ACJとのコラボレーション再び
手巻き(Cal.RM62-01)。77石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。Ti×カーボンTPT®️(縦49.94×42.00mm、厚さ16.90mm)。50m防水。世界限定30本。予価1億3200万円(税別)。
次々に予想もつかない機構を組み込んだモデルを発表するリシャール・ミルの主なインスピレーション源は航空宇宙産業だ。その代表例として挙げられるのが、2016年に発表された「RM 50-02 トゥールビヨン スプリットセコンド クロノグラフ ACJ」だろう。その名の通り、旅客機で高名なエアバスが開発するビジネスジェット、エアバス コーポレート・ジェット(ACJ)とのコラボレーションモデルだ。
そして、その後続モデルである「RM 62-01 トゥールビヨン バイブレーションアラーム ACJ」が発売される。RM50-02は誰もが容易にジャンボジェットのホワイトカラーをデザインソースとしていることを想像できたのに対し、今回のRM 62-01は一見すると飛行機とは結びつきにくい木目調のブラックカラーのケースとなっている。これは特注プライベートジェットを手掛けるACJクリエイティブデザインスタジオ責任者のシルヴァン・マリア氏がデザインした、特注の暗色キャビンから着想を得ている。
トゥールビヨンとバイブレーションアラーム、一見相反するものが同居
頻繁に移動するビジネスパーソンが必要とされるすべての機能を兼ね備えているとされているスマートフォンの中でも、現代のビジネスパーソンがよく使う機能のひとつがアラーム機能だ。しかし、会議の机上に置かれたスマートフォンのアラームが発する振動が、出席者すべての視線を集めてしまった経験はないだろうか。
RM 62-01ではトゥールビヨンを搭載しながらも、バイブレーション機能を与えることに成功した。そしてそのバイブレーション機能は数センチの距離にいようとも、他人に気付かれることはない。着用者のみがその振動を感じることができる。
時計のムーブメントにおいて、ショックや細やかな振動は大敵とされる。当然ながら、振動によるアラームがムーブメントの動作を妨げるようなことがあってはいけない。その難題を解決したのが携帯電話に使われていたバイブレーターをヒントにした、ゴールド製ローターだという。
ほかにも、同ムーブメントでは振動の影響をいかに受けずに済むか、5年間技術者によって試行錯誤が繰り返された。結果、816個の部品、ふたつの香箱、7本の針、11種の機能とトゥールビヨンキャリッジが同居するCal.RM62-01を完成させたのだ。限界まで複雑性を追求した2度目のコラボレーションモデルはどんなに静かな場所でもバイブレーションアラームが鳴っていることを他人に気付かせない。RM 62-01のバイブレーションは機構的に複雑な点のみならず、純粋にその利便性の高さを評価したい。
そしてこの静粛かつムーブメントへ悪影響を及ぼさないバイブレーションの鍵を握るのが、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げを施したチタンに、機械加工によって厚さ1.8mmの薄さを得たカーボンTPT®️が組み合わされたベゼルである。この二重ベゼルはデザインのためだけに採用されたわけではない。チタンとカーボンTPT®️を組み合わせると、RM62-01の最適な重量比強度となるのだ。というのもヘッドが軽量すぎるとアラームが振動した際に、ケース全体を振動させてしまう。チタンの重みが加わることで適切に時計が手首に密着し、アラームの振動を吸収してくれるのである。
よりマチュアな世界観を堪能できるデザインに組み込まれた複雑機構をして、「RM 62-01はリシャール・ミルが製作した作品の中で最も複雑な時計となっている」とムーブメント担当テクニカルディレクターのサルヴァドール・アルボナは語る。数多いリシャール・ミルの大作の中でも、特に意欲的な1本だ。
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