サファイアガラスとは。時計をはじめとした用途や特徴を解説

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2020.01.23

時計以外のサファイアガラスの用途

サファイアガラスはさまざまな優れた特性を持つため、幅広い用途がある。ここでは、時計以外の使用例を紹介しよう。

高輝度LED基板

LED

長寿命、低電力のLEDは、イルミネーションや信号機など、幅広い分野で利用されている。この発明と実用化に貢献した赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏は2014年のノーベル物理学賞を受賞している。

サファイアクリスタルは、優れた強度、剛性、耐摩耗性、耐熱性、耐食性により、エレクトロニクス産業を支える素材でもある。

たとえば、青色・白色LED(発光ダイオード)の基盤や、液晶プロジェクタの輝度向上に欠かせない偏光子保持基板として使用される。

また、サファイア基板上にシリコン単結晶薄膜を形成させ、これに素子を埋め込んで集積回路を構成するシリコン・オン・サファイア(SOS)基板といった利用例も一般的だ。

iPhoneなどのスマホにも使用

iPhoneには、ディスプレイにサファイアガラスを使おうとしたがコストの高さで断念し、ゴリラガラスに切り替えたという経緯があった。

ただ、面積が大きいディスプレイには使えなかったものの、iPhone5以降のカメラレンズのカバーガラスや、5s以降のホームボタンにはサファイアガラスが使われている。

カミソリの刃

サファイアガラスは優れた化学的・熱的・光学的特性を持つため、ここまで紹介してきたものの他にも、光ファイバーのキャップや真空機器など、非常に広い範囲で使用されている。

そのなかでユニークなのがカミソリの刃である。過去にクラウドファンディングサイトで販売されていたものだが、通常の100倍の耐久性と医療用メスの10倍の剃り味を持つという特徴を謳っていた。現在、これは販売終了している。


サファイアガラスのケア

ここまで紹介したように、サファイアガラスは信頼性の高い風防である。堅牢性を誇るが傷付くリスクはゼロではない。サファイアガラスに傷がついたように見えた場合の対処法について見ておこう。

傷を消そうと自力で研磨するのは避ける

サファイアガラスは、通常使用で傷付くことはほとんどない。だが状況によっては稀に傷付くこともある。このとき、自力で研磨するのは避けたい。

時計にはメーカー独自の表面加工が施されている場合があり、自力の手入れは、時計の美観を損なう可能性がある。傷をいたずらに広げることも起こりうる。ポリッシュは時計師の専門技術を要する作業だ。

そもそも、サファイアガラスは通常の研磨剤では削ることはできないため、傷を消そうとして逆にガラス周囲のベゼルを傷付けてしまう可能性が高い。

コーティングが剥がれただけの場合もある

サファイアガラスに傷がついたように見えても、それはガラス面についた傷とは限らない。モデルによっては両面無反射コーティングが施されて、この外側のコーティングが剥がれただけの場合もある。

時計の製品情報を確認し、コーティング加工がされているかチェックしよう。両面無反射コーティングなら、傷を消そうとして自分で研磨すると、さらにコーティングを剥離させてしまう可能性が高い。

この場合でも、修理。修繕にはやはり特殊な材料と時計師の専門技術を要する。早まって自力で手入れしようとせず、メーカーに依頼することが重要だ。


頑丈でも扱いはていねいに

サファイアガラスは、その素材特性によりほとんど傷付けることができない。しかし、それは全く傷が付かないことを約束するものではない。状況次第では傷付くこともあり、この傷を起点にしてさらに大きな傷になる場合もある。

瞬間的に大きな衝撃を加えることも避けよう。サファイアガラスはあくまで傷付きにくいだけの風防であると認識し、時計はていねいに扱うことが大切だ。


川部憲 Text by Ken Kawabe
透明な時間を刻む、サファイアクリスタルの腕時計(前編)

https://www.webchronos.net/features/33832/