5月に発表された新作、チャペック初のラグスポ Antarctique(アンタークティック)のTerre Adélie(テール・アデリー)モデルとOrion Nebula(オリオン・ネビュラ)モデル(いずれも完売)の大成功につづき、Czapek(チャペック)は、南極の深海から着想を得た、壮大な手作業によるヴァーニッシュ仕上げのダイアルを備えた、Antarctiqueコレクションの特別バージョンを発表した。
南極大陸を意味する新しいラグジュアリースポーツウォッチ
自動巻き(Cal.SXH5.01)。28石。2万8800振動/時。マイクロローターはリサイクルされたプラチナ950製。SSケース(直径40.5mm、厚さ10.6mm)。パワーリザーブ約56時間。120m防水。235万円(税別)。簡単に交換できる、カーフまたはラバーストラップが付属
南極海の深淵(アビス)で絶え間なく変化する水をイメージ
Southern Ocean(サザン・オーシャン)あるいはAntarctic Ocean(アンタークティック・オーシャン)として知られるAustral Ocean(オーストラル・オーシャン)は、南極を取り巻く最南端の海域のことを指す。この海域は、南極からの冷たい北向きに流れる水と、暖かい亜南極水が混ざり合う場所で、地質学的にもっとも若い海であり、南極大陸と南アメリカが離れ、およそ3000万年前にDrakePassage(ドレーク海峡)が形成された。南極海の最大深度は、つい最近の2019年2月上旬、Five Deeps Expedition(ファイブ・ディープス探検隊)の調査により7,434メートルであることがわかっている。この南極海の深くて絶え間なく変化する水は、Czapek アンタークティック・コレクションの最新作、Abyss(アビス)のインスピレーションの素になっている。
手書きのため10本すべてユニークダイヤル
このモデルは、10本の限定生産で、Metalem(メタレム)社が製造した手作業によるヴァーニッシュ仕上げ(ニス仕上げ)によるダイアルが特徴だ。このテクニックは、ニスを塗りブラシで手書きする、そしてラッカーを塗ってからダイアルを研磨するという一連の作業で構成されている。手作業のため、10枚のダイアルはすべてユニーク・ダイアルとなる。この新しいモデルは、5月に発表されて、現在では完売となっている「テール・アデリー」と「オリオン・ネビュラ」と同様のムーブメントを備えている。
新キャリバー「SXH5.01」
新キャリバー(Cal.SXH5.01)のハイライトは、4つのゴールド製慣性ウェイト(マスロット)を備えたフリースプラングテンプだ。これにより強い衝撃を受けても携帯精度が悪化しにくいほか、理論上は、主ゼンマイがほどけた際の等時性も高まる。2万8800振動/時という振動数を考えると、スポーツウォッチには相応しい心臓と言えるだろう。「100%リサイクル認定済み」の18Kゴールドで製造されるマイクロローターは、スイス以外の唯一のパートナーである、ドイツのAGOSI社によって供給され、ラ・ショー・ド・フォンで加工されたものだ。マイクロローターとしては厚みのあるローターは、おそらく巻き上げ効率を改善するためだろう。
加えてチャペックはこのムーブメントにいくつかの見どころを用意した。ムーブメントの輪列は、19世紀のポケットウォッチに触発された、7つの肉抜きされた受け(ブリッジ)で保持されている。スポーツウォッチにスケルトンムーブメントは似合わないように思うが、あえて見せたのは、”チャペック流”に仕上げられた歯車を見せたいためか。なお手作業で面取りされた受けの側面には、超高級時計よろしく、筋目装飾が施されている。
このムーブメントは、現行品としては珍しく、4番車を中心に置かないインダイレクトセンターセコンド輪列を採用する。小さな(しかし慣性の大きそうな)マイクロローターと、この輪列が示すのは、チャペックが薄型化を狙ったということだ。一般的に、4番車を中心に置かないこの輪列は、秒針の針飛びが起きやすいとされている。しかし、チャペックはよほど秒カナのコントロールに自信があるのか、非常に長い秒針を採用している。なお、この輪列のように、2番車をセンターに置かない輪列は、針合わせの際に針飛びが起きやすい、という弱点がある。しかし、チャペックは2番車をオフセットさせた輪列を非常に得意としており、針合わせ時の問題はなさそうだ。なお、推測するに、このムーブメントの巻き上げ機構は、片方向巻き上げである。片方向巻き上げと仮定するならば、薄さと巻き上げ効率を両立した、危なげない選択と言えそうだ。
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