GMTウォッチの元祖にして大定番のロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」。今回はこの大ベストセラーの中から、“ルートビア”こと18KエバーローズロレゾールのRef.126711CHNRをインプレッションする。「もし、腕時計を1本しか所有できない場合、GMTマスターⅡはその1本として適切か」というテーマを設けて着用した場合、「精度良し、見た目良し、装着感良し、使い勝手良し、堅牢性良し」の5ツールプレイヤーは、どのように評価されるのか。
Text & Photographs by Yuto Hosoda(Chronos-Japan)
[2024年4月27日公開記事]
ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」Ref.126711CHNRを着ける
ひょんなことからロレックスの「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」を着用することになった。それも珍しいことに“ペプシ”や“バットマン”ではなく、18KエバーローズロレゾールのRef.126711CHNRである。
“ルートビア”などの愛称が付けられる同作(同僚の鶴岡は“チョコクロ”と呼んでいる)を着けるのは、実は初めてではない。2019年、結果として最後となったバーゼルワールドに社長の個体を着けて行っているのだ。それから早5年。全く同じ個体のGMTマスターⅡを久しぶりに使ってみて、どんな感想を抱くのか。自分でも楽しみだ。
GMTマスターⅡは唯一無二の相棒と足り得るか
と、着けるまではウキウキだった。しかし実際にインプレッションをするとなると、今更、この時計で何を書けばいいのだろう。2018年の登場以来、クロノス日本版およびwebChronosは、この傑作時計を幾度となく取り上げてきたのだ。
こと着用テストに至ってはドイツ版編集部のイェンス・コッホがペプシとバットマン、そしてレフティ(ロレックスはこのモデルをレフティではなく、あくまで左リュウズモデルとしている)を。我らが日本版編集長、広田雅将もペプシの着用テストを行なっている。色違いとはいえ、今更このモデルをインプレッションするのは、なかなかにしんどい。
https://www.webchronos.net/features/89029/
そこで少し視点を変えて着けてみることにする。テーマは「もし、腕時計を1本しか所有できない場合、GMTマスターⅡはその1本として適切か」というものだ。
というのも、自分の中でロレックスのプロフェッショナルモデルは「精度良し、見た目良し、装着感良し、使い勝手良し、堅牢性良し」の5ツールプレイヤー。時計業界では「あまりに出来が良すぎて、他の時計に興味がなくなる」なんて言われ方もよく言われるし、実際「これだけ持っていれば、多分もう何もいらないんだろうな」と手に取るたびに思わされてきたのだ。
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18Kエバーローズゴールド×SSケース(直径40mm)。100m防水。
果たして唯一無二の相棒として足りる得る存在か、そんなことを考えながらインプレッション期間はRef.126711CHNRを着けてみた。
惚れ惚れするほどに完成されたデザイン
まず、装着をする前に時計そのものをじっくりと見てみる。いくら機能性が高くても見た目がカッコよくなければ、その時計だけを着けるなんて不可能だからだ。好みに左右される部分であることは百も承知だが、改めて評価する必要がある。
正直に言うと、GMTマスターⅡのルックスには惚れ惚れする。時計全体を見ると、程よいサイズ感のケースにプロフェッショナルモデル共通のデザインコードを持つ文字盤、そして両方向回転ベゼルの組み合わせ。70年近く前に完成された姿を引き継ぎながら、磨きをかけ続けてきたディテールはそのひとつひとつに隙がなく、形容し難い緊張感を纏っている。
特に今回着用したRef.126711CHNRは、この“よく出来すぎた”時計が放つ緊張感をいなしてくれるようなカラーリングが絶妙だ。人気のペプシはセラクロムの彩度がより高く、またGMT針もワンポイントのように赤い。オンモードの高揚した気持ちの時には、ペプシくらいコントラストが強くパキッとしている方が気持ちも乗るだろう。
対してRef.126711CHNRは全体的に彩度が控え目。18Kゴールドを使った時計なのにコントラストが低いため、ペプシよりも落ち着いているように思える。これ1本だけ着けて生活をするならば、これくらいの方が飽きにくくていいかもしれない。
重さを感じさせないブレスレットが実現する優れた装着感
装着感に関しては、よく出来すぎていてあまり語ることがないくらい。かつて広田編集長は、「ここ20年のロレックスは、ヘッドを重くし、対してブレスを重くしというイタチごっこを続けてきた」と、ロレックスの装着感に対してジレンマを喝破したが、それを着用者が気付かないくらいにブレスレットがよく出来ている。
特に今回着けたRef.126711CHNRはSSのペプシ以上にヘッドも重ければ、ブレスレットの中コマにも18Kエバーローズゴールドが使用されているため、余計に重い。手に取った時や、ふとした瞬間に重さを感じることもあるのだが、基本的にはバックルを留めた瞬間から重みが見事に分散されるため、装着感という観点では非常に良好だ。
イージーリンクシステムで延長すれば手のむくんでいる時にも快適な装着感を提供してくれるはずだし、100mの防水性能があるから、気を使えばブレスレットの水洗いも付けたままで問題なくできる。夏だろうが冬だろうが、1年通して快適に着けられること間違いなしだ。
高精度かつ堅牢で、無敵の使い勝手
精度も今更論じるまでもなく、そりゃ高評価だ。クロノスドイツ版のテスト記事のように6姿勢での精度チェックまではしていないが、着用期間は基本的には日差+2〜3秒で安定していた。ロレックスの自社基準にはわずかに及ばない日が若干あったが、日較差は0〜1秒で推移し続けていたわけで、その精度は十分すぎるほどだ。
驚くべきはこの個体が5年前に購入して以来、ノンメンテナンスで使用され続けていた個人所有のものだということ。掲載写真を見ても明らかなように擦り傷・当たり傷が多く見られ、使用感が隠せない個体ながら、これだけの精度を維持している。いまだにリュウズの操作時に嫌な感触は見られないし、バックルの稼働部などにもやれたような印象は見られない。
メンテナンスさえすれば間違いなく一生モノだろうし、仮に旅先などで何かあっても簡単には壊れないであろう安心感は、他の高級時計では得難いモノだ。堅牢性という項目は文句なしに二重丸だろう。
そして、使い勝手という点も言わずもがなだ。高精度というのも時間調整の回数が減るため使い勝手につながるし、いつまでもヘタらず、装着感に優れるブレスレットも良い使い勝手と相互関係にある。
もちろん、時針の単独調整がもたらすGMT機能は日本を拠点とし続ける限り、どこに出かけようとホームタイムを調整する必要がなく、おまけに秒針も止まらない。デイトを大きく見せてくれるサイクロップレンズは正直「余計なお世話だ」と言いたくなるが、これだって老眼になったら重宝するかもしれない。
こんなに使い勝手に優れた腕時計は、そうはないだろう。
ロレックス1本で全て事足りる!?
自分の挙げた5ツールプレイヤーという基準を全て満たし、あまりにも作りがいい時計。おまけにRef.126711CHNRに至っては、そのカラーリングから飽きが来づらいとまできた。
自分が時計を1本に絞るならなんて、しょうもない妄想……を本気で考えるならば、ロレックスのGMTマスターⅡはその候補に十分になり得る時計だ。確かにロレックスを手にしてしまえば、他の時計は必要ないと思う人が出てくるのも納得できる。色々な時計を購入し、沼にハマっていくのと、全てが賄われる1本を手にするのこと。どちらが幸せかは……。
https://www.webchronos.net/specification/24765/
https://www.webchronos.net/specification/39313/
https://www.webchronos.net/specification/87980/