かつて、自社で製造できるメーカーは一部だったクロノグラフムーブメント。近年では設計支援システムや工作機械が発達したことで、ハイレベルな自社開発クロノグラフを手掛けるメーカーが増えつつある。今回のTop 10ランキングは、そんな自社開発クロノグラフムーブメントが搭載された現行モデルがお題だ。現行品に限っても、傑作ぞろいのジャンルながら、すべての選者がグランドセイコーの「エボリューション9 コレクション テンタグラフ SLGC001」に票を入れた。
2024年3月11日更新
開花するインハウスクロノグラフ
10位 A.ランゲ&ゾーネ/オデュッセウス・クロノグラフ
26point / 2persons
スポーツライン「オデュッセウス」に追加された、同社初の自動巻きクロノグラフ。3針モデル同様に、6時位置にスモールセコンド、3時位置と9時位置に大型のカレンダー表示を配している。センターに備えられたクロノグラフ用の60分積算計と秒針には、計測した分だけリセット時に逆回転するダイナミックリセット機構が搭載されている。自動巻き(Cal.L156.1 DATOMATIC)。52石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42.5mm、厚さ14.2mm)。12気圧防水。世界限定100本。要価格問合せ。(問)A.ランゲ&ゾーネ 0120-23-1845
●オデュッセウス特有のデザインを保持しつつクロノグラフを加えるために開発されたCal.L156.1 DATOMATICは設計が秀逸。リセット機構も実にユニークだ。(菅原)
●メカニズムへの情熱を感じる。(篠田)
9位 ゼニス/クロノマスター全般
27point / 3persons
1970年代に開発されたプロトタイプにオマージュを捧げるモデル。マイクロブラスト加工を施した、マットブラックのチタン製ケースを採用している。ケースサイズは、オリジナルを踏襲した直径37mm。ブラックのダイアルには、グレーのインダイアルとタキメーターが配されている。搭載するムーブメントは、ガンギ車とアンクルにシリコン素材を採用したCal.エル・プリメロ4061。自動巻き(Cal.エル・プリメロ4061)。31石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約50時間。Tiケース(直径37mm)。5気圧防水。121万円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861
●自社開発クロノグラフといえばゼニスが生んだ名機エル・プリメロ。現行モデルは豊富で選ぶのに迷ったが、最初期モデルのケースをマットなチタン素材で再構築した、クロノマスターリバイバル “シャドウ”を選出。(名畑)
8位 パテック フィリップ/クロノグラフ 5172
29point / 2persons
鮮やかなブルーダイアルを持つ手巻き式クロノグラフ。コラムホイールと水平クラッチを搭載し、細部まで磨きこまれたムーブメントは、ケースバックを通して鑑賞することが可能だ。ケースは18Kホワイトゴールド製。ラグにはステップが設けられ、ふたつのプッシュボタンのトップにはギヨシェ装飾が施されている。手巻き(Cal.CH 29‑535 PS)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KWGケース(直径41mm、厚さ11.45mm)。3気圧防水。1256万円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109
●自社製クロノグラフを語るなら、はずせない1本。なによりムーブメントの造形美が圧巻。中間車を用いた水平クラッチで動力を伝達するという超オーソドックスな構造にも心ときめく。(名畑)
7位 オメガ/スピードマスター スーパーレーシング
38point / 3persons
シリコン製ヒゲゼンマイを採用しつつ、より精密な精度調整が可能な緩急調整機構、「スピレート™システム」を搭載した画期的なモデル。ハニカムパターンのダイアルや、イエローを取り入れたカラーリングによって、「スピードマスター」の出自であるレーシングウォッチらしいデザインに仕上げられている。自動巻き(Cal.9920)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径44.25mm、厚さ14.9mm)。5気圧防水。179万3000円(税込み)。(問)オメガお客様センター Tel.03-5952-4400
●本作が初採用となるスピレートシステムにより、日差0~+2秒/日の精度を実現。加えてコーアクシャル、マスター クロノメーターといった、オメガが誇る技術がてんこ盛りに投入されている。見た目は人気のスピードマスターでありながら、純粋な時計の進化が感じられるすごい時計。(安藤)
6位 ロレックス/オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ
38point / 3persons
誕生60周年を迎え、アップデートが加えられた「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」。アイスブルーダイアルにチェスナットブラウンカラーのセラクロムベゼルを組み合わせている。Cal.4131は、クロナジーエスケープメントやパラフレックス ショック・アブソーバを備えた最新ムーブメントだ。プラチナケースモデルのみシースルーバックを採用し、ムーブメントを鑑賞することができる。自動巻き(Cal.4131)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Ptケース(直径40mm、厚さ11.9mm)。100m防水。
●黙々と進化を続けるのがロレックスの流儀。2023年はさらに改良を加えた自動巻きクロノグラフ、Cal. 4131が目玉。自信作ゆえに、初めてケースバックから見せる。(菅原)
