カシオ プロトレック「 PWR-35」の最新モデルは、機能や魅力はそのままにコンパクトかつ軽量化!【着用レビュー】

2025.04.27

今回は、登山愛好家から厚く支持されるカシオ プロトレックの中でも、幅広い層にフィットするコンパクトなサイズ感を実現したRef.PRW-35TLD-7JFをインプレッションする。本作は、ケース径39.7mmとコンパクトでありながら、プロトレックの多機能さを継承しているモデルだ。また、カシオとして初となる蓄光LCDを採用しており、暗所でぼんやりと光る本作は視認性に優れ、使用感が良好であった。

プロトレック クライマーライン

カシオ「プロトレック」Ref.PRW-35TLD-7JF
クォーツ(光発電)。フル充電時22カ月稼働(パワーセーブ作動時)。バイオマスプラスチックケース(直径44.6mm、厚さ13.0mm)。10気圧防水。8万8000円(税込み)。
佐藤しんいち:文・写真
Text and Photographs by Shin-ichi Sato
[2025年4月27日公開記事]


インプレッションの前に「プロトレック」をおさらい

 今回は、カシオによるアウトドア用ウォッチブランドの「プロトレック」から、最新作のRef.PRW-35TLD-7JFをインプレッションする。1995年にスタートしたプロトレックは、初作Ref.DPX-500に「トリプルセンサー」を搭載して、登山愛好家から支持された歴史を持つ。このトリプルセンサーとは、方位センサー、気圧(高度)センサー、温度センサーの3つを指しており、これらは現在にも受け継がれ、プロトレックのアイコンとなっている。

 スマートウォッチの無かった時代にこれらの機能を有し、タフなツールウォッチを得意とするカシオによるアウトドア用モデルとして独自の魅力を持っていたプロトレックは、登山愛好家やアウトドアを趣味とするユーザーから厚く支持され、そのイメージを確固たるものとしていった。これは、アウトドア用品店にもプロトレックが並んでいることがひとつの証拠と言えるだろう。

 さらにプロトレックは、ホビーユースだけでなくプロのアルピニストからも支持され、それを反映して8000m峰のひとつ「マナスル」の名を冠して信頼性や機能性を高めたフラッグシップモデル「マナスル」をラインナップしている。


インプレッションするRef.PRW-35TLD-7JFの特徴

 プロトレックはこのような出自から、一般的な腕時計には搭載されない3つのセンサーを備えると同時に、信頼性を高めるために大柄で頑強なデザインとなってきた。これはアウトドアに適するツールウォッチらしさにあふれ、タフさを象徴するスタイリングであり、人気の理由のひとつでもあったのだが、手首にジャストフィットしないユーザーを生んでいたことも事実である。特に、近年増加した女性の登山愛好家やキャンパーにはマッチしづらいサイズ感であったと言えるだろう。

 このような背景の下リリースされたのが、本作のベースとなる「PRW-35」のラインナップである。PRW-35は、従来よりもコンパクトなケース径44.6mm、厚さ13mmのモデルで、幅広いユーザーにフィットするスタイリングが与えられている。軽量化も図られており、ラバーストラップ仕様で比較すると、従来のRef.PRW-30-1AJFは66gであったのに対して、Ref.PRW-35-7JFでは約30%減となる45gを実現している。

プロトレック クライマーライン

ラグ部にくびれがあり、メリハリのあるシルエットがコンパクトな印象を生む。上部のグラフは気圧の推移である。この日は、午前中が小雨で午後から晴れたので、それに伴って気圧が上昇しているのが分かる。

 そして、今回インプレッションするRef.PRW-35TLD-7JFは、ラバーストラップに代わってチタン製ブレスレットが組み合わされており、ラバーやファブリック製ストラップの組み合わせの多いプロトレックに新たな魅力を加えているのが注目点だ。重量も76gと、ラバーストラップよりは重くなったものの、その着用感は軽快である。

 なお、本作のケースや裏蓋といった樹脂パーツには、環境負荷低減への貢献が期待されるバイオマスプラスチックを使用している。チタン製ブレスレットにプラスチック製ケースというのは珍しい組み合わせとなるが、ベゼルが金属製でメタリックな質感であることとケース全体がシルバーに塗装されていることが効いているのか、デザインには一体感がある。


