世界にプレゼンスを示す、2024年のグランドセイコー【新作モデルから今年を振り返り】

2024.12.13

時計専門誌『クロノス日本版』編集部が取材した、時計業界の新作見本市ウォッチズ&ワンダーズ2024。「外装革命」として特集した本誌でのこの取材記事を、webChronosに転載していく。今回は、世界にプレゼンスを示す、日本の時計ブランド・グランドセイコーだ。

三田村優:写真
Photographs by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan),
Text & Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
Edited & Text by Chronos Japan Edition (Yukiya Suzuki, Yuto Hosoda)
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]


ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブで発表された、グランドセイコーの2024年新作モデルを見る!

 ひいき目に見ずとも、2024年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブで最も注目を集めていたブランドのひとつがグランドセイコーだった。入りやすく造り替えたこともあって、ブースには常に人が集まっていた。それも魅力的なプロダクトがあればこそ。初のお披露目となった手巻きのハイビートや「薄明」をテーマにした「Kodo」などは、目新しい時計を探す好事家たちから熱い視線を注がれていた。関係者によると、アジアのコレクターから人気があったのは前者、ヨーロッパの販売店から支持を集めたのはシルバーを強調したKodoとのこと。どちらも安くないが、それを跳ね返すだけのブランド力が備わったという証しだろう。

グランドセイコー エボリューション9 コレクション 新作

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours」Ref.SLGW003
グランドセイコーが提示する、新時代のドレスウォッチ。巻き味を追求した高振動手巻き、という通好みの構成ながら、驚くほどにまとまったパッケージを備える。今年のベストウォッチ。手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタン( 直径38.6mm、厚さ9.95mm)。3気圧防水。グランドセイコーブティックおよびサロン限定。152万9000円(税込み)。

グランドセイコー エボリューション9 コレクション 新作

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours」Ref.SLGW002
上モデルのゴールド版。大きなムーブメントを直径38.6mmのケースに内蔵できた理由は、スペーサーを省き、ケースに直付けすればこそ。手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/ 時。パワーリザーブ約80時間。18KPGケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。3気圧防水。世界限定80本。グランドセイコーブティックおよびサロン限定。605万円(税込み)。

グランドセイコー Kodo

グランドセイコー「Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン」Ref.SLGT005
前作と対を成す独創的なデザインのKodoが世界に向けてお披露目となった。穴石にはブルーサファイアが使用される。手巻き(Cal.9ST1)。44石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間(コンスタントフォース作動時は約50時間)。ブリリアントハードチタン×Ptケース(直径43.8mm、厚さ12.9mm)。10気圧防水。世界限定20本。グランドセイコーブティック限定。4950万円(税込み)。

 文字盤に構造色を採用したRef.SBGC275も面白い。独自の文字盤表現でも知られるようになったグランドセイコーらしく、鮮やかな色味を前面に打ち出している。

グランドセイコー スポーツコレクション キャリバー9R

グランドセイコー「スポーツコレクション キャリバー9R 20周年記念限定モデル」Ref.SBGC275
光学多層コーティングの文字盤で、穂高連峰の夏の朝焼けを表現したモデル。技術的には非常に新しい。自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R96)。50石。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径44.5mm、厚さ16.8mm)。世界限定700本。グランドセイコーブティック、サロンおよびマスターショップ限定。20気圧防水。183万7000円(税込み)。

 万事抜かりのないグランドセイコー。しかし海外を主戦場にするならば、ゴールドモデルの価格は見直すべきタイミングではないか。


代表取締役社長を取材。「グランドセイコーの将来はグローバルスケールで考えています」

内藤昭男 Akio Naito[セイコーウオッチ/代表取締役社長]
1960年生まれ。大学卒業後、服部セイコー(現セイコーグループ)に入社。セイコー・オーストラリア社長、セイコーホールディングス(現セイコーグループ)法務部長、常務取締役、セイコー・アメリカ社長などを経て、2019年12月にはセイコーウオッチ副社長に就任。21年4月より現職。セイコー・アメリカ社長就任時に、流通とマーケティングを一新することで、アメリカ市場でグランドセイコーをトップブランドのひとつに育て上げた。現在取り組むのは、グランドセイコーのグローバルブランド戦略の深化。

 2022年に、W&WGへの初出展を果たしたグランドセイコー。3年目の今年はさらなる盛り上がりを見せていた。理由は、ハイビートの手巻きや、前作と対をなす「Kodo」といった大作に加えて、ブースをオープンスペースに改めたからだ。多くの人々がその新作を見て、説明に耳を傾けていた。セイコーウオッチ代表取締役社長の内藤昭男はこう語る。

「参加により、ヨーロッパのリアクションは年々上がっていますね。3年目はどうやって見せるかを考えて、オープンスペースになりました」。グランドセイコーが強く意識するのは、やはり海外市場だ。

「グランドセイコーは2020年にヨーロッパ、2022年にはシンガポールに販売会社を作りました。セイコーのネットワークとは別に、です。今年は上海にも作りました。そして今後は中近東。グランドセイコーを顔が見えるブランドにしたいのです」

 その一助を担うのが、銀座のセイコーミュージアム6階に設けられた、「グランドセイコーミュージアム」だ。なんと、ここには100本余りの新旧グランドセイコーが並べられている。「グランドセイコーは、そもそもセイコーの1コレクションとして始まりました。でも、一般の人は知らないでしょう。そこで、グランドセイコーというブランド全体を、セイコーの歴史の中で見せたかったのです。銀座であれば、海外からのお客さまもご覧になるでしょうし」。

 ブランド価値強化のためのさらなる取り組みが顧客満足度の向上である。近年、グランドセイコーは製造年を問わず、メンテナンスを受け付ける旨をHPで明示した。これも間違いなくブランド価値を底上げするはずだ。「以前からグランドセイコーは修理の対応期間を限定せず、一旦お預かりし、1本1本の状態を確認したうえで、修理できるよう最大限取り組んできました。しかし、修理内容を保証するのは難しい。ですから私たちは、修理サービスで何が提供できるのかという研究を続けています。ブランドであるなら資産価値は重要ですし、顧客満足度を向上させるためにも、これは取り組むべき課題なのです」。

 ブランド価値の向上をさらに加速させそうなのが、セイコーが4月1日から発足させた新しい社内体制だ。セイコーはグランドセイコー部門を別本部とし、ブランドとして国内と海外を一体で運用するようになったのである。ブランド別にグローバルな戦略に取り組むのは国内メーカーとしては初めての試みではないか。

「長期的な戦略に基づいた決定です。地域ではなく、ブランドでマーケティングや流通を完全に分けるという施策は、2018年以降、アメリカで成功を収めました。日本国内だけならば、ここまで徹底する必要はないでしょう。しかし、グランドセイコーというブランドをラグジュアリーのメインストリームにするためには、専門的に深掘りをしていきたいのです。将来は、グローバルスケールで考えています」



Contact info:セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617


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