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見応えのあるムーブメント
ブライトリングのロゴが配された、エングレービングの美しいケースバックも、高級感あふれる意匠に貢献している。だが、自社開発クロノグラフムーブメントを観賞できるトランスパレントバックであったならば、メカ好きの愛好家により大きな喜びを与えていたことだろう。装飾は過度に手が込んでいるわけではないが、それでも、ローターブリッジのコート・ド・ジュネーブや、ポリッシュ仕上げのレバーやネジ、また、ローターに施されたサンブラッシュ仕上げなどを見ることができただろう。
ボールベアリング式のローターは両方向巻き上げ式で、3日間に迫る快適なパワーリザーブを生み出す。スタート/ストップ/リセット機能を制御するのは、エレガントなコラムホイールである。最新式の垂直クラッチは、針飛びのないクロノグラフ秒針のスムーズな始動を約束する。ブライトリングは、特許技術であるリセットハンマーの自動位置決め装置を採用することで、リセット機構の組み立て時の調整を不要にし、かつ、その動作を改善した。日付は、瞬時に切り換わるように設計されている。また、回転数の高いガンギ車は、保油装置を備えた仕様になっている。ブライトリングはさらに、ヒゲゼンマイを社内でテンワに固定しているが、これを行うには、ヒゲゼンマイとテンワの適切なペアを算出することが必須の前提となる。より高い精度は、こうして実現される。クロノメーター規格を満たすことをすべての個体に課しているブライトリングにとって、より高い精度を求める姿勢は極めて重要なのである。
今回のテストウォッチは、精度への期待にもしっかりと応えてくれた。ウィッチ製歩度測定機、クロノスコープX1で測定した最大姿勢差は5秒で、全姿勢の平均値である平均日差もプラス3・2秒/日と、クロノメーター規格の範囲内であった。クロノグラフ作動時は平均値がやや劣り、テンプにも大幅な振り落ちが観察されたが、それでも精度は全体的に優秀である。
テストウォッチと同仕様のクロノマット GMTの価格は81万2700円である。GMT機能を備えないクロノマット 44は、同じタイプのストラップモデルで73万9200円だ。つま
り、GMT機能と3mm大きいケースの分、7万3500円の差額が生じていることになる。それでもなお、コストパフォーマンスは良好と言えるだろう。クロノマット GMTと同等のスペックで、自社開発ムーブメントを搭載したクロノグラフであれば、多くのメーカーがもっと高額に設定している。そのうえ、ブライトリングが強いブランドイメージを備えていることから、クロノマット GMTが時代の好みにかなっている限り、安定した価値が約束されているのである。
クロノマット GMTの最大のデメリットは、やはり巨大なサイズだろう。購入を検討しているユーザーにとっては、このサイズが威嚇的に映るかもしれない。だが一方で、まさにこのサイズに引かれるがゆえに、この時計の購入を決断するユーザーも少なくないのではないだろうか。いずれにせよ、高い加工品質に有益な機能、ねじ込み式プッシュボタンや高い防水性を備えた堅牢な設計に加え、安定した精度、さらに、エクステンションを備えた美しいバックル、そして、デザインが、この時計の実力を物語る何よりの証拠と言える。つまり、離陸の準備はいつでもできているのだ。