1978年に誕生したエルメスの「アルソー」は、時代を越えて現代も変わらずエレガンスを届けている。今回新作として発表されたのは「ル タン ヴォヤジャー」である。エルメスらしく旅心を喚起し、自由で上質な時間を約束してくれるだろう。
ワールドタイムへの独自の解釈
1978年、アンリ・ドリニーのデザインによって「アルソー」は生まれた。その後、次々と発表された新作はエルメスの職人技を感じさせるものであったり、エルメスの世界観を表現したものであった。エルメスが馬具メーカーだったということは、もはや改めて言わずとも周知されているが、時代を重ねるごとにメゾン・エルメスの旅との結びつきも、ブランドイメージの中に多くの人々が感じとるようになっているのではないだろうか。
移動の手段は馬車から船、車、飛行機と変わっても旅への憧れや新しい土地への好奇心は共通したものである。また現実ではなくても、お気に入りの場所へいつか行ってみたいと妄想する夢の時間を、エルメスは決して否定することはない。むしろ、香りや感触、色の組み合わせを私たちに見せていつか旅に出ることを誘っているようだ。
今回発表された「ル タン ヴォヤジャー」は、エルメスの視点で解釈したワールドタイムだと言えるだろう。“旅人の時間”と題された本作の最大の特徴は、世界の時間を巡ることができる独自開発モジュールだろう。
24都市のタイムゾーンを表示するダイアルには、ジェローム・コリヤールがデザインしたカレ(シルクスカーフ)の図案「乗馬の世界地図」が描かれ、幻想的な風景が広がっている。ガルバニック加工を施したダイアル上の大陸に描かれた文字は地名ではなく、すべて馬術に関する単語である。
馬との人馬一体感を競い合うドレッサージュ、馬の行動を学ぶ馬術学、馬の世話を意味するソワン、騎手や御者を意味するキャヴァリエといった単語が確認できる。
自動巻き(Cal.H1837)。28石(うちモジュール部分に7石)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。Ti×Ptケース(直径41mm)。3気圧防水。344万3000円(税込み)。2022年11月1日発売予定。
搭載されたムーブメントはエルメスの自動巻ムーブメント、キャリバーH1837で、時分針を持つインダイアル自体を移動させる仕組みとなっている。インダイアルが衛星のように動くという新たなワールドタイムのコンセプトは、自らが目的地を目指して旅をする姿に重ねられ、自由にどこにでも行ける喜びをかみしめることができるだろう。
自動巻き(Cal.H1837)。28石(うちモジュール部分に7石)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径38mm)。3気圧防水。269万5000円(税込み)。2022年11月1日発売予定。
ホームタイムは12時位置で表示され、アルソー独特の優雅なフォントが、好きな時に帰ればいい、と語りかけているようだ。
ストラップは時計本体と同じく、エルメス・オルロジェの工房で製造されたアリゲーターもしくはヴォー・スウィフトのレザーストラップを装備しており、馬具づくりのサヴォワフェールを感じ取ることもできる。
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