ヒロタハカセによる世界イチ分かりやすいスウォッチNivachron™️講座

先日6月11日（火）は、かねてよりwebChronos内で告知していた、スウォッチ「フライマジック」のローンチイベント開催日でした。

　webChronosではこちらやこちらの記事で“機械式時計の在り方が変わる”だの、“革新的な素材をヒゲゼンマイに初使用”だのと、とにかくこの時計がすごいことを繰り返し取り上げてきたワケです。

「じゃあ、具体的にどうすごいの？」と、いうところはヒロタ編集長と吉江フォトグラファーの力作であるこの記事を読んでいただけると幸いです……。

　このイベントはそんなフライマジックのローンチを祝いつつ、現物を見た上で改めてヒロタ編集長によるフライマジックとNivachron™️の解説を聞いていただこう、というものでした。

　イベントの会場は東京の「代官山 T-SITE GARDEN GALLERY」。

　実は同日より、こちらでフライマジックのポップアップストアが開催されています。

　イベントはスウォッチ グループ ジャパン クリストフ サビオ代表取締役社長の挨拶で幕を開けました。

　サビオ氏は日本語でスイスのアイコニックブランドであるスウォッチが、新素材であるNivachron™️を搭載することの意義を熱く語ってくれました。そして最後に一言、「きてくれてありがとね」と、茶目っ気たっぷりに挨拶。そのギャップで会場を沸かせます。

　そして続いてヒロタ編集長の登場です。

　“ヒゲゼンマイの分類”や“緩急針とフリースプラング”、“温度変化”などなど、クロノス日本版読者にはおなじみでも、おおよそスウォッチのイベントとは思えない単語が飛び交います。

　何度も言いますが、その詳細はこちらを読んでいただけますと幸いです。こちらではさらに記事を補足するべく、イベントでのみ語られた部分をさっと紹介いたします。

Nivachron™️って何がすごいの？

　Nivachron™️製ヒゲゼンマイの特徴として挙げられるのが「高い耐磁性能」です。しかし、すでに腕時計には非磁性素材であるシリコンを用いたヒゲゼンマイが存在します。特にスウォッチ グループはこのシリコン製ヒゲゼンマイの製造に長けています。では、なぜスウォッチ グループは新たにNivachron™️を開発したのか。それはそれぞれの特徴を見ていけば分かります。

シリコン製ヒゲゼンマイ
・非磁性素材
・フリースプラングしかできない
（・かつては湿気に弱かった）

Nivachron™️製ヒゲゼンマイ
・磁気に強い
・緩急装置を選ばない
・湿気に強い

　シリコンは非磁性素材のため、基本的にそれ自体が磁気帯びをすることはありません。しかし、ケイ素を主とした化合物のため割れやすいのです。結果、緩急装置はフリースプラングにしか採用することができません。つまり、安価な時計に載せることが難しいのです。

　対してNivachron™️は、チタンとニオブの合金です。ほんのわずかのみ鉄も用いられていますが、“ほとんど非鉄”の素材で構成されているため、シリコンほどではないですが、磁気に強いのです。そして、湿気にも強い。しかし一番の魅力は合金のため、従来のニヴァロックスのようにメンテナンスが楽で、加工がしやすいということ。

　つまり、緩急針を用いてコストパフォーマンスに優れたムーブメントにも、巻き上げヒゲを用いた高級時計向けムーブメントにも採用することができるのです。

　まさに、高級ブランドから普及価格帯のブランドまで幅広く持つスウォッチ グループにとってうってつけの素材なのです。

貴重なモデルをタッチ＆トライ

　とにかくマニアック、しかし分かりやすくその革新性を伝えたトークショーの後は、恒例のタッチ＆トライです。

　スタッフさんの解説を聞き入る人や、

　手に取り、あらゆる角度からその作りを分析する人。

　日本では各15本、計45本しか販売されない、その貴重な姿をスマートフォンに収めようとする人など。

　ケータリングのフィンガーフードや飲み物を片手に談笑される方もいらっしゃいました。

　会場がポップアップストアということもあり、来場者の中にはその場で購入された方も。ストアは6月16日（日）までの営業ですが、すでに在庫はわずかのよう。数量限定の時計を実際に触って、購入できる貴重なチャンスなので、気になっている方はぜひこの機会をお見逃しなく。（細田雄人）