●銅合金のアレルギーには注意
意外と知られていないのが、銅合金のアレルギー性だ。時計業界で使われている銅合金には主に以下のものがある。
真鍮(=黄銅/銅65%、亜鉛35%) 砲金(=青銅、ブロンズ/銅90%、スズ10%)
最近、砲金(ブロンズ)をケースに採用するメーカーも増えつつある。独特の質感があるうえ、経年変化も楽しめるが、アレルギーを起こす可能性がある。そのため一部の時計メーカーは、肌に接する部分の素材を、ブロンズではなく、チタンなどに変えている。ゼニスの「パイロット」、パネライの「ブロンゾ」などが好例だ。
●普段使いなら、硬さも考慮すべし
時計の外装に使われる素材は、硬さが大きく異なる。硬さの基準としてビッカース硬さ(HV)というものがあり、数値が大きいほど硬い。以下は主な素材のビッカース硬さである。
・純銀 HV25 ・純金 HV25~30 ・純プラチナ HV40~50 ・18Kゴールド HV70~150 ・チタン HV110~150 ・SUS304/316 HV200 ・セラミックス HV1500 ・人工サファイア HV1750 ※いずれも参考値
もっとも、素材の硬さはケースの製法によって大きく変わる。例えば、18Kゴールドのケースは、叩いて成形する冷間鍛造という手法を使うと、最大100近くHVが上がる。ケースが硬ければ、ラフに使っても傷はつきにくくなる。
●新素材のケース、硬くて丈夫だが……。
上で挙げた素材の中でも、例えば人工サファイア(HV1750)やフォージドカーボン(HV1500~5000)、セラミックス(HV1500)といった「新素材」などは、硬くて傷がつきにくい上、金属アレルギーも起こさない。時計の素材としては理想的だ。しかし、こういった素材は、金属素材と違い、仕上げ直すことがほぼ不可能である。そのため、傷がついたり、割れたりすると、外装全体を交換する必要がある。ケースが傷つくと、修理費は高くつく場合がある。
これは、表面を硬化処理したケースも同様だ。表面処理をしたケースは傷がつきにくく、金属アレルギーもほとんど起こさないが、仕上げ直しは難しい。新素材、もしくは表面処理された外装の時計を選ぶ際は、そのメリットとデメリットを考えること。