ジン特殊時計会社という名称の通り、独自の特殊なテクノロジーによって、各種用途に応じたツールウォッチを製造してきたジン。他の時計ブランドとは大きく異なるアプローチは、コアなファンから厚い支持を得ている。そんなジンから、2025年の新作時計が続々と発表されている。潜水艦の外壁をケースに用いた限定モデルから、ジンらしさを備えつつもエレガントなレディースウォッチまで、バリエーション豊かなラインナップが用意される。
本物の潜水艦の外壁をケースに用いた「U15」「U16」「U18」
本物の潜水艦の外壁を時計のミドルケースと回転ベゼルに使用した3つの限定モデル「U15」「U16」「U18」が発表された。本作の説明をする前に、ジンが20年にわたりダイバーズウォッチに用いてきた素材である「Uボート・スチール」について触れておこう。
Uボート・スチールは、ドイツの潜水艦のために開発された特殊鋼であり、応力に対する耐力が高いこと、耐海水性能が高いこと、非磁性体であることが大きな特徴だ。これらの特徴はダイバーズウォッチにとって好適であり、ジンは鋼材メーカーから未使用の鋼材を購入して使用してきた。これに対し、今回発表された3つの限定モデルには、退役するドイツの206型潜水艦“U15”、“U16”、“U18”の外壁が用いられている。この3艦は、40年近くに渡ってバルト海とそのアクセスルートを守る重要な任務にあたってきた。それゆえに本作は、長年にわたって第一線で活躍可能な潜水艦を設計、製造したドイツのエンジニアリングや各潜水艦の貢献に対するリスペクトが込められている。
本作は従来の「U1」のデザインをベースとしているため、回転ベゼルと4時位置のリュウズを備えた外装が特徴的なモデルだ。一方で限定モデルのための特別なデザインとして、文字盤に水深約30mの海の光景を取り込んでおり、深い青みがかったグリーンをベースとして上昇する無数の気泡があしらわれている。そしてここに、それぞれの潜水艦の長きにわたる貢献に敬意を表し、航海距離と型式であるKLASSE 206が記される。また、裏蓋には206型潜水艦のシルエットが刻まれている。ポイントはケースの製造方法で、潜水艦の外壁を溶解して再成型するのではなく、そのまま切り出してミドルケースと回転ベゼルに用いていることだ。使用されている鋼材の品質の高さがうかがえる。
各モデルはスペックが異なっており、U15は500m防水でケース径41mm、ケース厚11.2mm、U16は1000m防水でケース径44mm、厚さ14.7mm、U18は2000m防水でケース径44mm、厚さ15.5mmである。

自動巻き(Cal.SW300-1)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。Uボート・スチールケース(直径41mm、厚さ11.2mm)。500m防水。世界限定1000本。予価75万9000円(税込み)。今夏発売予定。

自動巻き(Cal.SW200-1)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。Uボート・スチールケース(直径44mm、厚さ14.7mm)。1000m防水。世界限定1000本。予価75万9000円(税込み)。今夏発売予定。

自動巻き(Cal.SW300-1)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。Uボート・スチールケース(直径44mm、厚さ15.5mm)。2000m防水。世界限定1000本。予価82万5000円(税込み)。今夏発売予定。
独自素材ゴールドブロンズ125を用いた「T50 ゴールドブロンズ B」
ジンが特許を取得する独自素材の「ゴールドブロンズ125」をケースに用いた「T50 ゴールドブロンズ B」が発表された。ゴールドブロンズ125の特徴は、意図的に配合する合金成分以外の不純物が非常に少なくされている点だ。8分の1配合されたゴールドと不純物の少なさによって海水に対する耐腐食性が高められ、ブロンズ特有のパティーナの発生が穏やかとなる特性を獲得している。さらに、ブロンズ合金では避けがたかったアレルギーなどの皮膚反応の可能性も抑えている。

