ずつ発売される。いずれも8月9日発売予定だ。
毎秒10振動と最大80時間のパワーリザーブを備えた手巻きムーブメント
2020年に誕生した「Cal.9SA5」は毎秒10振動かつ、約80時間のパワーリザーブを備え、さらに2023年のWatch and Wonders Genevaでは「Cal.9SA5」をベースにしたグランドセイコー初のメカニカルクロノグラフムーブメント「Cal.9SA5(テンタグラフ)」が発表された。
そして、今年2024年は新世代の手巻きメカニカルムーブメント「Cal.9SA4」を搭載したエボリューション9 コレクションのドレスウオッチが発表された。安定した精度に繋がる毎秒10振動という高い振動数と、最大80時間という長時間のパワーリザーブを備えている。
長時間のパワーリザーブを実現するために、主ゼンマイからの動力を効率よく調速機構に伝えるデュアルインパルス脱進機、安定した精度を長期にわたって持続するのに適した精度の調整に緩急針のないグランドセイコーフリースプラング、テンプの振り角が変化しても精度に変化が及びにくい巻き上げヒゲ、ふたつの主ゼンマイを備えたツインバレルなどがキャリバー9SA5から引き継がれている。
さらに、巻き上げ時の心地よい感触や音を実現しつつ手巻機構の部品の動きを観賞することができるムーブメントにするためにCal.9SA4を構成する部品の約40%は新たに設計されている。本作を設計する際に巻き上げ時の感触を追求するため、コハゼとコハゼバネの形状が大きく見直された。
コハゼは巻き上げ時に主ゼンマイが逆回転するのを防ぐ部品である。そのデザインは盛岡市の鳥であり、グランドセイコースタジオ 雫石の敷地内でもその姿が見られるセキレイの姿から着想を得ている。リュウズを巻き上げる際に、香箱に取り付けられた角穴車とコハゼが噛み合い機能する動きはセキレイがエサを啄んでいる様子に見える。
搭載されるCal.9SA4は主ゼンマイが最大に巻き上がるまでに要する手間を減らすために、リュウズを回転させた際の角穴車の回転量をCal.9SA5よりも向上させている。そのため、比較すると約15%少ない巻き上げ回数で同じ巻き上げ効果を得ることができ、自動巻き機構を取り除いた空間にパワーリザーブ表示機構を搭載し、ムーブメントの受けにパワーリザーブ表示を配置している。
グランドセイコー独自の素材ブリリアントハードチタンを採用したレギュラーモデル
手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。3気圧防水。145万2000円(税込み)。
本作は、エボリューション9コレクションならではのデザインコードである「エボリューション9スタイル」に則ったドレスウオッチとして、インデックスやベゼル、ラグ幅などに改良が加えられている。洗練された手巻ドレスウオッチとして優雅な印象に仕上がっている。
通常のチタンよりも白い艶を持つ、グランドセイコー独自の素材であるブリリアントハードチタンに熟練の研磨師がザラツ研磨(円形の定盤を回転させ、そこにケースを押し当てながら面をならし、歪みのない平面を生み出す下地処理技術)を駆使して磨き上げることによって、上質な輝きを放っている。ブリリアントハードチタンは、通常のチタンと同様の軽さを持ちながら、標準的なステンレススティールよりも約2倍硬く、傷付きにくいという先進的な素材である。
グランドセイコー エボリューション9 コレクション限定品
手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。18KPGケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。3気圧防水。世界限定80本(うち国内50本)。605万円(税込み)。
グランドセイコースタジオ 雫石のある岩手県の平庭高原には、約400ヘクタールという広大な面積に白樺林が自生している。本作のダイアルは白樺の樹皮の清らかな佇まいを精緻な型打模様で表現している。
18Kピンクゴールドケースに収められた限定モデルはレギュラーモデルと同様の白樺の樹皮を思わせる型打パターンを施したダイアルを採用し、6時位置にはインデックスにも金無垢を使用していることを示すSDマーク(Special Dialマーク)を配置している。エボリューション9のスタイルを反映したケース、時分針、インデックスはすべてエレガントなデザインに一新されており、さらに視認性と高級感が増している。
グランドセイコーの叡智を詰め込んだ手巻メカニカルハイビート36000 80 Hoursの2モデルはそれぞれ、グランドセイコーが誕生以来目指してきた時計の本質を表現したものであり、世界中からの評価が楽しみなモデルである。
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