2024年も、時計業界は活気に満ちていた。年間を通して多種多様なモデルが各社から発表され、また、4月のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブをはじめ、複数の新作見本市が活発に開催されたことからも、この年の盛況ぶりを感じ取れる。今回はそんな24年を振り返るべく、この年の発表モデルから“傑作”を選出してもらった。候補の母数が多いため、いつものテーマ以上に票が分かれた。しかしながら、パルミジャーニ・フルリエ「トリック プティ・セコンド」の1位は、すべての選者が票を投じた結果である。
多種多様なモデルでにぎわう2024年の傑作選
10位 パテック フィリップ/Cubitus
14point / 2persons

自動巻き。SSケース。653万円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109
●間違いなく2024年最大の話題作はCubitusだろう。スクエア型時計の選択肢がまだまだ足りない中で、パテック フィリップが放った本作のインパクトは凄まじい。中でも注目はSSケース。ノーチラスでは絶滅寸前のSSだけに、買うなら今、と言わざるを得ない。(安藤)
9位 ローラン・フェリエ/クラシック・ムーン
17point / 2persons

手巻き。SSケース。1336万5000円(税込み)。(問)スイスプライムブランズ Tel.03-6226-4650
●いわゆるアニュアルカレンダー装備のムーンフェイズモデル。このムーンフェイズ表示が、蓄光塗料を塗布したダブルの月を描いたアベンチュリンガラスのディスクを、グラン フー エナメルのカバーで覆うことで満ち欠けを示すという凝った仕組み。昼間見ても美しいが、夜間にこそ魅力を発散する。(名畑)
8位 チューダー/ブラックベイ 58 GMT
18point / 2persons

自動巻き。SSケース。67万1000円(税込み)。(問)日本ロレックス/チューダー Tel.0120-929-570
●真剣に購入を検討しているモデル。サイズが小さいのに、使えるGMTを搭載。しかもマスター クロノメーターのため、どこでも気兼ねなく使える。機械式時計の可能性を広げた傑作。非常に魅力的なモデルだ。(広田)
7位 パテック フィリップ/ゴールデン・エリプス
24point / 2persons

自動巻き。18KRGケース。951万円(税込み)。(問)パテックフィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109
●2024年のパテック フィリップといえば「Cubitus」だが、そのインパクトをもってしても、このモデルのブレスレットの魅力には届かなかったと感じている。ドレスウォッチが長らく抱えてきた課題を一気にクリアした本作は、激化するブレスレット競争のひとつの到達点だ。(安藤)
6位 クレドール/クレドール50周年記念 ロコモティブ 限定モデル
28point / 2persons

自動巻き。ブライトチタンケース。世界限定300本。176万円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(クレドール)Tel.0120-302-617
●潔く“ガワ”に振り切ったモデル。パワーリザーブが短いのは惜しいが、その質感は平凡な中身を補ってあまりある。限定版のため強く推さなかったが、2025年モデルの話を聞いたため急遽ランクイン。(広田)
5位 グランドセイコー/ヘリテージコレクション 45GS復刻デザイン 限定モデル
32point / 2persons

手巻き。SSケース。世界限定1200本。134万2000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)Tel.0120-302-617
●マニア心をくすぐる傑作。忠実に再現したケース、3針ノンデイトや“GSHI-BEAT 36000 亀戸マーク”の3点セット、毎秒10 振動の最新手巻きムーブメントなどにハマること請け合い。(菅原)
4位 グランドセイコー/エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours
42point / 3persons

手巻き。ブリリアントハードチタンケース。152万9000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)Tel.0120-302-617
●手巻きハイビートムーブメントCal.9SA4を搭載する通称“横樺”は、サイズ的にも、性能的にも、現代求められているものが凝縮されている1本だと思う。手巻きの巻き心地のよさにまで配慮した点はいかにもGSらしく、その姿勢に脱帽するしかない。GS9 Club限定のSBGW319も含め、2024 年のGSは手巻き式の当たり年だった。(安藤)
3位 IWC/ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー
48point / 4persons

自動巻き。Ptケース。要価格問い合わせ。(問)IWC Tel.0120-05-1868
●今回のお題で真っ先に思い出したのがこれ。40年にわたるIWC永久カレンダーの集大成だ。カレンダーを飽かずに楽しみたいが、誰も最後まで正確性を見届けられないのがシャクだ。(菅原)
2位 カルティエ/トーチュ モノプッシャー クロノグラフ
56point / 3persons