数値よりもコンパクトに感じるパッケージングの良さ

 筆者はカシオ G-SHOCKのオリジンである「DW-5600」やアナログモデルの「GA-2100」を愛用している。これら2本はG-SHOCKの中でも比較的コンパクトなモデルで、本作のケース径44.6mm、厚さ13.mmという数値は、この2本に比べて明らかに小さいとは言えない。一方で、本作を着用した時には比較した2本よりもコンパクトさを感じる。これは、ケースシェイプに凹凸があってメリハリがあることが効いている。

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手首周長約18cmの筆者によるリストショット。ラグ部の浮きが無くフィットしている。ブレスレット取り付け部の可動範囲が広いので、多くのユーザーにフィットするはずだ。また、袖への収まりも良好である。

 また、ラグ部が短く、ブレスレット取り付け部の可動域が広いことから、ラグ裏付近で時計が浮いてしまうことが無く、フィット感が良好である。このことは時計全体をコンパクトに見せることにも大きく寄与しているはずだ。ラグ部のブレスレットの可動域には余裕があり、手首回りが周長約18cmの筆者よりも手首の細い方であっても、このフィット感の良さは維持されることだろう。

 コンパクトで軽量な仕立てに加えて、フィット感の良さにより重量が分散されて、着用感は軽快である。インプレッション期間中、着用数分で手首になじんでくるのを感じ、数時間経てばその存在をほとんど意識しないようになっていた。袖への収まりも良く、その点も着用感の良さにつながっている。このような特性は、アウトドアで周囲の絶景を堪能しリラックスすること、あるいは目の前の険しい自然に集中することにつながってゆくだろう。


トリプルセンサーによる主要な機能を紹介

 普段は存在感控えめな本作であるが、必要となれば豊富な機能があなたをサポートしてくれる。基本機能として、マルチバンド6の電波受信による自動時刻修正を備えて正確な時刻を指し示し、ストップウォッチ、タイマー、アラーム、ワールドタイム表示や日の出と日の入り時刻の表示を備える。これらを活用すれば、測時に関する要求は満たされることだろう。

 2時位置に方位、3時位置に気圧と温度、4時位置には高度のそれぞれの機能を呼び出すプッシュボタンが配される。各機能はボタンを押せば直ちに呼び出され、ストレスは感じない。簡単であるが、各機能について順に述べてゆこう。

 方位は、機能を有効にすると角度表示で方位角を直ちに指し示してくれる。いろいろなシーンで試してみたが、PCやテレビに囲まれた環境でも数値が大きく暴れることはなかった。いじわる試験として、磁石(アルニコ3)が埋め込まれたギター用ピックアップに近付いたところ、30cm程度の距離があれば正しい表示が維持された。多くの場合、異常なく方位を指し示してくれるのではないだろうか。

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方位計測モードの表示。2時位置の3つのドットが北で、12時方向が西南西(WNW)を指していることを示す。中央の角度は方位角で、時計12時方向が北に対して293°の方向であることを示す。下部には時刻が表示され、“H”は充電状況の“High”を意味する。

 気圧も表示が早く、継続して観測していると1日の中で予想以上に変動していることを確認できる。インプレッション期間中に小雨から晴れに移り変わる日があり、その際には気圧が上昇してゆく様子が見て取れた。天候が大きく変動し、その変化をいち早く察知する必要がある登山では、この気圧表示がサポートしてくれることだろう。また、気圧の変化が体調に影響を与えやすい方にはありがたい機能かもしれない。さらに、気圧の急変を知らせてくれる機能も搭載されているので、注視しなくても本作の恩恵にあずかることができる。

 高度も、ビル内の移動や、坂道のある道路での移動で変化していた。追加操作を行えば、最高高度や積算の上昇高度などを保存可能で、登山のログを取ることが可能となっている。

 カシオが用意するマニュアルを読むと、各機能が指し示す数値やインジケーターの意味、それぞれの補正方法、活用方法が詳しく述べられている。今回のインプレッションでは、それら多くの機能を網羅してテストするには至らなかったし、アウトドアでの評価もできなかったので、その実力値は実際に手にして確認いただきたい。


数多くの機能を無理なく表示するディスプレイ

 多機能となると、複雑な表示が見にくくなったり、現在の表示が何を意味しているのか分かりにくくなったりする。この点に関しては全く問題を感じなかった。面積の広いLCDが採用され、メインとなる中央の表示は大きくて明確である。コントラストも高い。

