G-SHOCK最新作「MRG-B2100B」。“木組”デザインが組み上げた新しい価値

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2024.06.14
PR:CASIO

G-SHOCKの最高峰とポジショニングされるMR-Gコレクションより、新作モデル「MRG-B2100B」が登場した。MR-G初の2100シリーズを採用するとともに、“木組”をデザインモチーフとした本作。従来のMR-Gコレクションにはなかったスタイルを有しつつも、MR-Gで培われてきた技術やコンセプトを組み上げて製造した、特別な1本となっている。

カシオ MRG-B2100B

吉江正倫:写真
Photographs by Masanori Yoshie
鶴岡智恵子(クロノス日本版):文
Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2024年6月14日公開記事]


G-SHOCKの2024年新作「MRG-B2100B」

 1996年に登場した「MRG-100」以来、G-SHOCKの最高峰というポジションを担ってきたMR-Gコレクション。G-SHOCKらしい“強さ”とメタル素材の“美しさ”、そして最高峰としての“威厳”を備えることで、他製品との差別化を図っている。このMR-Gから、2024年の最新作が登場した。同コレクション初となる2100シリーズを採用した「MRG-B2100B」である。

G-SHOCK 新作 MRG-B2100B

G-SHOCK MRG-B2100シリーズ「MRG-B2100B-1AJR」
タフソーラー。フル充電時約18カ月(パワーセーブ時)。Ti×コバリオン(ベゼルトップ)×64チタンケース(縦49.5×横44.4mm、厚さ13.6mm)。20気圧防水。64万9000円(税込み)。2024年6月14日(金)発売。

 2100シリーズであるため、表示は3針、デイト表示の小窓、そしてインダイアルひとつのみと、とてもシンプル。また、デザインモチーフに日本伝統の木造建築技法である“木組”を取り入れており、とりわけ従来の透過文字盤とは異なり、無数の小さな穴から光を通す本作の文字盤は、このモチーフを最も活用した意匠と言える。

 そんなMRG-B2100Bの開発およびデザインに携わった、カシオ計算機のデザイナー、松田孝雄氏と正林(しょうばやし)盛次氏の話から、本作はこれまでのMR-Gの技術やコンセプトを再構築することで、まったく新しいデザインを備えつつも、MR-Gにふさわしい存在になっていることが分かった。




困難だった、MR-G初の2100シリーズ採用

 MR-Gコレクションに新しく登場したMRG-B2100Bは、MRG-B5000の基本構造を継承しながらも、初めて2100シリーズをMR-G化したモデルだ。また、リリースにあたって、モジュールから新開発されているという。

MR-Gコレクションのデザインをディレクションする、開発本部チーフデザイナーの松田孝雄氏。エディフィスやプロトレックのスマートウォッチといった時計のほか、携帯電話のデザインも担当してきた。一番好きなG-SHOCKは、同ブランド初のアナログ式モデルとなった「AW-500」。

 チーフデザイナーの松田孝雄氏は、MRG-B2100Bの開発工程の中でも、モジュール開発初期から関わってきた。「デザインの検討が始まる前に、まずモジュールの開発があります。サイズや針のレイアウトをどうするかなどを決めるといった段階です。現在、MR-Gにはサイズが2種あり、大ぶりなのがB2000系で、小ぶりなのがB1000系。このB1000系サイズのモジュールをベースに、MRG-B2100Bの開発は始まりました。MR-Gとしては、小ぶりですが着けやすいサイズですよね」。

 モジュールが決定すると、デザイナーの正林盛次氏が加わり、“先行デザイン開発”というデザインの検討が始まった。この検討とは、デザイン部門が中心となって先行デザインモックを作成して、商品性を共有するためのもの。このモックの好評という結果を得て、正式に商品開発へと進んでいった。

G-SHOCKのデザインに、約17年携わってきた開発本部デザイナー正林(しょうばやし)盛次氏。途中、オシアナスなどのアナログチームを経験した後、MR-Gを担当することになったという。一番好きなG-SHOCKは、2代目フロッグマン「DW-8200」。フロッグマンのデザインをずっと担当したいと思い続け、ついに2024年、MR-Gコレクションとして打ち出された「MRG-BF1000B」で実現した。

 開発時の話を聞くと、2100のサイズ、そしてこのデザインをMR-Gとしてまとめ上げることが、いかに困難だったかをうかがえる。

「今回のモデルは、2100シリーズで初めてリュウズを搭載しています。MR-Gはリュウズにクラッドガード構造を採用しており、リュウズ内部に緩衝体が仕込まれているため、サイズダウンが難しく、ケースがかなり厚くなりそうでした。しかし、設計部門でサイズダウンの開発をしてくれた結果、 このサイズに収めることができました。設計者に感謝しています」(松田)

