精密機械
期待は裏切られることなく、平均日差はわずかプラス0・7秒/日、最大姿勢差は3秒で、テスト機は満点を叩き出した。クロノグラフ作動時も、最大姿勢差2秒、日差プラス1・2秒/日と、最高の数値を見せてくれた。水平姿勢から垂直姿勢になった時の振り落ちも、許容範囲内である。クロノグラフを作動させたほうがむしろ、振り角への影響がほとんど見られなかった。
だが、160万円という価格を聞くと、喜びにやや影が差すだろう。スティールモデルでも138万円するのだ。一瞬、かなり高額に感じられるが、他のブランドの同スペックのモデルだけではなく、ブランパンの旧型フライバックムーブメント搭載モデルのほうが格段に高額なことを考慮すれば、バチスカーフではコストパフォーマンスが向上しているのである。分解してよく分かったように、すべてのパーツが極めてクリーンに加工されており、秀逸な設計のムーブメントは美しく装飾されている。また、ムーブメントに採用された革新的なテクノロジーの数々は、精度や耐磁性能に良好に作用している。トータルで考えれば、適正な価格設定と言えるのではないだろうか。
セラミックス製ケースのバチスカーフは、傷が付く心配はほとんど必要ないものの、ダイビングで使うにはもったいない。また、大きな回転ベゼルを持つフィフティ ファゾムスの他のモデルに比べると、バチスカーフはそれほどダイバーズウォッチらしい外観を備えているわけではない。だが、ハイテク素材を使用したケースだけではなく、ハイビートで極めて精度が高く、革新的なシリコン製ヒゲゼンマイを備え、魅力的に装飾された新型クロノグラフムーブメントこそ、バチスカーフを特徴づける重要な要素なのだ。なんと言っても、バチスカーフの内部ではランボルギーニの美しいホイールが回転しているのだから。