ウブロが開発し、実用化した赤いセラミックベゼル。セラミックスの原料である白い炭化ホウ素の粉末に赤い色素を交ぜて焼結する。通常は、高温で赤の色素が変色してしまうが、ウブロの素材開発者、アサノヴィッチ氏は焼結の温度を下げることで赤の発色に成功した。
ウブロでは赤だけでなく、青いセラミックスも開発している。
マジックゴールド」は、スイス貴金属管理局も認めた紛うことなき18Kゴールドである。素材の耐傷性を示すヴィッカース硬さ(Hv)で言うと、標準的な18Kゴールドが約400、スティールでも最大600だが、18カラットのマジックゴールドは約1000。通常のゴールドの約倍以上のヴィッカース硬さを誇る。
なぜマジックゴールドは、これだけの硬さを実現できたのか? その理由は、分かりやすく言うと、〝骨格〟がセラミックスだからである。それも、原料によってさまざまな種類が存在するセラミックスの中でも、炭化ホウ素を原料にした特に硬い高品質のセラミックスをウブロは採用している。この炭化ホウ素セラミックスは、通常は戦車の装甲や防弾チョッキなどの軍需産業や航空・宇宙産業で用いられる超硬素材で、密度が高ければヴィッカース硬さ4500に達する。
そのマジックゴールドの製造工程は次の通り。炭化ホウ素を5ミクロンのパウダーにしてシリコン製の型に充填し、2000気圧の水圧によって圧縮(冷間等方圧プレス)、後に切削しやすい円筒形に成形する。この成形体を2200℃の高温で焼結。ポイントは、この時、完全な固体になる直前に焼結をやめて、多孔質のセラミックスを作ること。こうして、炭化ホウ素セラミックスの骨格が出来上がる。その無数の孔に、高温高圧(200気圧)の不活性ガス(アルゴンガス)で融解したゴールドの液体を圧入すると、セラミックスとゴールドが融合した新素材「マジックゴールド」が誕生するのだ。重量パーセント75%のゴールドに炭化ホウ素のセラミックスが約22%、アルミニウムが約3%で構成される。アルミニウムはゴールドとセラミックスのなじみをよくするために添加されたものだ。