G-SHOCK 新作 MRG-B2100B

MRG-B2100Bに搭載される、クラッドガード構造。衝撃の影響を受けやすいリュウズシャフトを、リュウズカバーと緩衝体で包み込んでいる。緩衝体で吸収できなかった衝撃は、ケースに力を逃す仕組みとなっている。

「従来のMR-Gのラインナップには、シンプルな3針モデルがありませんでした。そこで、シンプルな機能、デザインが若い世代を中心に受けていた、2100シリーズをMR-G化することにしました。ただ、シンプルであっても、G-SHOCKらしい機能感と力強さ、MR-Gらしい威厳を兼ね備えた“最高峰のシンプル”を実現したかった。シンプルという言葉とは相反すると思われる機能感や力強さというものを、いかにうまく融合させるかが、大きな課題となりました」(正林)

G-SHOCK 新作 MRG-B2100B

MRG-B2100Bは、MR-Gコレクションの中では最もシンプルな機能、造形を備えている。とはいえ今の形になるまでの道のりは、決して単純ではない。「フェイスデザインは開発当初、少し形状が複雑でした。そのためモックアップの作成、検討、調整が難しかったのですが、構造や、仕上げがより映える面構成へと変更したことで、結果的にデザインクォリティを向上することができました」(正林)。

 なお、松田氏はこれまで、メタル製の2100シリーズのデザインディレクションにも携わってきた。「メタル製の2100シリーズは開発のたびに、いつも最上位モデルを作るつもりでやっています。(前作よりも)バリューが上がって見えなくてはなりませんから。今回も、そういった意味で『生みの苦しみ』はありました。G-SHOCKのトップモデルとしての2100である、MRG-B2100Bを出せたことで、達成感がありますね」。

松田氏が持参してくれた、2100シリーズの歴代モデル。左からGA-2100、GM-2100、GM-B2100、そして最新のMRG-B2100Bだ。それぞれ、同じ部品はひとつも共用していない。

 このように、2100シリーズのサイズ、シンプルなデザインをMR-Gコレクションとして結実させるということは、困難を極めた。しかし開発陣はこの困難を克服すると同時に、2100シリーズのシンプルで洗練された意匠に“木組”をモチーフとして加えたことで、従来のMR-Gにはなかったスタイルを確立している。





“木組”がまとめあげた、MR-Gの技術とコンセプト

写真:イメージ・アイ/アフロ
石動神社(新潟県 三条市)
日本の寺社仏閣などで取り入れられてきた木組。切り込みの入った木材同士が組み合わされており、重い瓦なども支えられる強度を持つ。ちなみに松田氏のお気に入りの木組スポットは法隆寺の五重塔で、正林氏のお気に入りは京都の東本願寺と奈良の東大寺。

 木組をデザインモチーフとして取り入れたのは、正林氏だ。前述の通り、若者を中心に高い評価を得た2100のシンプルなデザインをキープしたうえで、シンプルと相反するG-SHOCKらしい機能感や力強さ、MR-Gとしての威厳をどう付加するのか? というところで思い悩んだ。そこで「機能感、強さ、威厳を後から付加するのではなく、ソーラーセルへの採光という機能をそのままデザインにしてしまえば、シンプルな機能表現が可能なのではと考えました」。採光という機能面は「木組格子」を、そして力強さと威厳という面は寺社仏閣の軒下に見られる伝統建築手法「組み物」をモチーフにし、緻密で立体的な階段状の格子パターンを組み上げていった。

 この目論見が功を奏し、MRG-B2100Bの文字盤は従来のMR-Gコレクションとも、ソーラーウォッチとも異なる顔立ちを備えている。透過樹脂で光をソーラーセルまで通し、蓄電するソーラーウォッチは、かつて高級感を出すことが難しかった。しかし近年、カシオ計算機を含む国産時計メーカーを中心に、ソーラーウォッチの文字盤の質感向上を成功させている。まるでメタルのような質感を備えていたり、鮮やかな色彩を実現していたりするのだ。しかし、本作はそういった従来のハイクォリティなソーラーウォッチとも異なる見た目を有している。日本の木造建築で採用されてきた木組格子から着想を得て、不透過の文字盤に微細な穴を作り、その穴から光を通して受光させるという仕組みとなっているのだ。

