(中)組み立て途中のTASAKI専用ムーブメント。地板全面にペルラージュ装飾が施されているのが見える。繊細なコート・ド・ジュネーブ仕上げのブリッジをつまむピンセットは、表面を傷付けない特別製。
(左)外装の製作まで一貫してヴォーシェが担い、ケーシングや針付けまで行った完成品として日本に届けられる。
(左)レディス用自動巻きローターのエッジも専用マシンを手作業で操作し、ポリッシュ仕上げされる。この後、表層にはTASAKI専用の装飾仕上げを施し、独自の美観を与える。
日本の美意識を形にするスイスの名門ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ
これら美しく精巧なムーブメントの作り手は、スイスのヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ(以下ヴォーシェ)。本誌読者にはなじみ深い、高級機に特化し、技術力に長けたムーブメントメーカーである。名だたるスイスのウォッチメゾンやフランスのクチュールメゾンが採用してきた同社のムーブメントが、日本の腕時計に搭載されたのは本作が初だ。
2015年にスタートしたTASAKI TIMEPIECESは、これまで〝ジャパンメイド〞をひとつのコンセプトとしてきた。日本人独立時計師、浅岡肇氏製作による球体ムーンフェイズを備えるトゥールビヨンやスケルトンモデルを擁する「オデッサ」シリーズは、その代表。今回、ヴォーシェとパートナーシップを組んだのは、機構的にシンプルな腕時計における、より高い完成度を目指したから。ヴォーシェの開発と設計を統括する責を担うのが、日本人技術者の浜口尚大氏であることも、TASAKIの感性を形にするのに大いに役立ったであろう。その浜口氏は、以前の取材で「高度な工業化と手仕事とを組み合わせ、ベースキャリバーを顧客のニーズに合わせてカスタマイズできるのが強み」だと語っていた。
前述したように、バランスが積むふたつのムーブメントが、いずれもTASAKIが望む美観を備えていることが、彼の言葉を証明する。多軸のCNCマシンと伝統的な金型とを使い分け、量産と高精度加工を両立。そして仕上げには、徹底した手仕事を駆使することで隅々まで美を整える。こうして出来上がったヴォーシェ製ムーブメントを包み込む外装もまた、スイスで製作されている。ヴォーシェは、グループ企業にダイアルメーカーとケースメーカーも擁し、外装を含むトータルな腕時計製作も請け負っているのだ。洗練されたミニマルな外装まで一貫してヴォーシェが担ったバランスは、TASAKI TIMEPIECES初のスイスメイドのシリーズとなった。
下に並ぶのは、メンズのラインナップ。ダイアルのカラーは、白、黒、グレーのモノトーンにネイビーと、どれも日本的な色調が採用されている。直線状のラグはストラップとブレスレット、いずれとも端正に調和し、実にドレッシーである。日本のジュエリーとスイスのウォッチメイキング、それぞれのトップメゾンが手を組んで生まれたバランスは、シンプルな外観と機構との完成度を極め、日本人の感性と美意識とを刺激する。