サントス デュモン
初代サントスの精神を今に受け継ぐ新作。7.3mmという非常に薄いケースと、ドレスウォッチとスポーツウォッチを折衷させたディテールを備える。搭載するのは新規開発のクォーツムーブメント。バッテリー寿命が約6年もあるため、普段使いに最適だ。
(右)SMサイズ。視認性を高めるためか、左のLMサイズに比べて、インデックスはわずかに太くなっている。クォーツ。SS(縦38×横27.5 mm、厚さ7.3 mm)。3気圧防水。37万円。
(中)LMサイズ。縦43.5×横31.4 mm、厚さ7.3 mm。それ以外のスペックは右に同じ。39万7500円(左)LMサイズ。18KPG。128万円。
アクティブなシーンだけでなく、さまざまな用途で使えるサントスのキャラクター。後継機たちも、当然のようにその性格を受け継いだ。サントスの持つドレッシーな側面を強調すれば、2019年にリリースされた「サントス デュモン」になり、マルチパーパスを強調すれば、18年に一新された「サントス ドゥ カルティエ」となる。
ドレッシーさを強調したサントス デュモンは、オリジナルを思わせる造形を持っている。しかし、カルティエは、絶妙なチューニングを加えた。ストラップは竹斑のアリゲーターだが、あえてステッチを入れ、またツヤを落とすことでスポーティーに振っている。ストラップのデザインも、スポーツウォッチよろしくストレートだ。とはいえ、ストラップの幅は、オリジナルのサントス同様、スポーツウォッチほど太くはない。
他の部分も同様だ。インデックスや針は、ドレスウォッチを思わせるほど細身である。しかしわずかに太くなり、立体感を増したベゼルが、ドレスウォッチとは異なる印象をもたらす。ドレスウォッチのようでそうではないという味付けを、カルティエはより強調したのである。
もっとも、この時計は、初代サントスリストウォッチより大きくアップデートされている。その鍵を握るのが、ヴァルフルリエと共同開発した新しいクォーツムーブメントだ。開発が始まったのは2017年の夏。カルティエはその狙いを「私たちのデザイナーの美観に対する要求を満たしながらも、クォーツ時計に長い駆動時間を与えることだった」と説明する。今まで、カルティエが採用してきたのは、ETA製のクォーツムーブメントであった。対して新しいムーブメントは、約6年間のバッテリー寿命を持つ。機械式でないことを惜しむ声もあるが、サントスのエレガンスの象徴としての薄さを実現するなら、クォーツムーブメントを載せるほかなかっただろう。また、クォーツムーブメントの採用により、この時計は非常に戦略的な価格となった。