リシャール・ミル 「RM 50-03 トゥールビヨン スプリットセコンド クロノグラフ ウルトラライト マクラーレンF1」
リシャール・ミルは、RM 50-03を史上最軽量の機械式クロノグラフとして発表した。ストラップを含めても、全体の重量はわずか40gのみである。この記録を打ち立てるために、リシャール・ミルはカーボンTPT®とチタンを使ったわずか7gのムーブメントを作り上げた。そしてケースと裏蓋にグラフTPT®というF1カーでも採用されている新素材を使用。カーボンの合成素材であるグラフTPT®は、ステンレススティールの6分の1の重量と200倍の安定性を誇る。一方ムーブメントに使用しているカーボンTPT®は、平行に重ねられた600層の繊維から作られている。これらのカーボンファイバーの厚みはすべて30ミクロン以下だ。それぞれの層が45度の傾斜角をつけて揃えられると、結果として特徴的な銘木の風合いを描き出す。この素材の組み合わせが耐久性と軽量性に貢献するのである。
ゼニス 「エル・プリメロ レンジローバー ヴェラール」
ブラックのケースは時計にスポーティーな印象を与える、という理由でブラックカラーは多く採用されてきた。多くの場合、ブラックのケースはステンレススティールにPVD加工を施したものであるが、ブラックセラミックス製の場合もある。しかしゼニスの場合は、これらとは異なるアプローチを取った。レンジローバーと共同開発した直径42mmケースのこのクロノマスターは、アルミニウム製なのだ。「プラズマ電解酸化」で金属の表面を酸化セラミックスに仕上げることによって、外的な傷が付きにくく、かつ腐食しない性質を持たせることができるのである。ゼニスでは完成品をセラミナイズド・アルミニウムと表現している。
ロジェ・デュブイ 「エクスカリバー オリジナル クアトゥオール クローム コバルトマイクロメルト®」
コバルトクロム合金は、よく歯科で用いられる素材である。その理由は、この合金が非常に硬く、腐食しにくいものだからだ。ステンレススティールのようなグレーの外観も特徴のひとつである。ロジェ・デュブイはこの素材を、ケース直径48mm、世界限定8本のエクスカリバーで採用した。名称に見られる「マイクロメルト」は、ケース作成時の工程に由来する。マイクロメルト工程とは主に航空や天文学の分野で用いられてきた。合金は溶解されたのち、粉末に加工される。ここで得られる粉末は混合され、決められた目のふるいにかけられた後に、型に入れられ、高圧焼成によって棒状になる。ここで完成時のサイズに近いものができあがる。他の製造工程と異なり、この方法だと金属と非金属を融合することができるため、合金は高い多孔性と安定性を兼ね備えることとなる。
MCT 「シーケンシャル・ワン S110 エヴォ ベンタブラック」
「ベンタブラック」はVertically Aligned Nano Tube Array(垂直方向に並んだナノチューブ)の頭文字に、接尾辞Blackを合わせた名称だ。わずか100万分の1mmの厚さのカーボンナノチューブで構成されるベンタブラックは光の99.96%を吸収するものであり、結果として着色したブラックのように見える。これは2014年に開発された、現時点で史上もっとも黒い物質として認定されている素材である。時計ブランドの中でも早々にこの素材を採用したうちの1社がMCT(Manufacture Contemporaine du Temps)であり、ベンタブラックを「シーケンシャル・ワン S110 エヴォ ベンタブラック」の文字盤に使用したのだ。この素材を採用するにあたって、MCTはベンタブラックをアート作品の顔料として独占的に使用する権利を有していたアーティスト、アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)と連携した。