手巻き。18KYGケース。805万2000円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
●感動的な復刻。永遠のクラシックは、何度見ても見飽きない。センシュアルな美ボディに搭載する、新たな自社製ムーブメントにも注目。(菅原)
●限定生産なのが惜しいほど完成度の高いモデル。緩急針と価格を除いて、ほとんど隙がない。しかも、プッシュボタンの感触なども秀逸だった。カルティエがニッチな機械を新生したのも高評価の理由だ。(広田)
1位 パルミジャーニ・フルリエ/トリック プティ・セコンド
77point / 6persons

手巻き。Ptケース。820万6000円(税込み)。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com
●エレガンス回帰の傑作。すでに何度も高評価したモデルだが、2024年のトレンドを象徴するひとつとして見逃せない。(菅原)
●「クワイエットラグジュアリー」を具現化したシンプルで高品質なモデル。マットな仕上げの控えめなダイアルとヌバック仕上げのクロコダイル製ストラップとのコンビネーションが秀逸。デザインした人の優れたセンスを感じるね。(名畑)
●このニュアンスカラーは今後トレンドになりそう。(篠田)
選考委員による選定モデルの詳細
菅原 茂(71歳) 時計ジャーナリスト
「飽きずに使える傑作」
本誌を賑わす驚異的なモデルの多くが技術や美観の傑作に違いないだろう。しかし、私は飽きっぽい。この先も愛用したくなる、そうした気持ちにさせたのは何かと問えば、こんなモデルだった。
- ロレックス/パーペチュアル 1908
- パルミジャーニ・フルリエ/トリック プティ・セコンド
- カルティエ/トーチュ モノプッシャークロノグラフ
- グランドセイコー/ヘリテージコレクション 45GS復刻デザイン 限定モデル Ref. SLGW005
- IWC/ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー
- ブレゲ/タイプ XX 2067
- パテック フィリップ/ワールドタイム Ref.5330
- ジラール・ペルゴ/キャスケット 2.0 チタン&ゴールド
- チューダー/ペラゴス FXD GMT “ZULU TIME”
- ザ・シチズン/メカニカルモデル Caliber 0200「CITIZEN」ブランド時計 100周年限定モデル
篠田哲生(49) ウォッチディレクター
「時計単体ではなくニュース性も評価」
時計はプロダクトだが、自分のスタイルを示すものでもある。だからこそ、時代性を含んだものに引かれる。ということで2024年にアニバーサリーや節目を迎えた時計を中心にピックアップ。さらに、今後の時計トレンドのターニングポイントになりそうなモデルも選んでみました。
- リシャール・ミル/RM 27-05 フライング トゥールビヨン ラファエル・ナダル
- グランドセイコー/ヘリテージコレクション 45GS復刻デザイン 限定モデル
- ピアジェ/アルティプラノ アルティメート コンセプト トゥールビヨン
- ブルガリ/オクト フィニッシモ ウルトラ COSC
- ヴァシュロン・コンスタンタン/レ・キャビノティエ・ザ・バークレー・グランドコンプリケーション
- パルミジャーニ・フルリエ/トリック プティ・セコンド
- フランク ミュラー/グランド カーベックス マスター ジャンパー
- ノモス グラスヒュッテ/タンジェント38 デイト 31colors
- ピアジェ/ピアジェ アンディ・ウォーホル
- シチズン/「CITIZEN」ブランド時計100周年記念 懐中時計
安藤夏樹(49歳) 編集者
「各ブランドの“らしさ”が際立った1年」
ひとつの時計でデザイン、実用性、質感、操作性、付加機能、歴史性などを網羅するというよりは、各ブランドが重視するポイントに特化したモデルが数多く発表された1年だったと思う。マーケット的には踊り場と言われる時計業界だが、日本だけに目を向ければ堅調さを示した1年で、意中のモデルを手にした人も多かったかもしれない。
- グランドセイコー/エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート 36000 80 Hours Ref.SLGW003
- A.ランゲ&ゾーネ/ランゲ1 Ref.191.062
- パルミジャーニ・フルリエ/トリック プティ・セコンド
- クレドール/クレドール50周年記念 ロコモティブ 限定モデル
- パテック・フィリップ/ゴールデン・エリプス Ref.5738/1
- オーデマ ピゲ/リマスター02 オートマティック
- カルティエ/サントス デュモン リワインド
- パテック フィリップ/Cubitus
