ケース
直径は40mmもあるが、意外にも取り回しは悪くなかった。一番効いているのは、短いラグである。時計のサイズを考えるとラグは驚くほど短いが、結果、時計の全長は約47mm(実測値)に抑えられた。全長50mmを超える腕時計が少なくない中、細腕にはうれしい配慮だ。またケース厚を10.3mmに抑えることで、シャツの袖にも引っかからない。筆者の私見だが、ケースの仕上げは価格相応。だが、ラグの内側の角は丁寧に落とされていた。こういった配慮は、まず新興メーカーには望めないものだ。実用時計を作り慣れたボーム&メルシエらしい美点と言える。
文字盤と針
ホワイト文字盤は、今流行のポリッシュラッカー仕上げ。また、インデックスもダイヤモンドカット仕上げである。仕上げ自体は価格相応だが、時分針を“山状”にカットすることで、うまく立体感を持たせている。ちなみに、価格の高いヴァシュロン・コンスタンタンやジャガー・ルクルトでも、ダイヤモンドカット仕上げの針は、平面仕上げの場合が多い。立体的な針を持つボーマティックは、比較的頑張っている、と言えるのではないか。ただし、実用性を考えると文字盤とインデックスには夜光塗料を塗布するべきではないか。あえて夜光を載せなかった理由は、コストというよりも、細い時分針を与えたかったためだろう。
ストラップ
税抜き30万5000円という価格にもかかわらず、ストラップは竹斑のアリゲーターである。同価格帯のものに比べて良質だが、交換すればより高級に見えるだろう。ラグが短くカジュアルにも使えるため、カーフや丸斑のアリゲーターでも良いかもしれない。ただ筆者ならば、ストラップ付きよりも、ブレスレット付きを選ぶ。価格は少し上がるが、左右の遊びも抑えられているし、時計との重量バランスも悪くない。加えて、バックルも薄めなため、デスクワークの邪魔にもなりにくそうだ。
結論
“Wonderful Buy”! クロノメーター級の精度に、約1500ガウスという耐磁性と約5日間の長いパワーリザーブ、薄くて取り回しの良いケースの組み合わせは、実用時計として最も望ましい要素だ。それを30万円台で実現したボーマティックは、最良の実用時計のひとつと言えるだろう。正直、時計好きを喜ばせる要素には乏しいが、機械式時計の知識はない、でも気兼ねなく使える時計が欲しいという人にとって、この腕時計はかけがえのない選択肢となるはずだ。なお、ムーブメントの詳細は2018年8月3日売りのクロノス日本版78号に掲載している。ご興味のある方は、そちらもぜひぜひぜひご覧ください。