まるで木組格子から日差しが和室に差し込むように、文字盤に開けられた穴から光を通して発電・蓄電させる。なお、山形カシオの超精密加工技術を駆使しており、穴は微細だ。

MRG-B2100B

文字盤が立体感を有していることはもちろん、インデックスも切り立っており、判読性に優れている。ブラック文字盤とメタリックなインデックスはコントラストがはっきりしていて、強い光源下でも埋没せず、時刻の読み取りができる。

 文字盤を透過させる必要がないというのは、加工や装飾の自由度が上がったことを意味している。そのため、メタリックで、かつ立体的な造形を備えていることも、本作の大きな特徴である。なお、正林氏はこういった自由な文字盤を実現するために、木組をアイデアとして取り入れたのだという。

 さらに正林氏は、この文字盤に“遊び心”を加えた。「G-SHOCKの初号機“オリジン”へのリスペクトとして、おなじみとなっているレンガパターンを、どこかに忍ばせたいと考えていました。この文字盤、陰影があって分かりにくいかもしれませんが、陰影をなくすとレンガパターンになっているのです。また、12時位置のインデックスは、(オリジンの液晶ディスプレイにあしらわれている)ホームベース形の『SHOCK RESIST』マークをイメージしました。ちなみに、インダイアルも八角形です(通常の2100シリーズでは半円形)」。

MRG-B2100B

1983年に登場した、初代G-SHOCK「DW-5000C」の液晶ディスプレイにあしらわれた「SHOCK RESIST」マークの五角形をかたどった12時位置のインデックス。木組コンセプトに基づき、ふたつのパーツを組み合わせて製造している。

 さらに聞くと、木組というデザインモチーフには、その発想に至る流れがあった。MRG-B2100Bは、MRG-B5000の基本ケース構造「マルチガードストラクチャー」を継承しているが、木組は、この構造から着想した。正林氏はこう語る。「今回の木組という考えの発端は、MRG-B5000をデザインした時からありました。樹脂製のベゼルを金属で作り、そしてその複雑形状に緻密な仕上げを施したいと思った時、パーツを細分化するマルチガードストラクチャーという考えが生まれました。この分割したパーツを耐衝撃構造に活かす際に、木組構造の『組み合わせの強さ』に思い至ったのです」。

MRG-B2100B

MRG-B2100Bは、MRG-B5000の基本構造「マルチガードストラクチャー」を継承しており、いかに多くのパーツで構成されているかが分かる。なお、トップベゼルは純チタンの約4倍の硬度を持ち、プラチナ同等の輝きを放つという合金「コバリオン」製。そしてケースやビスバック、ボタン、リュウズは純チタンの約2倍の硬度を持つ「64 Titanium」製だ。

 確かにMR-Gは金属素材を使っても耐衝撃構造を実現するために、そして各パーツを丁寧に磨くために、パーツを細分化している。MRG-B2100Bもシンプルな造形とはいえ、27個ものパーツによって構成されており、これらのパーツが木組のようにはめ込まれていくことで、強固な外装を実現しているのだ。

カシオ MRG-B2100B

多パーツ構成によって、各パーツに丁寧な仕上げを施せるというのも強みのひとつ。各パーツはザラツ研磨によって、ゆがみのない鏡面に仕上げられている。

 ケースサイドを見ると、多パーツ構造であることを実感させられる。なお、四隅のパーツは色が異なるが、これも遊び心。正林氏は「“組み上げた”感じを出すために、あえてパーツの色を変えました」と語った。

カシオ MRG-B2100B

純チタンの約3倍の硬度を持つという「DAT55G Titanium」製ブレスレット。MRG-B5000から流用しているというが、ピンの仕上げを変えており、MRG-B2100独自の仕上げが与えられたブレスレットとなっている。


MRG-B2100Bが組み上げた価値とは?

 高級G-SHOCKとして、時計市場でのプレゼンスを高めているMR-Gコレクション。今回新作モデルとして登場したMRG-B2100Bはシンプルなうえに、これまでのMR-Gコレクションと比較して、縦49.5×横44.4mm、厚さ13.6mmと、小ぶりなケースサイズを有することから、扱いやすい1本となっている。

 しかし本作の“価値”は、こういったユーザビリティーに留まらない。本作はシンプルなキャンバスの中でMR-Gの強さ、威厳、そして美しさを表現するという試みに挑戦するために、MRG-B5000の開発当時から意識されていた“木組”をデザインモチーフとして採用しており、MR-Gの技術とコンセプトを組み上げたかのような特別な1本となっているのだ。

 MRG-B2100Bは、今後時計市場で末永く愛されていく腕時計となるに違いない。まるで、木組の建造物が、長く日本を象徴する伝統技法として親しまれているかのように。


Contact info: カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925


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