プロトレック クライマーライン

アウトドア向けということでマウンテンパーカーと合わせた。カジュアルに限れば、幅広いファッションにマッチすると感じたし、ブルゾンを羽織った“現場スタイル”にも完璧にフィットする。個人的な感想として、本作のメリハリの効いたデザインがメカメカしくて好みだった。

 機能が多いためそれらの全体像を把握していることが前提であるが、中央の表示とインジケーター(例えば気圧ならhPaの単位表示)の組み合わせによって表示の意味を読み取りやすい。また、外周部のドットを方位表示に用いたり、気圧の上昇下降傾向を表示したり、タイムゾーンを表示したりと使い分けが上手く、直感的に分かりやすかった。カシオによる液晶画面の扱いの上手さはトップクラスだと筆者は感じているので、カシオの使用経験があるユーザーは全く心配をしなくてよいだろう。


その他の使い勝手も良好で完成度の高さを感じる

 その他、使っていて面白かったのが下部に蓄光シートを配したLCDである蓄光LCDだ。蓄光された状態で暗所に移動すると、ぼんやりとグリーンに光って視認性を助けるもので、カシオとしては初の採用となる。カシオによると、200ルーメンの登山用ヘッドライトを5cmの位置まで近づけて光を照射すると、最大約1時間発光を持続するとのことだ。

プロトレック クライマーライン

蓄光LCDが発光している様子。意識的に光を照射しなければこのようにくっきりとは発光しないが、わずかな発光量であっても視認性に大きく貢献する。

 そこまで積極的に照射しなくても、明るいオフィスで蓄光されていれば薄暗い夜道でも薄っすらと光ってくれて視認性を助けてくれた。LCDは暗い環境ではほとんど見えないので、仄かな光ではあるが有ると無いでは大違いだ。なお、6時位置にはLEDバックライト用のスイッチを備え、腕の動きに反応する自動点灯機能も有しているので、それらを使い分ければ視認性の心配はなさそうだ。

 裏技的な使い方だが、LEDバックライトを何度も点灯させることでわずかに蓄光されて視認性を助けてくれた。光発電で得たエネルギーを光に変換し、蓄光シートに蓄積させることで視認性を助けるのだ。なんともエコである。

 使い勝手に関わる操作系は、各ボタンが大きく、滑り止めも施されていて押しやすい。また、各ボタンには下半分にだけガードが配されてボタンへのダメージを防ぎつつ、誤作動を防止している。このあたりの匙加減にカシオの上手さを感じ取ることができる。

プロトレック クライマーライン

ケースはバイオマスプラスチック製で、ブレスレットはチタン製である。写真では素材感の違いが明確になっているが、肉眼ではもう少しなじんだ印象を受ける。一方、成型時のパーティングラインがラグ部に出ていて目につきやすいのは惜しい点。

 本作は、フル充電状態からソーラー発電無し、かつパワーセービング状態で約22カ月間稼働する。また、晴れた日の窓際に置いておけば約24分で1日分の充電が可能である。一方、多機能を支えるために電池容量が大きいのか、充電ゼロ状態からだとフル充電まで最低でも18時間必要となる。とはいえ、電池残量のインジケーターを備えるため、充電量の管理は容易そうである。


多機能を実現しながらコンパクトにまとめた完成度の高さ

 多機能を見やすく表示すること、多機能のためのセンサー類を搭載することを考えると、大柄な設計の方が有利である。一方、アクティビティーの最中や日常使いにはコンパクトな方が利点は多い。本作は、視認性の良さと多機能を実現しつつコンパクトにまとめたバランスの良さが魅力であった。マニュアルを熟読しなくても各機能の呼び出しはスムーズであったし、各機能を深く理解すればそれらがユーザーを手厚くサポートしてくれる。このあたりの熟成された操作感と機能性には、さすがプロトレック、さすがカシオと感心するものがあった。蓄光LCDの採用も地道な熟成の賜物であろう。

 これらを総合して、プロトレック愛用者は安心して本作を選んで良いと言える完成度の高さを備える。また、プロトレック特有の大きさに躊躇していた方にも、その魅力を備えながらコンパクトにまとめられたものとして本作をお勧めできる。

Contact info: カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925


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『辺境メシ』や『イラク水滸伝』のノンフィクション作家、高野秀行はプロトレックを愛用!

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