2023年は、カシオの「G-SHOCK」が1983年に誕生してからちょうど40年というアニバーサリーイヤー。オリジンモデルのフォージドカーボンエディションやフルメタルのリクリスタライズドシリーズなど、さまざまな40周年記念モデルが発売された。そして2024年は、同社初の腕時計で、世界初のオートカレンダーを搭載したデジタルモデル「カシオトロン QW02」の発売からちょうど50周年。ここで思い切って断言してしまうが、カシオの時計ビジネスにとって24年は、かつてない大きな飛躍の年になるに違いない。
2023年、G-SHOCK誕生40周年を記念して製作された「GD001」。G-SHOCK 誕生35周年を記念して発表された「G-D5000-9JR」以来となるケースとブレスレットに18Kイエローゴールドを採用したユニークピース。特筆すべきは、ケース・ベゼル間に樹脂などの緩衝材を一切使用しないでフルメタル耐衝撃構造を持たせた点だ。光発電クォーツ。18KYGケース。20気圧防水。
Photographs & Text by Yasuhito Shibuya
誕生40周年を祝う金無垢G-SHOCK「G-D001」
カシオのさらなる躍進を予言する特別なモデルが、カシオのG-SHOCK40周年アニバーサリーサイトと、公式YouTubeサイト「CASIO G-SHOCK」において、2023年11月13日に発表された。それが「G-SHOCK ドリームプロジェクト」の第2弾モデル「G-D001」だ。
この腕時計は同プロジェクトの第1弾であるG-SHOCK35周年を記念して18年に発表され、翌19年に世界限定35本だけ製造・販売された「G-D5000-9JR」に続く、金無垢(ソリッドゴールド)G-SHOCKの第2弾であると同時に、それとは異次元のコンセプトで開発されたものである。
「G-D5000-9JR」は、素材こそゴールドだが、1983年のファーストモデル「DW-5000C」のデザインを踏襲して「G-SHOCK35年の集大成モデル」という位置付けだった。
しかし82年に「壊れない時計」というただ1行の製品企画書を書いた“G-SHOCKの生みの親”であり、現在までその企画開発を指導し、見守ってきた伊部菊雄氏は、このモデルが、これまでとは何もかも違う「新世代のG-SHOCK」だと断言した。このモデルの実機が初めて公開されたアメリカ・ニューヨークで現地時間23年11月9日18時から行われたG-SHOCK40周年記念イベント「ショック・ザ・ワールド ニューヨーク2023」においてのことである。
注目すべきは、これまでのG-SHOCKとはまるで異なるデザインと構造、メカニズムを採用していることだ。アナログ表示でスケルトン文字盤のため、正面からの見た目はまるで機械式のスケルトンモデル。しかもケースサイドは熱帯雨林のマングローブやスペースフレーム構造の現代建築を彷彿させる有機的な構造で、これまでフルメタルモデルでは欠かせなかった「ケースとベゼルの間の緩衝材(衝撃を吸収する樹脂)」なしで、普通のG-SHOCKと同じ耐衝撃性を実現している。加えて、このデザインは人間のデザイナーとAIのコラボレーション「ジェネレーティブデザイン」というプロセスから生まれたもの。
さらに時計好きにとって見逃せないのが、スケルトンの文字盤やケースサイドからチラ見できる歯車輪列や地板。それらはYouTubeで公開された公式映像で鑑賞することができるが、その精密さと美しさは圧巻だ。聞けば、歯車の一部は最新の半導体製造プロセスを活用して製作されたシリコン製。機械式時計でもこんなに斬新なデザインの美しい歯車輪列や地板を見たことはない。
また超高効率のソーラーセルを使った世界6局対応の電波時計で、ストップウォッチ機能とデュアルタイム機能を搭載。しかも製作本数はたったの1本でスペシャルボックス付きだ。
そして、この時計はアメリカ・ニューヨークで23年12月9日(現地時間)に開催される、世界最高峰の時計オークション「The New York Watch Auction: NINE」にチャリティー出品され、その売り上げはすべて環境保護団体に寄付される。この販売方法もG-SHOCK史上初の画期的な試みである。
果たして、このユニークピースが、どんなプライスで落札されるのか大いに気になるところだ。参考までに、フィリップスが発表している推定価格は最大14万ドル(約2058万円、1USドル=147円、2023年12月5日現在)だから、とにかくG-SHOCK史上最高額になることは絶対に間違いない。
そして「G-D001」以上に楽しみなのが、同じデザイン手法や技術を使って開発されるはずの、新世代G-SHOCKの製品版だ。それがいつ登場するのかはわからない。
だが、G-D001の完成度を考えると、それはごく近い未来になるはず。そして、この新世代G-SHOCKの製品版は、スイスの名門ブランドの高級機械式時計と同様に、時計愛好家を魅了するものになるだろう。ぜひ、カシオの時計事業50周年を迎える24年の発表&発売を期待したい。
時計&モノジャーナリスト、編集者。『GoodsPress』(徳間書店発行)の編集者として1995年からスイスの時計フェア、時計ブランドやウォッチメーカーの現地取材を開始。スマートウォッチ、カメラ、家電製品、クルマなど、あらゆるアイテムの取材経験も豊富。
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