●面白くはないが、垂直クラッチを定番化させた立役者。薄くて使いやすいのもいい。(広田)
5位 ブレゲ/タイプ XX
39point / 4persons
かつてブレゲがフランス軍に納入していたフライバッククロノグラフの民生機、「タイプXX」の最新作。細身のポンプ型プッシャーやクリーム色の蓄光塗料が、クラシカルな印象を与える。コラムホイールと垂直クラッチによってクロノグラフを制御するCal.728には、より精密に作動する頑丈なフライバック機構が搭載されている。自動巻き(Cal.728)。39石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。288万2000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
●新開発のCal.728は、3万6000振動/時、約60時間のパワーリザーブ、コラムホイールと垂直クラッチ、新型フライバック機構、シリコン素材など注目点に事欠かない。(菅原)
4位 A.ランゲ&ゾーネ/1815 クロノグラフ
40point / 2persons
ドイツ時計産業の功労者、F. A.ランゲの誕生年を冠した「1815」コレクション。ラウンド型ケースや上品なアラビア数字インデックスが特徴だ。本作が搭載するCal.L951.5は、積算計が正確なタイミングで作動するプレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターと、瞬時にリセットと再計測が可能なフライバック機構が搭載されている。手巻き(Cal.L951.5)。34石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KPGケース(直径39.5mm、厚さ11mm)。3気圧防水。要価格問合せ。(問)A.ランゲ&ゾーネ 0120-23-1845
●1999年に誕生したダトグラフを起源とするCal.L951.5は、有機的な曲線で織り成すハンマーやレバーの造形が実に美しい。キャリングアーム式で、しかもロービートというのも、個人的な好みに合う。(髙木)
3位 A.ランゲ&ゾーネ/ダトグラフ・アップ/ダウン
49point / 3persons
12時位置にアウトサイズデイト、6時位置にパワーリザーブインジケーターを搭載した、A.ランゲ&ゾーネを代表するクロノグラフウォッチ。ケースバックからは、クロノグラフを制御するコラムホイールとキャリングアームをはじめとするパーツの動き、テンプ受けのエングレービングや面取り等を鑑賞することができる。手巻き(Cal.L951.6)。46石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KPGケース(直径41mm、厚さ13.1mm)。3気圧防水。要価格問合せ。(問)A.ランゲ&ゾーネ 0120-23-1845
●L951系キャリバーは1999年の発表以来、最も美しいクロノグラフムーブメントの地位を守り続けている。その最新版であるCal.L951.6はパワーリザーブが約60時間へと延長され、実用性も高まった。(安藤)
2位 ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート・クロノグラフ
52point / 4persons
反転式ケースを生かした、ふたつのダイアルを備えるモデル。初代「レベルソ」をモチーフとしたシンプルなブルーダイアルの裏には、大胆なオープンワークが施されたダイアルが隠れている。裏面のダイアルには、6時位置にレトログラード式の30分積算計、センターにクロノグラフ秒針と時分針を備える。反転式ケースと複雑機構を採用しながらも、ケース自体は薄く仕上げられている。手巻き(Cal.860)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約52時間。SSケース(縦49.4×横29.9mm、厚さ11.14mm)。3気圧防水。365万2000円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833
●どうケースに収めているのか、頭をひねる高度なメカニズム。でも、そこが楽しい。(篠田)
●表側は1930年代の「レベルソ」を想起させる時刻表示のみ、裏面は時刻表示とクロノグラフ機能を配置。ガラリと違う二面性にシビれる。手巻きムーブメントも新開発。(菅原)
1位 グランドセイコー/エボリューション9 コレクション テンタグラフ SLGC001
57point / 6persons
グランドセイコー初の機械式クロノグラフ。モデル名の“テンタグラフ”は、10振動、3日間パワーリザーブ、自動巻き、クロノグラフを意味する造語だ。搭載するCal.9SC5は、デュアルインパルス脱進機とツインバレルを搭載したCal.9SA5をベースに、頑丈なクロノグラフモジュールを組み合わせたムーブメントだ。自動巻き(Cal.9SC5)。60石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径43.2mm、厚さ15.3mm)。10気圧防水。181万5000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)Tel.0120-302-617
●日本が誇る国産最強のメカニカルクロノグラフ。グランドセイコー自慢の自動巻きCal.9SA5をベースにしたCal.9SC5ムーブメントは、高精度でありながら、頑強さも兼ね備えており、ハイビートクロノグラフとしては最長となるパワーリザーブ約72時間を実現している。装着感もよく、極めて実用性の高い1本だろう。(安藤)
●グランドセイコー初となる機械式クロノグラフ。えっそうなの? 日本だってヤルな。ハイスペックな機能が盛りだくさんの自動巻きCal.9SC5は、これからのモデル展開も楽しみ。(菅原)