ジャーナリストをはじめ、時計業界の著名人たちに2024年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は人気時計系Youtuber/ブロガーのRYが「個人的に欲しい!」と思った時計を挙げた。グランドセイコー「SLGW003」といったドレスウォッチとチューダー「ブラックベイ 58 GMT」のような実用的な時計をバランスよく選出した。
1位:パルミジャーニ・フルリエ「トンダPF マイクロローターノンデイト」
毎年この企画で上位に挙げているトンダPFシリーズ。控えめながら上質感漂う佇まいと美しいムーブメントはもちろん、その着け心地に心底惚れている。
マイクロローターでノンデイトがあればと思っていたところの本作。気品と穏やかさを感じるゴールデン・シエナの色味もキャラクターに合っている。
自動巻き(Cal.PF703)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。Pt×SSケース(直径40mm、厚さ7.8mm)。100m防水。要価格問合せ。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com
2位:グランドセイコー「エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours モデル SLGW003」
特に2020年代に入ってからのグランドセイコーの躍動は凄まじいものがあるが、今年もやってくれたと思った本作。
水平方向の白樺文字盤、10mmを切ったケースの薄さなど語りポイントは多いと思うが、特にムーブメントに注目。約50年ぶりに誕生した10振動の手巻きメカニカルムーブメントは、巻き上げ時の感触と音にもこだわったという。
腕時計に「時間を知る」以外の“何か”を求める我々愛好家にとってはかなり刺さるはず。
手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。3気圧防水。145万2000円(税込み)。2024年8月9日(金)発売予定。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617
3位:チューダー「ブラックベイ 58 GMT」
元々チューダーにはブラックベイGMTがあったが、ブラックベイ “58”シリーズになって新登場。ブラックベイよりもケースが2mm小さく、1.8mmも薄い39mm×12.8mmというサイズも筆者的にはうれしい。しかもC.O.S.C.とMETAS認定という超実用スペックはさすが。
METAS認定は長らくオメガの独壇場であったが、チューダーも認定機が増えてきている。我々ユーザー側としては選択肢が増えてありがたいのではないだろうか。
自動巻き(Cal.MT5450-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.8mm)。200m防水。64万3500円(税込み)。(問)日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570
4位:カルティエ「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」Ref. WHTO0007
腕時計製造の歴史が深いカルティエにおいて、最古参級の「トーチュ」がプリヴェコレクションに加わった。
フランス語で“亀”を意味するモデル名を冠する通り、丸でも四角でもない、いわゆるトノー型が洒落ている。本来スポーティなはずのクロノグラフをここまでエレガントに仕上げてしまうのは流石の一言。
手巻き(Cal.1928MC)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。Ptケース(縦43.7×横34.8mm、厚さ10.2mm)。日常生活防水。世界限定200本。897万6000円(税込み)。2024年10月発売予定。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
5位:ボーム&メルシエ「リビエラ タイドグラフ」Ref.M0A10761
船長という職業柄、どうしても海に関係する腕時計は気になってしまう。中でも、潮の満ち引きを表示する「タイドグラフ」を持つ腕時計はそう多くはない。
タイドグラフを備える腕時計の中でも、「リビエラ タイドグラフ」トップクラスにスタイリッシュになっている。評価の高い自社製ムーブメントのボーマティック搭載も魅力。
自動巻き(Cal.Baumatic BM14-1975AC3)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径43.06mm、厚さ12.34mm)。10気圧防水。世界限定500本。78万1000円(税込み)。(問)ボーム&メルシエ Tel.0120-98-8000
総評
今年のウォッチズ&ワンダーズは本業である船長として海上で見守ることになったが、海上はインターネット通信が脆弱でW&Wや各時計メーカーのサイトもまともに開けず、見守ることすらできない状況下であった(泣)。陸地に降りて、一気に情報を吸収したが、今年は特にドレスウォッチもしくはドレッシーなスポーティ時計が目立ったような気がした。クラシック回帰やケースの小径化など、ドレス指向のトレンドはここ数年続いていたが、さらにはっきりと出たように思う。
腕時計という趣味は、コロナ禍以降特に注目を集めるようになったのではないだろうか(そうは言ってもまだまだニッチなジャンルではあると思うが)。筆者が腕時計を買うようになる前は、デカくてギラギラとした、見せつけるような腕時計がかっこいいと思っていた。それから実際に機械式腕時計を購入し、集めるようになってから、だんだんと薄くて小ぶりなドレッシーな腕時計が好きになっていったという変遷がある。
もちろん好みは人それぞれなので一概には言えないが、もし筆者のような変遷を辿る人が多いのだとしたら今後ますますドレッシーな腕時計の需要は高まるのではと考えている。
今年も個人的に欲しいという基準で順位をつけさせていただいたが、パルミジャーニ・フルリエのトンダPFシリーズは1位→2位→1位と毎年筆者の心を捉えて離さない。これはいつか買ってしまうかも……? (なかなか手の出せない価格なのが辛いが……)。
選者のプロフィール
1990年生まれ。本業は外国船の“船長”。初めて購入した機械式時計をきっかけに腕時計の魅力に取り憑かれる。腕時計好きの人口を増やすため、2019年にブログ「腕時計のある人生」を開設。20年にはYouTube「腕時計のある人生Channel」を開設した。webChronosへのインプレッション記事の寄稿やForza Stayleの人気動画シリーズ「ロック福田の腕時計魂」への出演なども行う。
https://www.webchronos.net/features/113471/
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