BREITLING×TAG HEUER×ZENITH
Chronographs

目を引く大きさで重厚感たっぷり、ムーブメントは自社製。
スポーティーなクロノグラフに新たな傾向が出てきた。
かつて世界初の栄冠をかけて競ったメンバーが今、それぞれに打ち出すものは何か。

イェンス・コッホ: 文
Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル: 写真
Photographs by Nik Schölzel
市川章子: 翻訳
Translation by Akiko Ichikawa

ブライトリング
クロノマット 44 ブラックスチール

point

・精度が極めて高い
・ケースの仕上がりが非常に整っている
・特殊合成繊維を使用したストラップが小粋

point

・躊躇しがちな価格
・ムーブメントの加工に甘さがある

ライトリング、タグ・ホイヤー、そしてゼニスは特にクロノグラフでその名を知られるブランドだ。この3つのメーカーは、それぞれ約45㎜のケース直径という飛び抜けて目立つモデルを登場させ、まさに殻を打ち破ってくれた。3つのモデルは傾向が似ていながらも、やはり特徴の違いがある。ブライトリングは最新作の「クロノマット 44 ブラックスチール」に、テクニカルでミリタリー調の風貌の黒いケースとベゼル、そこに特殊合成繊維ストラップを添わせている。タグ・ホイヤーは2015年に発表した「カレラ キャリバー ホイヤー01 クロノグラフ」で、多ピース構造かつ多色使いのケースにスケルトン文字盤を組み合わせ、技術的な複合性を表現。一方、ゼニスに昨年の秋から加わった「エル・プリメロ スポーツ」は、トラディショナルなスタイルだ。文字盤はサテンに仕上げたグレー、針はシャープ、切れ味のよい技術がデザインに生かされていながら、無彩色にまとめている。部分的に鏡面にしたケースと、同じように作られたブレスレット、細いベゼルは、クラシックなクロノグラフという面持ちだ。
 古典的な容貌のエル・プリメロ スポーツに対して、黒く仕上げたブライトリングのクロノマット 44 ブラックスチールは、やや特殊部隊の隊員のような雰囲気がある。角を丸くした四角い積算計や、回転ベゼルにラバー加工で数字を載せたところが目新しい。外側を布地に、内側をラバーにしたストラップも、よく合っている。この〝ブラックスチール〟は、以前はアンスラサイトカラーだったところにダイヤモンドライクカーボンの被膜を作り、擦り傷に強いようにした。もっとも、被膜の層が薄いので、傷に対して完全無欠というわけではない。ブライトリングのこのモデルは直径44㎜なのだが、それより小さく見える。それは黒いサテン仕上げのケースと幅広のベゼルのせいだろう。

 

「クロノマット 44 ブラックスチール」の精悍さは、 特殊部隊の隊員を彷彿とさせる

 タグ・ホイヤーもカレラ キャリバー ホイヤー01 クロノグラフで新機軸のデザインを採り入れた。変則的な構築のモジュラーケースは、異なる素材を組み合わせ、多色使いにしてある。ラバーで加工したリュウズをはじめ、大半を黒くした中に、ケース外周に塗られた赤いリングが効いている。タグ・ホイヤーも、特にウブロがやりだした複合構造ケースという傾向を追っているのは明らかだ。スケルトナイズされたデイトリングとともに、大部分を肉抜きした文字盤の下にのぞくムーブメントには、ブランド銘も見える。文字盤上ではメタリックなコンビネーションの黒と赤が鮮やかだ。
 しかし、クラシックな雰囲気が好みとなると、見どころはゼニスに大きい。ケースとメタルブレスレットに、サテンと鏡面を交互に配してあるが、これはおなじみのやり方だ。モダンなのは文字盤で、いくつかのリングをあしらい、積算計が中央に寄っている分、きれいに整えられたインデックスが離れて広々したように見える。3つのブランドの中では、このクラシックなスタイルのゼニスが一番大きいサイズの文字盤を用いているのは興味深い。そして他のふたつのブランドと比べると、ステンレススティールのブレスレットでありながら一番エレガントで、これはスーツにも合わせられるだろう。
 ところで視認性は、デザインによって大きく狭められるというものでもない。今回のテストで取り上げた3つについて、それを完璧に留意していたわけではなかった。ブライトリングはこの中では一番文字盤が小さく、夜光ポイントがベージュで、白いものよりコントラストが弱いにもかかわらず、最も素早く読み取りができた。コントラストが弱いといっても暗がりではよく発光して、ゼニスの弱い光よりはっきりしている。明るいところでもゼニスは針が文字盤に同化しがちで、メリハリが少ない。タグ・ホイヤーは、シルバーのリング付きの積算計や、その他やや騒がしい構成の文字盤から、針を探すのには若干気合いを要する。スケルトナイズされた日付も、視力を問われるような感じだ。しかしながら、暗がりで見ると、タグ・ホイヤーが最も明るく見えた。