スピークマリン「リップルズ・スケルトン」“ラ・シティ”の骨格

2024.10.11

“ラ・シティ”の名が与えられたケースを持つ、スピークマリンの新作「リップルズ・スケルトン」。新しい外装、新しいムーブメントを備えることで、傑出したラグジュアリースポーツウォッチへと進化する。

リップルズ・スケルトン

リップルズ・スケルトン
「リップルズ」の最新作。デザイナーのステファン・ラクロア-ガシェいわく「リップルズの円と四角を融合したケースは残しつつ、ほかにはないモデル」を目指した。なお、ムーブメントも外装も、新設計である。自動巻き(Cal.SMA07)。27石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約52時間。SSケース(直径40.3mm、厚さ6.3mm)。5気圧防水。596万9700円(税込み)。
三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
鶴岡智恵子(本誌):取材・文 Text by Chieko Tsuruoka (Chronos-Japan)
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年11月号掲載記事]

スケルトン専用に仕立て直された薄型機

 薄い外装と、そこに与えられたサテン仕上げとポリッシュ仕上げのコンビネーションという、いわゆるラグジュアリースポーツウォッチのスタイルを備えたスピークマリンの「リップルズ」より、ケース厚を30%薄くし、かつスケルトナイズした「リップルズ・スケルトン」が登場した。いっそう腕なじみがよく、よりル・セルクル・デ・オルロジェ製のムーブメントを堪能できるようになった本作は、リップルズが持つ“ラ・シティ”(都会的な)と名付けられたケースの独創性をより強調する。

リップルズ・スケルトン

この新作モデルにもスピークマリンを象徴する「ビッグベン針」が与えられた。なお、PVDではなく青焼きされている。ステファン・ラクロア-ガシェは「当初、針の色はシルバーと考えており、ブルースティール針には納得できませんでした。しかし開発チームとディスカッションし、自分なりに時間をかけて考えて、最終に“スピークマリンらしい色”という考えに至りました」と語る

 本作を手に取った時、その作りの良さに所有欲をくすぐられた。“ラ・シティ”の複雑な造形を薄型ケースで実現し、かつブレスレットも薄く、しなやかに仕立てており、コストと手間がかかっていると分かる。こういった手間を惜しまず製造してこそ、ラグジュアリーな腕時計だ。さらに本作のスケルトン化のために、輪列を再設計した専用ムーブメントが製造されている点も、魅力のひとつだ。

 スピークマリンは、このコストのかかるスタイルを本作で実現するのみならず、従来モデルよりもスペックアップさせた。スペックを向上させたと言える変更点は、大きく3つある。ひとつはケース素材を従来の316Lスティールから、審美性を備えた904Lスティールへ改めたこと。もうひとつはバックルに最大4mmの微調整機構を搭載したこと。さらに、厚さがわずか3・25㎜の新開発ムーブメントを搭載させ、“ラ・シティ”の意匠に合わせて肉抜きしたわけだが、このムーブメントが3万6000振動/時のハイビート設計で、日差±5秒という精度をも両立していることだ。3mm台の厚さでこれだけのハイビートという機械式のムーブメントは、ほとんどない。なお、パワーリザーブは従来と同じく約52時間。防水性も5気圧が保たれている。

リップルズ・スケルトン

マイクロローターは従来モデルと同様のパターンが施されているが、薄型化されている。スピークマリンの開発チームは薄さと巻き上げ効率を両立すべく、従来同様ワインディングシステムにリバーサーを採用しつつ、一方でローターの素材に比重の高いタングステンを用いた。

 本作はこの薄く、高性能で、それでいて美観も備えたムーブメントを開発したル・セルクル・デ・オルロジェの存在なくしては実現しえなかっただろう。このムーブメント製造会社はルイ・ヴィトンなどとも協業している。スピークマリンも2015年より出資しており、同社とともに、ムーブメント開発を行ってきた。

 そして、もともと非凡な存在であったリップルズを、さらなる高みへと誘った“ラ・シティ”、英語表記で“The City”というエッセンスを際立たせたデザイナーの存在もまた欠かせない。本作が発表されたジュネーブ・ウォッチ・デイズ2024で、本作を含む歴代リップルズをデザインしたステファン・ラクロア-ガシェから話を聞く機会を得た。

リップルズ・スケルトン

わずか6.3mmの厚さに仕立てたケースも見事だが、同様に薄く、それでいてしなやかなブレスレットにも驚かされる。コマ同士の遊びも適切で、快適な装着感がもたらされるだろう。コマの連結はネジ式。また、観音開きのバックルの両サイドに微調整機構が搭載されており、特別な工具を使用することなく、簡単な操作で最大4mmのサイズ調整が行える。

「リップルズ・スケルトンのデザインを完成させるまでに、100枚のデッサンを描きました。スケルトンにするということは、文字盤側とケースバック側の両面を見なくてはならず、これが大変な仕事でした。また、ブリッジの存在も、課題のひとつでした。ブリッジは(ムーブメントのパーツを固定するという)技術的な役割があります。その役割を損ねないよう、コンテンポラリーに、ほかにはないデザインに、ということに挑戦しました。結果として完成したこのモデルのデザインを、私は誇りに思っています」

 さらりと都会的な印象が与えられたリップルズ・スケルトンはその実、傑出したノウハウの集結をもって、生真面目なまでに作り込まれた〝ラグスポ〞なのだ。



Contact info: DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン cg.csc1@dksh.com


スピークマリンの新作モデルは、薄型ムーブメントを搭載した「リップルズ・スケルトン」【ジュネーブ・ウォッチ・デイズ】

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2024年 スピークマリンの新作時計を一気読み!

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