H. モーザー「パイオニア・センターセコンド・オートマティック」/ Overview H.Moser & Cie. シャフハウゼンが育んだ進取の気概【第3回】

2017.07.04

2017年に発表された「パイオニア・センターセコンド・オートマティック」のSSケース。製作は同じくギヨー・ギュンター。前作の“マルチプル構造”を廃し、ベゼル以外は一体で削り出されている。複雑な「パイオニア」のデザインをそのまま一体で仕上げるため、CNCのオペレーション自体はより高度となる。

 しかし2017年に投入された新作で、ギヨー・ギュンターはさらに質の高いCNCオペレーションの術を披露した。「パイオニア・センターセコンド・オートマティック」のケースデザインをそのままに、“マルチプル構造”を廃してオールスティールで削り出してみせたのだ。“マルチプル構造”は、パーツを組み合わせる際に高い精度が求められる反面、パーツ単体でのCNCオペレーションはそれほど複雑ではなかった。しかしそれを一体で削り出すとなると、次元の異なるオペレーション技術が必要になってくる。コレクション初となったSSケースの展開(しかもデザインは同一)となれば、ともすれば廉価版の印象を抱くかもしれないが、ベゼル以外のケース全体を一体で削り出したとなれば、実際には分割して作るよりも求められる技術は高度なのである。

 同様にSSケースとなった「パイオニア・センターセコンド・オートマティック」には、新型ムーブメント「HMC 200」が搭載されている。もともと有していた自動巻きムーブメント「HMC 346」から、デタッチャブル構造が廃された反面、テンワの調速装置がチラネジ(ミーンタイムスクリュー)から、マスロットに変更されたのである。

「パイオニア・センターセコンド・オートマティック」。自動巻き(Cal.HMC 200)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS(直径42.8mm、厚さ14.9mm)。予価138万円。