- IWC/ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー
- ショパール/L.U.C クアトロ スピリット 25
髙木教雄(62歳) ライター
「極力客観視してみた傑作10選」
以前、W&WG発表モデルのトップ10を選考し、2024年のBEST5も選ばせていただいた。それらは、多分に個人的な好みが反映されている。しかし“傑作”をセレクトするとなると客観視が必要だなと思い、以下の結果となった。機構、あるいは意匠が突出し、かつ未来に受け継がれる普遍性を兼ね備えた10作を絞り込んだつもり。
- カルティエ/「トーチュ」モノプッシャー クロノグラフ
- パルミジャーニ・フルリエ/トリック プティ・セコンド
- ショパール/L.U.C. XPS フォレストグリーン
- IWC/ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー
- パテック フィリップ/ゴールデン・エリプス Ref.5738/1
- グランドセイコー/エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート 36000 80 Hours Ref.SLGW003
- チューダー/ブラックベイ 58 GM
- ローラン・フェリエ/クラシック・ムーン Ref.LCF039.AC.C1WC
- Naoya Hida & Co./NH Type 5A
- オーデマ ピゲ/リマスター02 オートマティック
名畑政治(65歳) 時計ライター
「嗜好と市場の変化に対応する時計とは?」
最近、時計に対する嗜好に変化の兆しがある。簡単に言うと「超高級ブランド疲れ」。確かに素晴らしいモデルはたくさんあるが、なかなか買えないのが現実。そこで入手しやすい独立系ブランドや小規模メーカーが注目されるようになってきたのである。そんな動きを視野に入れつつ選びました。例によってすべて同列、順位なし。
- パテック フィリップ/年次カレンダー Ref.5396
- ブライトリング/スーパーオーシャン ヘリテージ '57 ハイランズ
- チャペック/プロムナード グット・ドー
- オリエントスター/M34 F8 スケルトン ハンドワインディング Ref.RK-AZ0103L
- オリス/アクイスデイト キャリバー400 アップサイクル
- セイコー プレザージュ/クラフツマンシップシリーズ ポータークラシック コラボレーション限定モデル Ref.SART005
- パルミジャーニ・フルリエ/トリック プティ・セコンド
- ローラン・フェリエ/クラシック・ムーン Ref.LCF039.AC.C1WC
- クロノスイス/デルフィス ホライズン
- イエマ/ネイビーグラフ・マリーンナショナル CMM.10 Ref. SKU:21.14.55.SN.M
広田雅将(50歳)『クロノス日本版』編集長兼アートソルジャー
「地味と思いきや、予想外に良かった2024年の新作」
景気の悪化を見越してか、ジュエリーブランドは例外として、控えめな新作が並んだ2024年。地味という声も聞こえたが、数を抑えた結果、作り込まれた新作が多かったように感じる。個人的な推しはロコモティブ。日本の時計もこれだけのブレスレットが持てたのは予想外だった。
- カルティエ/「トーチュ」モノプッシャークロノグラフ
- IWC/ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー
- 大塚ローテック/6号
- クレドール/クレドール50周年記念 ロコモティブ 限定モデル
- グランドセイコー/エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート 36000 80 Hours Ref.SLGW003
- チューダー/ブラックベイ 58 GMT
- パテック フィリップ/Cubitus
- オーデマ ピゲ/CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック
- パルミジャーニ・フルリエ/トリック プティ・セコンド
- タグ・ホイヤー/タグ・ホイヤー モナコ スプリットセコンド クロノグラフ
ランキングの集計ルール
●選考委員は、各号のテーマに沿った腕時計を10本選び、順位をつける。
●選考委員ひとりあたりの所持ポイントを110点とし、これを1位20点、2位18点…… 10位2点として選考モデルに振り分ける。
●選考された時計が順位無しの場合は、所持ポイントを10等分して、各モデルに11点を与える(選考本数が10本に満たない場合でも、1モデルあたり11点とする)。
●獲得点数が同点となった場合は、選考者数の多いモデル、その中で選考順位の高いモデルの順で優位とする。
●最低有効得票数を2票とする。