基本デザインは従来の「T50」をベースにしつつ、本作のために用意された深海を思わせるダークブルーの文字盤が組み合わされる。このダークブルーと上品で明るい色調のゴールドブロンズ125の組み合わせにより、シックな印象も受ける仕上がりだ。組み合わされるファブリックストラップもダークブルーとなり、カラーコーディネートがなされている。
本作は従来のT50に準ずる高い基本性能を有する。500mの高い防水性能や、減圧耐性、特殊結合方式の逆回転防止ベゼル、風防内の曇りを防止する「Ar ドライテクノロジー」がその代表例だ。このほか、手首に直接触れるケースバックは純度の高いチタン製であり、アレルギーなどの皮膚反応の可能性を排除するだけでなく、軽量化や肌に触れた時の冷たさを抑える効果も期待される。

自動巻き(Cal.SW300-1)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。ゴールドブロンズ125ケース(直径41mm、厚さ12.3mm)。500m防水。世界限定300本。予価126万5000円(税込み)。今夏発売予定。
6時位置に60分積算計を備えた「613 St」「613 St UTC」
6時位置に60分積算計を備えたダイバーズクロノグラフ「613 St」と、そこにUTC(GMT)表示機能を加えた「613 St UTC」が発表された。従来のダイビングクロノグラフ「206」は、30分積算計と12時間積算計の組み合わせであった。それに対して新作の613 Stは、6時位置に60分積算計を設けており、60分間までの測定に適した文字盤デザインとなっている。また、60分積算計を文字盤上で大きく取り、ホワイトにカラーリングして目立たせている点も特徴だ。これらの改良は、クロノグラフを高い頻度で使用し、30分以上、60分未満の時間の測定を重視するダイビングの現場の声に応えた、ジンらしい改良と言えるだろう。
従来モデル同様に、プッシュボタン部にはD3システムが採用されており、水中でもクロノグラフを操作可能となっている。さらに、DIN 8310に基づく500m防水性能、DNVヨーロッパ潜水機器規格EN 250/EN 14143の認定を取得するなど高い基礎性能を有しており、ダイビングユース以外にも、水に濡れる機会が多いハードな環境でクロノグラフを使いたいユーザーにとって、信頼できるパートナーとなることだろう。

自動巻き(Cal.SW515)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約56時間。SSケース(直径41mm、厚さ15mm)。500m防水。予価75万3500円(税込み)。今夏発売予定。
「613 St UTC」は、センターにUTC(GMT)表示機能を加えたモデルである。ジンらしい意匠は、このUTC針は時分針よりもダークなグレーでカラーリングし、あえて文字盤に対してコントラストが抑えられている点だ。これはダイビング中に時分針と読み間違えないようにする配慮であろう。

自動巻き(Cal.SW535)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約56時間。SSケース(直径41mm、厚さ15mm)。500m防水。予価84万1500円(税込み)。今夏発売予定。
「534 マザーオブパール S」「534 マザーオブパール W」

マザー・オブ・パール文字盤がエレガントなレディースウォッチ「534 マザーオブパール S」「534 マザーオブパール W」が発表された。2モデルは基本デザインが共通で、ラウンドケースにバーインデックスを備え、534 マザーオブパール Sは文字盤に黒蝶貝を用い、534 マザーオブパール Wは白蝶貝を用いている。
見どころは「ファセットベゼル」と名付けられたベゼルだ。これは、24個のひし形のファセットカットが組み合わさったテクスチャーとなっており、光が当たると様々な方向に規則正しく反射して輝く様子が見て取れる。
エレガントなレディースウォッチであるが、ジンらしさを備えている点も特徴だ。ムーブメントはCal.SW300-1を搭載し、パワーリザーブは約50時間を備える。また、DIN 8309に準拠する耐磁性能と、10気圧防水、DIN 8310に準拠する防水性能、減圧耐性を備える。アルファ針をモダンに進化させたような時分針からはツールウォッチのテイストを感じ、ここからもジンらしさを感じ取れる。

自動巻き(Cal.SW300-1)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径34mm、厚さ9mm)。10気圧防水。予価51万7000円(税込み)。今夏発売予定。

自動巻き(Cal.SW300-1)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径34mm、厚さ9mm)。10気圧防水。予価45万6000円(税込み)。今夏発売予定。