ハリー・ウィンストンが極める男の本懐

2017.12.01
ダイヤモンド
竹浦康郎(AUOS ):写真 Photographs by Yasuo Takeura (AUOS)
野上亜紀:文 Text by Aki Nogami

ハリー・ウィンストンが極める男の本懐
男こそダイヤモンドで 武装せよ

 ニューヨークのハイジュエラー、ハリー・ウィンストンが時計製作を開始したのは1989年のこと。
同社の歴史を綴る象徴的なレトログラードウォッチが、ラウンド・ブリリアント・カットとバゲットカットという2種のダイヤモンドを添えることで“キング・オブ・ダイヤモンド”の名にふさわしい新たな表情を映し出す。

HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック 42mm

HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック 42mm
オフセンターの時分表示にダブルレトログラードというハリー・ウィンストンのアイコニックな機構を搭載した時計。ニューヨーク5番街本店のファサードをモチーフにしたリュウズガードもまた象徴的な意匠だ。ケースとベゼル、ラグに加えて、時分表示リングや日付窓、レトログラードカウンターにもラウンド・ブリリアント・カット・ダイヤモンドを総計367個(約4.50ct)セッティング。自動巻き(Cal.HW3305)。35石。2万8800振動/時。18KWG(直径42mm)。10気圧防水。885万円。

 時計においてダイヤモンドは脇役となるのか、それとも主役となるのか―― その答えをひもとくのが、ハリー・ウィンストンが手掛けるタイムピースだ。

 時分表示をオフセンターした文字盤にレトログラード機構を搭載した「HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック42㎜」は、同社の時計製作の歴史を今に受け継ぐ。輝きの強いラウンド・ブリリアント・カットには白蝶貝を添えることで宝飾としての様相を極め、重厚なバゲットカットには「プロジェクト Z1
0」から続くマンハッタンブリッジを模したフレームでシャープな印象を与えるなど、それぞれ異なる質感のダイヤモンドとデザインが呼応している点もまた、宝石に精通したジュエラーの手腕を感じさせる。

 ダイヤモンドを用いた装飾品に必要とされるのは、全体の調和とバランスだ。例えば一粒のソリテールなども大きいほど良いというものではなく、その石の個性に応じてより美しく見えるカットやカラット数が存在する。ハリー・ウィンストンの時計では、ジュエリー同様に〝鷹の目〞と呼ばれる鑑定士が選んだVVS+の石を使用。光の屈折を邪魔する位置に内包物があるものははじかれ、ベゼルのセッティングでは複数の石による光の連鎖が肝要となるため、すべて同質のものが揃えられていく。そうすることでダイヤモンドウォッチはより調和のとれた、強い輝きを放つようになるからだ。

プロジェクト Z

ザリウムをケースに用いた「プロジェクト Z」シリーズの10作目となる「プロジェクト Z10」をベースにケース素材をゴールドに変更。ダブルレトログラードの右は曜日、左は秒を表示する。ブランドの本拠地ニューヨークをイメージしたオープンワークが洗練された佇まいを見せる。自動巻き(Cal.HW3305)。35石。2万8800振動/時。(右)18KWG(直径42mm)。10気圧防水。1250万円。(左)18KRG(直径42mm)。10気圧防水。1235万円。世界限定各20本。

 かつ、いかにもハリー・ウィンストンらしい魅力を誇るのがバゲットカット・ダイヤモンドの時計である。同社の象徴的なエメラルドカットと同じステップカットを施した石は反射による輝きよりも透明度が求められ、内包物が見えやすいことから高品質のものは稀少とされる。ラウンド・ブリリアント・カットと同等のクォリティを揃えた上で、ケースに収めるために0・1㎜単位でサイズを計算し、セッティングされた時計は、まさにダイヤモンドジュエラーの本領を発揮したピースと言える
だろう。

 一粒の輝きだけでなく、サイドストーンのように小さなダイヤモンドにも妥協なき品質を求めてきたハリー・ウィンストン。長年にわたるダイヤモンドのノウハウを注ぎ込んだ時計は、前述のレトログラード同様、宝飾と時計における最高峰を目指してきた同社の歩みそのものである。