空中戦: IWCとブライトリングのパイロットウォッチ

FEATUREWatchTime
2019.03.14

 ブライトリングのアベンジャーコレクションはミリタリースタイルの傾向をさらに強めたものとなる。ステンシル調の数字は軍用品のような独特な外観を彷彿とさせる。リュウズとプッシャーは機能性を考慮してデザインされている。クロノグラフに特化したクロノマット・コレクションとは対照的に、アベンジャー・コレクションには3針モデルも含まれている。またその外観は合わせるストラップによっても変化する。クラシックかつスポーティなポリッシュ仕上げのメタルブレスレット、レトロな印象のレザーストラップ、実用的なラバーストラップ、そしてミリタリー調のテキスタイル製ストラップなどである。

 ブライトリングはIWCよりも広い意味でパイロットウォッチのブランドとして知られている。つまりブライトリングでは伝統を守りながらも、顧客を満足させる現代的なデザインを提供するということである。また時計は、現在のパイロットたちの要望に応える形で作られている。このためブライトリングでは時に、ラグジュアリーウォッチに求められる機械式ムーブメントをあえて使用しない場合もある。これによって、カウントダウン、アラーム、タイムゾーンなど多機能を搭載した時計を生み出すことになるのである。

星の王子さま
エレガントなパイロットウォッチ。写真上は、鏡面仕上げの外装、アプライドマーカー、装飾性の強い文字盤が優美さを添える「ビッグ・パイロットウォッチ、アニュアルカレンダー“星の王子さま”バージョン」。写真下は、ブライトリング「クロノマット44」。

クロノマット44


 ブランドのプロフェッショナル向けのコレクションは典型的に、機能を持つケースや、3時、6時、9時位置に大きなアラビア数字を有する。いくつかは迅速に飛行ルートを計算するために回転式ベゼルを備える。針は部分的にスケルトンが施され文字盤の上下に配されたLCDの視認性を高めている。ブライトリングの「エマージェンシー」モデルは内蔵された緊急通報用発信器でその名声を高めた。しっかりとしたケースがアンテナの役割果たすスクリューコネクターを内蔵することによって、時計を着用する人から見ても、それが邪魔ではなくむしろプラスの要因として映るのである。

 プロフェッショナルコレクションに新しく追加されたのは、スマートフォンとワイヤレスで接続できる「エグゾスペース B55」だ。ユーザーは時刻をスマートフォン経由で合わせることができ、スマートフォンの大きいサイズのスクリーンで出発と到着時間を見ることができるのである。ブラックケースに合わせられたグレイまたはブルーカラーの針に相性の良いラバーストラップによって、モダンでハイテクな外観に仕上げられている。

IWC トップガン

ヴィンテージのルミノール、機能的なデザイン、装飾のないアースカラーのストラップのレトロなミリタリー風パイロットウォッチ:IWC「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ “トップガン・ミラマー” 」 と、ブライトリングの「クロノマット 44 エアボーン」。


 IWCとブライトリングは異なった方法でパイロットウォッチを表現してきた。
 IWCは過去のアイコニックモデルを使って統一感のあるパイロットウォッチコレクションを作り上げてきた。さまざまなカラーや素材がコレクションに変化をつけ、優雅な雰囲気を醸し出したり、ミリタリー調の外観を持ったりなど方向性を打ち出してきた。
 ブライトリングはそれとは違った道を歩んでいる。このブランドは、パイロットウォッチのアイコンであるナビタイマーに注力し、それを作り続けてきた。バリエーションはその限定モデルという形で発表され、カラーや素材によって優美さやモダンな雰囲気がさらに強調されているのである。ブライトリングはデザインやミリタリーデザインにインスパイアされたモデルも創り続けている。ブレスレットやストラップは、デザインに変化を与える幾通りもの可能性を提供している。

 ふたつのブランドは共に特徴的なディテールを好み、それによってすぐにIWCやブライトリングの時計としての認知がなされる。しかしIWCが自分たちのデザインに手を入れ、新しい外観の開発や原点回帰の歩みを進めるのに比べ、ブライトリングは自身のアイコン性を損なうことなく、全く新しい自分自身を作り上げていくのである。

エグゾスペース B55

飛行時間をスマートフォンに接続して確認できるブライトリング「エグゾスペース B55」は、デジタル表示、ブラックカラーのケース、機能的なデザイン、ダークグレイカラーのラバーストラップによって、現代的な特徴を持つ。


初出/WatchTime 2017年3月・4月号