【84点】パネライ/ラジオミール エイトデイズ チェラミカ -45mm

2013.04.03

PANERAI RADIOMIR 8 DAYS CERAMICA - 45mm

パネライはこれまで、数多くのモデルに自社製ムーブメントを搭載してきた。そして、ついに8日間のパワーリザーブを備えたセラミックス製ラジオミールを徹底的に分解し、解析する時が来た。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
マルクス・クリューガー、ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Marcus Krüger, Nik Schölzel
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・暗所でも良好な視認性
・興味深いマニュファクチュールムーブメント
・ロングパワーリザーブ

point
・ストップセコンド機能が搭載されていない
・デイト表示の切り換わりが遅い
・巻き上げに時間がかかる

ヴィンテージとハイテクの調和

ラミックス製ケース、デイト表示、そして、水平スライド式パワーリザーブインジケーターを搭載したラジオミールを見たら、イタリア海軍の潜水士は何と言っただろうか? いずれにしても、ケースのフォルムは彼らにとってもなじみ深いものであるはずだ。今日では“ラジオミール”と呼ばれる、ワイヤーループラグを備えたクッション型のケースは、パネライが1938年にイタリア海軍に初めて供給した時計にもすでに装備されていた。また、特徴的な数字を配したサンドイッチダイアルや、現在のモデルに見られる針のフォルムも、当時と変わらないものである。搭載ムーブメントがロレックスのキャリバー618からアンジェリュスのキャリバー240SFに切り換えられた1950年代半ば以降になると、スモールセコンドや8日間のロングパワーリザーブといった機能が手巻きムーブメントに装備されることもよく知られるようになっていた。イタリア海軍所属の潜水士も、デイト表示やパワーリザーブインジケーターに異を唱えることはなかっただろう。追加装備された表示要素が時刻の視認性を損ねることはないのだから、なおさらである。

マットブラックのセラミックス製ケースも、歓迎をもって受け入れられたことだろう。それには主にふたつの理由が挙げられる。ほぼすべての時計で採用されているポリッシュ仕上げのスティールケースとは異なり、マットブラックのセラミックス製ケースには光の反射を防ぐ効果があることと、ケースが極めて硬いことから、傷が付きにくいという特性を備えている点である。ケースの原料には酸化ジルコニウムの粉末に染料と結合剤を3%混入したものが使用される。この原料はまず、最大3000バールの圧力でアイソスタティックプレス(訳注:高圧常温型圧縮成形)される。アイソスタティックプレスとは、全方向から同じ強度をかけながらプレスする成形法で、粉末が圧縮されると円柱が形成され、この円柱を1500℃で焼結させると体積が約20%収縮する。円柱はこの後、ディスク状にカットされ、ケースの素材としてフライス加工などの後工程に送られる。最終工程では、ガラスビーズブラスト加工によってケース表面にマットな質感が与えられ、指紋などの油分をはねつけるコーティングが施される。

セラミックス製ケースのビッカース硬さは約1400で、時計のケースに一般的に使用されるステンレススティール(316L)よりも約10倍硬く、したがって傷にも強い。その上、腐食や摩耗にも高い耐性を示す。ただ、セラミックスはステンレススティールよりももろく、過酷な衝撃を与えると破損する可能性がある。だが、通常の環境で使用する分には、明らかにメリットの方が多い。