BR 05は、数年前の発表当時からすでに注目を浴びているコレクションである。新作のBR-X5は、視覚的にも技術的にもこれまでのモデルを凌駕する充実の存在感で、ベル&ロスのポートフォリオをさらに魅力的に補完している。角に丸みを持たせたスクエアベゼルとラウンド型の文字盤という、BR 05の基本フォルムはそのまま踏襲されている。
遊び心あふれるこのフォルムは、面取りした部分にポリッシュ仕上げを施したベゼルと、サテン仕上げのケースに放射状に配されたポリッシュ仕上げのネジによって完成している。ケース表面の仕上げは変化に富み、個性的なデザインのステンレススティール製ブレスレットにもその多彩さを見ることができる。
BR-X5は、アワーマーカーに数字を使わないモダンな文字盤と、側面がフライス加工で削り取られ、部分的にスケルトン加工された複雑なマルチレイヤー構造のケースを備える。ムーブメントにはCal.BR-CAL.323が初めて採用されている。このムーブメントは、チューダーによって設立されたムーブメントメーカー、ケニッシから初めて供給されたものである。ケニッシは近年、ブライトリングやタグ・ホイヤー、フォルティス、そして、比較的若いブランドであるノルケインなど、その供給先を広げている。
新型ムーブメントがもたらす新しい表示
スイスで時計を製造するパリのブランド、ベル&ロスも今や、クロノメーター認定と約70時間のパワーリザーブを備えた、機能的で堅牢なケニッシ製ムーブメントの恩恵を受けている。パワーリザーブは9時位置に置かれた丸いサブダイアルで表示される。3時位置には、3日分の日付を表示する日付窓がある。
これについては賛否両論で、クロノスドイツ版編集部ではネガティブな意見もあった。しかし、BR-X5の縦長の日付窓はパワーリザーブ表示に対するカウンターウェイトとして文字盤にバランスをもたらしており、この点を考慮すればこの形状にも正当性を見いだすことができる。矢印が中央の数字を指すので、日付の表示は分かりやすい。
文字盤の構造も複雑で、仕上がりは非常に秀逸である。多くのアプライドインデックスやフレームで囲まれたサブダイアル、精巧な作りの針などを観察していると、思わず周りを忘れてしまうほどこの時計に引き込まれる。
パワーリザーブ表示と日付窓の配置により、ミニッツトラックが長い区間途切れていることも気にならなくなり、10分と20分、40分と50分の間の時刻が正確に分からなくても十分、情報を得たと感じることができる。これには、コントラストが明瞭で、針の長さが適切であり、時針、分針、アワーマーカーに蓄光塗料が塗布されていることも貢献しているだろう。
総じて快適
視認性よりも操作性の方がより優れていると感じる。ねじ込み式リュウズは、ケースを拡大したような形状のリュウズガードに隠れているが、個性的な刻み目の恩恵により、ねじ込みの解除、引き出し、針合わせと、すべて快適に行うことができる。
ブレスレットのバックルも、快適な操作性に貢献している。ふたつのプッシュボタンを備えた頑丈なダブルフォールディングバックルは、ブレスレットと一体化したデザインになっている。ステンレススティール製ブレスレットのもうひとつの特徴は、コマがピンではなくネジでしっかりと留められていることで、時計師が使う専用ドライバーで簡単に取り外したり追加したりすることができる。
ただ、ひとつだけ残念な点を挙げるとすれば、季節や体調によって手首の太さが変わった際、ブレスレットの長さを素早く調節できるクイックエクステンションがバックルに装備されていない点だろう。
とはいえ、冬場に行った装着テストでは、BR-X5の唯一とも言えるこの難点にほとんど気がつかなかった。それどころか、実測171gという重量からは想像もつかないほど装着感は快適だった。その理由は、ブレスレットがステンレススティール製で、ケースとのバランスが良好なことに加えて、目の錯覚もあるだろう。重厚な印象を与える堂々たるケースは実際には幅41mm、厚さ12.8mmしかない。
優れた精度
ムーブメントの精度は、時計の品質を決定づける最も重要な要素である。その点、BR-X5はウィッチ社製歩度測定器で行ったテストで、平均日差プラス1.2秒/日、最大姿勢差5秒という、優秀な結果を見せてくれた。数週間に及ぶ着用テストの結果は、この良好な数値をさらに上回るもので、テストウォッチは常にマイナス1秒/日からプラス1秒/日の範囲で駆動し、電波時計との差がほとんどない日も数日あった。
ちなみに、ベル&ロスは、チューダーがケニッシ製ムーブメントで採用しているようなシリコン製ヒゲゼンマイを使わずにこの数値を実現している。もちろん、テンワに取り付けられた4つの錘で微調整を行うフリースプラング方式である点は同じである。
BR-X5では、最新のテクノロジーと高品質な加工、そして、日常的な使い勝手の良さが見事に融合している。しかし、このモデルの最も注目に値する点は、そのデザインである。角、エッジ、曲線を組み合わせたデザインは、それらの要素が見事に調和した素晴らしい外観を演出している。