ディテールを細やかに再現
なんといってもこのモデルの見どころは、ディテールの再現ぶりだ。文字盤ひとつとっても見甲斐がある。アルファベットはプリントではなく彫り込み。針はオリジナルでは真鍮製だったが、色目を合わせつつ金メッキ仕上げになっている。かつてのパネライは、ケースナンバーを裏蓋ではなくケースサイド6時側のラグの間に刻印していた。Ref.6152でもそうなっていたが、このモデルでもそれを踏襲している。また、ケースサイド12時側のラグの間にはリファレンスナンバーが刻印されている。夜光塗料の色は、パネライのいくつかの歴史的モデルに見られるベージュ色。ほとんど他ブランドでは見られない色合だが、基になった往時のモデルよりかなりダークな色調になっている。リバイバルという目的からはいささかやり過ぎた感は否めないが、新品でもヴィンテージのように見えるのは、この場合はうれしいとこ
ろだ。
表示を時、分のみに絞ったのもオリジナル通り。当時はロレックスの手巻きキャリバー618を使用していたが、今作では新開発の手巻きキャリバーP.3000を搭載。ムーブメントサイズは16 1/2リーニュ(37・2mm)と、ほぼオリジナルに近く、自社開発ムーブメントとしては10番目に当たる。パネライは最初の自社開発ムーブメントを発表したのが2005年だったにもかかわらず、その数はすでに10種類に達しているのだ。現在、キャリバーP.3000はヌーシャテルのファクトリーで組み立てられている。今年のS.I.H.H.ではスモールセコンドとパワーリザーブ表示の付いたキャリバーP.3001(裏側にパワーリザーブ表示付き)とキャリバーP.3002(文字盤にパワーリザーブ表示付き)が早くも登場した。さらに、2針に日付表示が備えられたバージョン(キャリバーナンバーはP.3000のまま)も加わった。
このムーブメントの厚さは5・3mm、フリースプラングを採用し、緩急調整は調整ネジで行う。テンワの直径は13・2mm、がっしりとした両持ちのテンプ受けの下では2万1600振動/時で脈打っている。テンプ受け以外のブリッジは大きく、輪列はわずかしか見えないが、とても魅力的だ。ロイトリンゲンの時計宝飾店デッペリヒでアトリエチーフを務めるマイスター時計師マルティン・トームは、この大きなブリッジの分割について以下の点を評価している。まず、これだけ大きなムーブメントの輪列に十分な安定性を持たせている点、そして、各ブリッジは、その下で駆動する機能のエリアごとに分けられている点。ブリッジのひとつが輪列を押さえ、もうひとつはふたつの香箱を押さえている。コハゼを制御するバネの張力を調整する際も、作業しやすい箇所にひとつ穴が開けられ、難なく行うことができる。これらを構成するパーツは合計160個、うち21個はルビーである。