本田雅一、ウェアラブルデバイスを語る/第2回『スマートウォッチとはいったい何か?』

タグ・ホイヤーが販売する“スイス メイド”のコネクテッドウォッチ、「タグ・ホイヤー コネクテッド モジュラー 45」。コネクテッドウォッチそのものをモジュラー化することで拡張性を高くし、デジタル機器特有の“足の早さ”に対応した。ETA2824を搭載するメカニカルモジュールにも変更可能。「Android Wear 2.0」搭載。17万円〜(税別)。㉄LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー☎03-5635-7054

“使い分け”の柔軟性を欠くスマートウォッチ

 スマートフォンは人々の生活、社会インフラ、公共サービス、各種商業サービスなど、あらゆるものを変えた。しかし、それだけでは万能ではない。使用者とのインターフェイスを模索しようとした方向性のひとつとして、Google Glassや新しいスマートウォッチが誕生した。「Apple Watch」、あるいはウェアラブル機器向けに開発されたOS「Android Wear」、あるいはサムスンが独自開発した「Galaxy Gear」などは、「スマートフォンの“一部”を切り取って手元に持ってくる」方向性にある。

 しかしながら、いずれにしろどこか引っかかるものがある。

 今や“時刻を知る”という腕時計の基本機能は、あらゆる製品が代替してくれる。腕時計に対する要求は、単なる時刻を知るという基本機能以上にファッション要素が強い。ところがファッションを軸にすると、その日の服装に合わせた時計の着け替えなどの欲求が出てくる。どのスマートウォッチも、“装着して出ない日”は当然ながらその機能を使いこなすことはできず、毎日のライフスタイルを支える装置とはなり得ない。その点、シンプルに時刻を知る道具に特化している腕時計の方が柔軟に使い分けられる。複数本のリストウォッチを使い分けることを許容できないならば、ファッションとしてのスマートウォッチは成り立たないのではないか。

Apple WatchではSeries 2より「Apple Pay」が導入されたことで、クレジットカードやSuicaの機能をデバイスに与えられるようになった。これらの機能を一括して取り扱えるため、Suicaの残高をプリインストールアプリ「Wallet」で確認し、その場でクレジット決済によりチャージする、といった作業も気軽に行える。㉄Apple Store コールセンター ➿0120-993-993

新たなプラットフォームとなったApple Watch Series 3

 ならばスマートウォッチに過度の期待をするのはやめて、自分にとって必要な特定の機能を求めるときだけ装着していればいい。そう割り切って僕はこれまでのApple Watchをフィットネスをはじめとする、スポーツなどに使ってきた。しかし、その気持ちが揺らぎはじめたのがSeries 2の出現だった。このときからApple WatchはSuicaに対応。今や全国あらゆる場所で利用可能な決済システムが腕時計の中に入ったことで、ライフスタイルを大きく変える可能性を感じはじめていたのだが、Apple Watch Series 3を見て自分の考えの間違いにはたと気付いた。

 僕が想像していたスマートウォッチとは、スマートフォンをカバンの中にしまったままでも、その価値の一部を腕時計を通して共有できる……いわば、スマートフォンのコンパニオン役を務める商品だったが、アップルが目指すのは別のゴールだったのである。

 彼らのゴールとは、“スマートフォンそのもの”の機能性を腕時計スタイルに収めることで、どのようにライフスタイルを変えていけるのかではなく、別のところにあったのだ。重要なのは、通信機能を持っているか否かではない。

 Apple Watch Series 3にはBluetoothとWi-Fi、ふたつの無線通信機能が搭載されており、スマートフォンを通じてインターネットへとつながる。さらにセルラーモデルは携帯電話網に直接つながることで、もはやiPhoneの助けを借りなくとも単独で通信することさえ可能となった。