【80点】ジラール・ペルゴ / ヴィンテージ 1945 XXL

2012.05.29

test130206_67b.jpg

ムーブメントにサイズをぴったり合わせた窓を設けたトランスパレントバック。ムーブメントの細やかな仕上げと躍動感を隅々まで堪能できる。

足跡にアイデアあり

優れた装着感と締まりのある外観に加え、この曲面構成のケースには、さらに見逃せない点がある。それは完全にオリジナリティ溢れるデザインだということだ。角形ケースというと、まずジャガー・ルクルトのレベルソや、タグ・ホイヤーのモナコを思い浮かべる向きも多いだろう。しかし、ケースサイドを見ると、どちらもジラール・ペルゴのヴィンテージ 1945 XXLのような有機的なスウィングはない。

歴史をひもとくと、このモデルのルーツは、ジャガー・ルクルトとタグ・ホイヤーのベストセラーの間に誕生している。レベルソの初出は1931年、モナコの発表が1969年、そしてヴィンテージ 1945のベースモデルは1945年に登場した。もちろん、当時は今回テストで取り上げたXXLよりも小さなサイズで作られ、ディテールにもいくつか異なっているところがあるが、異なる図形の取り合わせとカーブをつけた膨らみのあるケースというコンセプトは、この時にまとめ上げられている。

ベースモデルと比較してXXLをよりエレガントに感じさせるのは、サテン仕上げの文字盤と曲線で構成されたアラビア数字のアプライドインデックス、そして、とりわけドーフィン針が効いているからだろう。1940年代にスポーティーで現代的な雰囲気をもたらした、先が細いバー状の夜光針を中心に据えたデザインよりも、伝統的な要素を採り入れつつシックな印象だ。

時針と分針は緩やかに傾斜がつけられ、ソフトな立体感を持たせることで、3種の図形の集合体という2次元の平面的なイメージが出やすくなりがちなところをうまく取りまとめている。
ジラール・ペルゴは、このモデルで何気ない立体感の実現に力を注いでいるのだ。曲面に作り上げるのが難しいのは特徴的なケースだけではない。縦横に湾曲した風防も同じだ。多くのブランドが、こうした場合にプレキシガラスなどの人工素材を使用している中、ジラール・ペルゴではサファイアクリスタルを採用している。高価な品物なのに傷が付きやすくなることが後々問題にならないよう、あえて手間の掛かる手法を取っているのだ。
風防と同様に、縁に丸みを持たせて丁寧に磨き上げたケースと、通常のものより多くの工程が必要な文字盤の、細やかな仕上がり具合も完全無欠。これなら決してリーズナブルではない価格ではあっても、時計愛好家は許せると思えるはずだ。